やっちゃえ先生ブログ

教員の、教員による、教育のための探究記。 大胆かつ繊細に、実のある記事を。 民間企業→私立中高一貫校→私立高校(今ココ)。

カルビー松本晃会長が語る「ひと」の育て方~学校教育で育てたい力とは?~

社長のイラスト(男性)

今日は出張でこちらのシンポジウムに参加してきました。

平日に出張で出かけて、実りが少なかったらどうしよう、と思っていましたが、そんな心配は杞憂に終わりました。

www.nikkei.com

登壇者も、豪華な顔ぶれでした!

  • カルビー会長 松本晃氏
  • 東京工業大 三島良直学長
  • 立教大 吉岡知哉総長
  • 津田塾大 髙橋裕子学長
  • ジャーナリスト/東工大特命教授 池上彰氏

と豪華な顔ぶれでした。

「産」と「学」のバランスがちょうどよかったように思います。

高校で教育に携わる立場から、印象に残ったことをまとめておきます。

①人を育てる最強の手法とは?

何だと思いますか?

カルビーの松本晃会長は、こういう言い方をしていました。

「○○○○すればね、人は元気になるんですよ。」

Mister Calbee Potato Chips

「人を育てる」本質は同じだなあと思いました。

正解は、「権限移譲」。

教室でも、授業でも、権限を生徒に渡していく。

権限を生徒に渡すことで責任が生まれ、より深い学びが実現する。

という理論を実践と紐づけて現場で使える形にしてくれたこの本を思い返します。

「学びの責任」は誰にあるのか: 「責任の移行モデル」で授業が変わる

「学びの責任」は誰にあるのか: 「責任の移行モデル」で授業が変わる

  • 作者: ダグラスフィッシャー,ナンシーフレイ,Douglas B. Fisher,Nancy E. Frey,吉田新一郎
  • 出版社/メーカー: 新評論
  • 発売日: 2017/11/17
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②こんな人が会社にほしい!3つの基準とは?

「権限移譲」をしているので、カルビーの新卒採用に会長がタッチすることはない、と述べていたが、松本会長は3つの基準を持っている、と言っていました。

  1. 倫理感(Integrity)のある人
  2. 「ジアタマ」のある人
  3. 人から好かれる人(コミュニケーションスキルのある人)

意外だったのは、

○1つ目の「倫理感(Integrity)のある人」

稀代の経営者が、一番最初に求めているものが「倫理感」でした。

ただ、英語でIntegrityと言っていたので、ちょっと意味が違うんじゃ…と思って調べたら、こんな記事がありました。これのことをおっしゃっているのでしょう。

この記事では、「真摯さ」「人間性」と訳している。少し引用しよう。

integrityとは何か。ドラッカーでさえ「定義が難しい」と書いている。ただし「真摯さの欠如は、定義が難しいということはない」。ドラッカーが『現代の経営』で挙げている、integrityが欠如した人の例は以下の通りである。

・人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者
・冷笑家
・「何が正しいか」よりも、「だれが正しいか」に関心をもつ者
・人格よりも頭脳を重視する者
・有能な部下を恐れる者
・自らの仕事に高い基準を定めない者

経営者の皆様、“インテグリティ”をお持ちですか?:日経ビジネスオンライン

 学校でも、まさにこの裏返しの人物を育てたいですよね。

もちろん、各教科で実現したいこと、身に着けてほしい知識や考え方はあるにせよ、教育者として、どういう「ひと」の教育に寄与したいかのビジョンは重要です。

立教大の吉岡総長は、「よい研究者=よい教育者」という鉄則がある、と言っていました。理系の基礎研究には必ずしも当たらないかもしれませんが、よい研究者だから、自分の研究の意義を深く理解して伝えることができ、その使命感に学生たちは刺激を受ける、といった趣旨のご発言でした。

 

○3つ目の「コミュニケーションスキルがある人」

よく言われるものですが、

松本会長は、それを「人から好かれる人」("To Be Loved by Others")と表現していました。

先ほどのIntegrityも含めて、このあたりの英語のニュアンスに重きを置くあたりは、16年間のJ&J日本法人社長を務められたことが大きいのではないでしょうか。

全体を通してですが、ユーモアたっぷりに語られていて、プロ経営者の話術に魅了されました~!

 

③リーダーシップとは?

松本会長の定義は

「組織を率いて、継続して、成果を出し、結果の責任をとれるスキルや能力のこと」

これを学校現場に勝手に置き換えていうと、

生徒にあらゆる場面で「率いる」経験をさせ、継続して成果を出させる支援をし、結果の責任をこちらがとる代わりに、次のチャンスに取り組ませること

という感じでしょうか。

しかも、それをあらゆる生徒に経験させたい。難題です。

教員って学校教育で「いい思い」をしてきた人ばかりなので、ともすれば自分が脚光を浴びることに満足感を覚える勘違いをしがちです。

しかし、教育は根本的に「引き出すもの」、支援者としてのはたらきです。

満足な授業ができた!と思っていても、それが「自分がうまくしゃべれた」「自分が思っているような形になった」という状態は、自分を疑ったほうがいい。

「生徒が」を主語にして、どんな文章が作れるか、そんな観点で自分の働きを見直したいと思います。

というか、生徒の持っているものをどこまで見ているか、なのかなあ。

おわりに

他にも「Diversity(多様性)は誰かが損をする

後継者なんて知ったこっちゃない。Retirement is retirement」など、印象的な言葉が多く、”雇われ経営者”としての場数を感じさせる語り口でした。

大学の総長お三方の話もよかったのだけれど、やっぱり簡潔明快に語られるわかりやすくユーモアのある話の威力を痛感しました。

常に「3つあるんだけどね」とか「大事なのは2つです」と前置きしてお話しされる姿も、だらだら喋ることをしてしまいがちな教員は見習っていきましょう。笑