やっちゃえ先生探究記

生徒の力が引き出される「学習者中心の学び」をデザインしたい教員です。地道な形成的評価を大切に。

【実践報告】18歳選挙権を得た生徒たちと行った主権者教育を紹介します~2017衆院選に向けて~

I Voted

ついに明日が投票日。変な言い方だけど、やりきった感があるのは、9月から今日まで選挙をテーマに主権者教育?とやらを実践してきたから。

どんなことをしたか、自分の棚卸しも含めて時系列に書いておきたい。

①2016参院選 を題材に

まず、政党の特色ではなく、政党支援団体、支持基盤を確認した。

国政がただでさえ遠く「自分なんかが投票に行っていいかわからない」という生徒の声を受け、自分と同じような人、「ふつうの人」が政治活動を行っている様子を感じてもらうために池上さん選挙特番の録画映像を見せ、オンラインクイズで内容を確認した。

 

次に、政策のリサーチと確認をさせ、ディスカッションの時間をたっぷり?とった。

そのときに”政党名を伏せる”というルールを入れたことで、偏見にとらわれない議論を目指した。

党首としての役割をつけた討論と、あなた個人の本音を出し合う討論を分け、ズレを認識させる展開をつくった。

世の中に出れば、いくつも「ズレ」がある。

 

さらに、グループであえて意思決定をして政党を1つ選ばせ、そこでもグループと自分のズレをつくらせた。

決め方も決めさせた。多数決や消去法がほとんどだったが、全員一致で納得のグループもあれば、政治に詳しい生徒が独断で決めたグループもありリアルが見えた。

 

その後、放課後に模擬投票を行なった。

グループでズレを感じた生徒のもやもやを、授業終わりの大福帳と、投票行動で吸収したかった。

 授業内で投票率が100%なんて茶番だと思っているのです。

放課後に模擬投票をすることで、複数日程設けても投票率が上がらないリアルを実感した。私よりも生徒たちが自分たちの投票率の低さに引いていた。

 

②衆院解散の報道を受けて

そんなことをしていたら、9月下旬に10/22解散総選挙の報道があった。

ちょうどこのとき、模擬投票の結果の振り返りをさせ、生徒が大福帳に書いてきたコメントを紹介していたのだが、あれよあれよと小池新党、一気に選挙ムードになった。

それを追い風に、一気にリアルな政治を体感してもらうチャンス!と捉えた。

 

が、制度の上で踊らされる有権者ではいけない。

制度の当たり前を疑い、多角的に今をとらえる試みをした。

それが、坂井豊貴さんの著書をベースにした選挙制度の授業。

クリティカルシンキングとして選挙制度、というか「多数決」を疑い、制度の威力を実感してもらった。

決め方が変われば歴史が変わる。

制度の裏には思いがある。

たかが制度、されど制度。 を痛感してもらった。

内容としては高校の教科書から掘り下げたものだったが、食いつきは最高だった。

「多数決を安易に使っていたけれど、これからは一生安易に使うことはない」と気づきを生活に取り入れる宣言をしてくれた生徒もいた。

多数決を自明視しないものの見方を手に入れてくれたと思う。

 

ここまでの①②の展開まとめ

昨年の2016参院選というリアルにズームインした後、一気に制度そのものへの視点までズームアウトした。

次はまたズームインだ。社会科は常に往復運動。具体と抽象の往復運動だ。

衆院選2017の現実へズームインする。

 

③2017衆院選 

民進党の分裂、希望の党と日本維新の会の協力、立憲民主党の立ち上げなどの選挙戦の現状を確認した。

ここからは生徒たちが走り出すのを支える役回りに。

必要なグループには論点設定だけ手伝う。質問はそれぞれ受けるが、答えは探らせる。

なお、材料としては、選挙公報や政党HPはもちろん、「政治山」の政策比較表、5大新聞社の特設サイトも使用した。使い分けるのもリテラシーだ。

これらの材料を共有できたのは、Google Classroom様様だ。このツールがなかったらできなかった。 

www.yacchaesensei.com

 

そうして最後のグループディスカッションを迎えた。論拠を参照しながら、不安を共有する。不安を共有しながら、論拠を探る。

ちなみに学校の図書館は学びの空間としても本当に機能的で、感謝しかありません!

教科を超えてもっと図書館を協同的な学びの場として認識してもいいと思う…

 

生徒たちも顔つきが変わり、語っている内容はどこかの国のヤジを飛ばしあう国会議員なんかより十分主権者だ。

単に権利を有する、有権者ではない。権利のあるじとして、立派な主権者だ。

しかし、ここまでやっても、「自分は知識がない」と自信のない生徒もいる。

 

政治、というか学問に完璧にマスターした!なんてことはない。だから今あなたが見えている景色で投票すればいいんだ、と最後に淡々と直球を投げるしか私にはできない。

 

【2017.11.5追記】この授業のまとめで生徒から寄せられたコメントを記事に載せました。

www.yacchaesensei.com

おわりに

1回1回の授業の設計はここでは割愛してしまったが、

設計をきちんとすれば、生徒は走り出せる。というか走れないわけがない。

 

投票日には河合塾の全統マーク模試があることも早くから伝え、期日前投票を促してきた成果か、多くの生徒が投票に行ったと報告してくれている。

台風の近づくのもあって、早めの告知をしておいてよかった。

選挙後の授業では投票行動に関してアンケートを取って検証するのが楽しみ!なくらいには、なったかな。笑

 

さらなる成果?として、期日前投票や投票日のアルバイトに生徒が応募した。

その報告もクラスで行い、友人の普段とは違う顔にキリッと引き締まる生徒たち!嬉しかった。

家庭で政治の話をした、という報告だけでなく、自分から政治を扱う学生団体入り活動する!という生徒もいる。

でも一番嬉しいのは、「政経の授業がなかったら絶対投票に行こうとすら思わなかった」という生徒がいること!

もちろんこの授業だけが原因ではないだろうが、行動をぐっと後押しする授業であったらそんなに嬉しいことはない。

 

また別の記事で、具体的な生徒たちの言葉も紹介したい。生徒たちは本当に素晴らしい。引き出せば引き出すほど輝く!

だ、である調より、ですます調に戻そうかな…