通常業務が始まり、完全にペースが落ちながらも、”21世紀の教育改革のバイブル”『学習する学校』第1部 教室を読了しました。
学習する学校――子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する
- 作者: ピーター M センゲ,ネルダキャンブロン=マッケイブ,ティモシールカス,ブライアンスミス,ジャニスダットン,アートクライナー,リヒテルズ直子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2014/01/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本題に入る前に…
まだ「スタート 1・2章」をご覧になっていない方がいれば、恐縮ですがこちらの記事①②を読んで頂くと、流れがつかめます!
↑②の記事は、グロービスの先生にNewspicksでシェアしていただきました!
さて本題!第1部の内容は?
本記事の内容は書籍全体の章立てから言うと、ここです。
- スタート 1・2章
- 第1部 教室 3~7章 ←ココ
- 第2部 学校 8~12章
- 第3部 コミュニティ 13~16章
第1部は「教室」というレベルです。
教育界の現状をふまえ、5つのディシプリンを使って、「教室」においてどういった教育実践がなされてきたか、に焦点が当たっています。
もう少し言うと、
1人の教員として、教室レベルで何ができるか、
5つのディシプリンに触れた子供たちが学んでいる教室《学習する教室》ではどんなことが起こっているか、が述べられています。
章ごとに、「個人的にこの章で1つ印象に残ったことを選ぶならコレ!」という雑感を記しておきたいと思います。ここから長く感じるので、閉じるなら今です(笑)
第3章:教室のドアを開ける
まず、章のタイトルのつけ方がいいですよね(笑)さあ、教室ではどんな光景が広がっているのでしょう…みたいな、「映像化」する言葉は読んでて少し気持ちが踊ります。この章では《学習する教室》のあり方が示されています。
「学習する教室」は、「すべての子どもは学べる」ということを理解するだけでなく、生徒は異なる様式で学び、その能力は生まれたときに決まるわけではなく、社会的背景あるいは過去の経験にもよらず、どの年齢でも驚くべきスキルや能力を獲得できるということを自ら体現するものでなくてはならない。そのようなクラスでは、どの生徒も、すべての生徒が成功することが自分の目的の一部だと理解している。
「すべての子どもは学べる」
「すべての人は新しい未来を生み出す能力を持つ」
というコンセプトを指針に、一言でいえば、《学習する教室》をつくっていこう、という希望の章だった。
補足だが、「教室」という用語の説明が興味深い(この本はそういう注が手厚い!注を読みたいと思える本です)。ほんとにかいつまんで抜粋すると、
つまり、「Classroom」とは人々が周りの世界を学ぶために一緒に召集された、継続的で、オープンな環境という意味となる。
第4章:学習者を理解する
この章は、学習者の尊厳について記された章だ。
教育界は耳が痛いだろう。「一人ひとりに価値がある、かけがえのない存在だ」と声高に言いながら、例えば教員なら、気付いたときには「あの子は(論理的な文章を)書けないんだよなあ」とか「問題に集中するまで時間かかる」なんて“課題”を見つけてくる。
そうやって、当たり前の中で埋もれていくそもそもの学習者の尊厳をきちんと見つめなおせるためのヒントを散りばめた章だ。
そのヒントである教育実践を支えていたのは、鋭い方はピンとくるだろう、ハワード・ガードナー『多元的知能の世界(Multiple Intelligences)』だった。がっつり紹介されていた。
- 作者: ハワードガードナー,Howard Gardner,黒上晴夫
- 出版社/メーカー: 日本文教出版
- 発売日: 2003/09
- メディア: 単行本
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この本で示されている9つの知能の在り方が紹介されていて、この知能の何を自分やクラスメイトは持っているだろう(←雑)、みたいな授業実践とその意義の解説は秀逸だった。そのまま自分の授業でも取り入れてみたい、と感じた実践だった。
第5~6章:実践&生産的な会話
長くなってきたので短めにしますが、簡潔にいうと、この章の刺さる箇所は完全に先生1人1人によって異なるでしょう(本当にそう思うんだもの)
さまざまな実践例や意図すべき会話の例が紹介されていて、その具体度と抽象度の塩梅が絶妙です。具体的すぎず、抽象的すぎず。
私が「これは!」と思ったのは3つ。ここで解説し始めるとそれだけで別記事になる量だと思うので、ぜひ詳細は書店で手に取ってごらんください…!
①p330~『宿題という神話』より「意味のある宿題」8項目
あなたの出してるその宿題、意味ありますか?と問うてきますよ…
②p359~アート・コスタの「知的成長の16の特性」研究
※②は来年度頭の授業で使うことに決めました…これから1年、どういう知的成長を一緒に経験していくか、今のあなたのニガテ/得意はなにか、友達のそれは何か、何を鍛えたいか、みたいなワークショップをやりたい。
③p388~「保護者面談を構成し直す」質問項目
そのほかにも、6章の最後の実践・エクササイズは小学校で使ったら面白いだろうなあと思ったり、本当により取り見取りです。
第7章:教室におけるシステム思考
第1部の最後、ここでハードルがグッとあがった感覚。
なぜなら、5つのディシプリンの1つである「システム思考」を理解していないと、実践例がピンと来ないのだ。(私の勉強不足!)
そこで!前回記事で紹介して絶賛されていたこのサイト。本当に、いいです。
システム思考の定義と写真を転載させていただこう。
※実は熊平先生にお会いしたことがあるのだけど、目の付け所がすごい。それでいて全然ご自身は前に出ない方なので、そのギャップに驚きでした。まあとにかくサイトをみてください。わかりやすいから!
ここでシステム思考を勉強してから読むといいです!(ほんとうに)
おわりに ~正直に言おう~
本書を読めば読むほど、提示される教育観・学習観・教室観などの「観」をどこまで今の学校の先生たちと分かり合えるかなあ…という疑念がわいてくる。
決して後ろ向きではないのだが、この「観」を問い直す不断のコミュニケーションができる職場(学校)か?ということを、本書は常に問うてくる。
そう考えると、私なんかは「うう…」と思ってしまい、「いいけど、難しそうだなあ」とか「結局上の人たちが動かないとね…」とか「学校作っちゃいたい」なんて不遜な思いを抱いてしまう。
間違いなく本書は、どの教員にもヒントを与えてくれる書だ。ただ同時に、一朝一夕にはいかないことも突き付ける。
ワーキンググループを作るなり、そういう草の根から始めていく気概を問われる本だと改めて感じる。けど、だから読むの辞めた。とはならないのも本書の魅力だ。
学習する学校――子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する
- 作者: ピーター M センゲ,ネルダキャンブロン=マッケイブ,ティモシールカス,ブライアンスミス,ジャニスダットン,アートクライナー,リヒテルズ直子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2014/01/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ということで、
第2部以降もなんとか頑張りたい…(瀕死のガリア人)
【続編を書きました!】