やっちゃえ先生探究記

生徒の力が引き出される「学習者中心の学び」をデザインしたい教員です。地道な形成的評価を大切に。

反転授業が広まらない最大の理由とは?

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「反転授業」という言葉をご存知の方は多いだろう。

この言葉を聞くようになってから、もう数年が経つ実感があるが、いまだに日本の教育業界で反転授業が主流化しないのはなぜだろうか?

反転授業とは

 反転授業とは,授業と宿題の役割を「反転」させる授業形態のことを指す。通常は授業中に生徒へ講義を行い知識を伝達し,授業外で既習内容の復習を行い,学んだ知識の定着を促す。これに対し,反転授業では自宅で講義ビデオなどのデジタル教材を使って学び,授業に先立って知識の習得を済ませる。そして教室では講義の代わりに,学んだ知識の確認やディスカッション,問題解決学習などの協同学習により,学んだ知識を「使うことで学ぶ」活動を行う。

反転授業 ICTによる教育改革の進展

「アクティブラーニング」が教育界で話題になり始めてから、にわかに反転授業も注目を浴び始めた。

①学校という場において、②知識伝達を軽視しない授業形式でありながら、③従来よりも”アクティブ”な活動を増やすことで場の価値を最大化する、という3点が学校関係者にとっても期待を抱かせたのだろう。

実際、佐賀県の武雄市では2014年5月から全ての小学校で「反転学習」を導入、「スマイル学習」と銘打って実施している。(本記事冒頭の写真もここから。具体的で面白い記事でした。)

「反転学習」で、何が変わる? ~佐賀県武雄市の「スマイル学習」~ | CHIeru.WebMagazine

が、反転授業は依然として全国的には広まっていないというのが私の認識です。自治体レベルで考えると当然予算面の制約が大きいのだろうけど、中高生をみてきた(みている)立場としては、それ以前の問題が潜んでいる気がしています。

そういうことじゃない

教育最大手のベネッセさんは反転授業のデメリットをこうまとめている。

【注意点1】保護者のサポートが必要

宿題としている予習を行わなければ、反転授業の意味はなくなってしまいます。しっかりと効果を得るためには、保護者が家庭での学習を促し、支えてあげる必要があります。

【注意点2】ハードウェアを確保できるのか

タブレット端末などの確保、インターネット回線の整備が十分になされるのかという課題も大きく立ちはだかります。家計の負担が大きくならないように、自治体の施策が求められます。

注目の反転授業とは? 反転授業のメリット・デメリット|ベネッセ教育情報サイト

でも、そこ以外にあるだろう、と思ってしまう…

もちろん、上の2点について1点目は特に低学齢層では間違いなく配慮が必要だし、2点目に関しては家計の負担能力差を考慮しなければ、結局「もてる者」のための教育になってしまうので、配慮は必要です。

が、

本当の課題は何だろうか?

一言でいえば、生徒は忙しいから家で授業をみることが難しいのだ。時間はつくるもの、というのもそうだが、本当に生徒たちは忙しい。

可処分時間が少ない高校生の生活を皆さんはどれくらいリアルにご存じでしょうか。

例えば、部活動をしている生徒のよくある生活リズムはこんな感じだろう。

6時起床→7時出発→8時学校着→授業と部活→19時学校発→20時帰宅→ご飯とお風呂などであっという間に22時だ。

そうなると、6-7時間の睡眠をとるためには残り1-2時間しか可処分時間がない。通学中に動画が見られればいいが、なかなかそうもいかない。土曜日もほとんどの学校が授業を行い、生徒の実質的な休みは週1日だったりする。

そんな状況で、すべての生徒が確実に動画をみてくる、ということを期待するほうが乱暴だろう…

だから、反転授業は広まらない

全ての生徒に授業前にある程度の時間を割いて動画視聴を課す反転授業はやはりハードルが高い。少なくとも、各教科の連携が取れておらず、各教員が好き勝手宿題を出す(諸悪の根源)状況ではできるわけがない

生徒の立場を考える、ということは大変だ。

だから、もっと導入しやすい形で、かつ現場の授業1コマの価値を最大化できる、違う形のアクティブラーニングが広まるのだ。その例が『学び合い』なんじゃないかと思っています。

www.yacchaesensei.com

だから動画授業というと、反転授業ではなく、単純に授業を動画で視聴するような形態にとどまることが多いのだろうとも思う。先日話題になったこの先生もすごい。

www.nishinippon.co.jp

自分はどうするか?

少なくとも、他教科との連携や、学校全体での取り組みとなっていない状態で、「よかれ」という押し付け的に「反転授業」を導入することはできないと思っている。

反転授業が悪いのではなく、それを生かせない状況が悪い、というしかない。

ただ、これが可能になれば可能性は本当に大きいと思う。

部分読みで通読できていないこの本をまずはきちんと読み切って、今進めている探究学習と”ブレンディッド”してみたい。

ブレンディッド・ラーニングの衝撃 「個別カリキュラム×生徒主導×達成度基準」を実現したアメリカの教育革命

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  • 作者: マイケル・B・ホーン,ヘザー・ステイカー,小松健司
  • 出版社/メーカー: 教育開発研究所
  • 発売日: 2017/04/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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