今年もこの日を迎えた。戦後72回目の広島、原爆の日。
ちょうどNYの国連本部を見学したこともあって、そこで原爆が、「どう伝えられていたか」をこの目で見てきたので伝えたい。
軍縮という大きな枠組みの中で
日本では広島の平和記念資料館、長崎の原爆資料館にみられるような「原爆」というものに特化した展示が行われている施設がある。
だが、アメリカにはそのような常設展のある施設はないといっていいだろう。
あるとすれば、こちらの記事に書かれているような展示が該当すると言えるが、どちらかというと、アメリカの歴史として記しておく、といった具合だ。
さて核心の原子爆弾の描き方である。原爆のコーナーは、キノコ雲を背後に壊滅的被害を受けた広島の空撮カラー写真という構成だ。死体の写真や重傷者、泣き崩れる人など生々しい絵はどこにもなく、しっかり排除されている。キャプションは「1945年8月6日、アメリカのB29は広島を破壊した原子爆弾を投下した。以降、戦争と世界はまったく違うものとなった」と無限大の彼方から見たような文章となっている。そこに人間の姿はない。 国立アメリカ歴史博物館
※なお、他にも期間限定で、こういった展示が行われていたことも補記しておく
したがって、国連における「原爆」の展示も、あくまで国連の活動の大きな1つの柱である「軍縮」の中に位置づけられた、”最も忌むべき核兵器”としての展示であった。
実際の展示の様子
丁寧に写真を撮って回る時間がなく、雑になってしまったがご容赦頂きたい。
後ろのきのこ雲は合成写真ではなく壁にでかでかと貼られていた。
これは長崎で被爆した聖母子像。
解説によると、爆心地から500mの位置にあったものらしい。
みて頂きたいのはこの聖母子像の背中だ。
少し暗くてわかりにくいかもしれないが、
表のような立体感が一切なくなり、平らになってしまっている。
また、表面をよく見ると、ただれてぶつぶつのようになっていた。
これはあくまで「像」だ。生身の人間ではない。
日本で勉強する機会があれば、一度は生身の人間が被爆した写真や映像をみたことがあるだろう。これでは、言い方が難しいが展示としては物足りない、と言わざるを得なかった。
他にも、つぶれた瓶の実物や缶の実物が展示されていた。
しかし、決定的に足りなかったのは、
生身の人間がどうなったのか
これが足りない。それに対し、911記念館は本当にリアルな、生身の人間の話だった。
先に紹介した記事でも記されていたが、
死体の写真や重傷者、泣き崩れる人など生々しい絵はどこにもなく、しっかり排除されている。
のだ。これは国連本部の展示でも同じことを感じた。やはり大きな目で物事をみる、ということも大切だが、本当に伝えたいのは何なのか、という点でもどかしさを感じた。国連は戦勝国によって主導権が握られている組織、という事実が、日本との原爆の認識の違いをうんでいる、というのはうがった見方だろうか。
他にもこんな展示があった。
1枚しか撮っていないことを後悔したが、実はこれがTV映像で、右上の1974という数字は年号だ。これが刻一刻と時を刻んでいき、核実験が行われた場所だけ光っている。
そして、核実験を行った国の国旗と、その回数が累計で画面上部と下部に表示されている。圧倒的に、アメリカの回数が多いことが分かるだろう。
最後に、壁に貼られていた展示の言葉を紹介したい。
前国連総長・藩基文(パン・ギムン)氏のことば
原爆、という大型核兵器ではないが、小型の兵器について語られた言葉だ。
ニュアンスを確かめるためネイティブの友人に、も聞いてみた訳はこうだ。
わざわざスピーチ原文からニュアンスも汲んで訳を添えてくれたので紹介したい。
「違法な小型武器は、正統な国家権力の転覆を企てる者、恐怖および不安を掻き立てる者、もしくは犯罪目的を遂行しようとする者たちによって、好んで所持されている。
武力紛争、海賊行為、ギャング闘争、そして犯罪に関連する暴力事件における小型武器および軽火器の使用により人々の生命が奪い取られていく様は、これまでに幾度となく記録されてきた。
毎年、50万人以上が(こうした小型武器の使用によって)殺害されている。そしてその様に失われている命の多くは軍人のものではなく、民間人—特に貧困層の人々の命であることを、我々は留意しなければならない。」
広島・長崎はどうであっただろうか。
「核兵器の被害のない世界を」と「核兵器そのもののない世界を」
は一見対立するように見える(し、現実北朝鮮をみれば脅威として認定する以外ない)が、両者とも「平和な世界を願う」という点では共通認識が作られている、と思えてならない。
何度でも忘れ、何度でも思い出すしか凡人にはできない。そこから始めたい。
平成29年8月6日 広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式あいさつ | 平成29年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ