やっちゃえ先生探究記

生徒の力が引き出される「学習者中心の学び」をデザインしたい教員です。地道な形成的評価を大切に。

センター試験2018政経の問題を好きなとこだけ分析してみた~明暗を分けたのは第二問?~

センター試験2018。直後に倫理の分析記事を書いてから、「あんまり需要ないよなあ…」と思い、書いていなかった政経の分析記事です。

倫理&倫理政経の平均点が高い!

駿台ベネッセさんのデータネットから。センター最終発表の平均点です。

左の数値が今回のセンター2018の平均点。右が昨年度です。

f:id:Yacchae:20180204221552p:plain

平均点情報 | 2018年度大学入試センター試験自己採点集計データネット

ご覧になって分かるように、倫理政経(倫政)という実質2科目負担のある受験科目ですが、その負担が報われるような平均点の高さ!でしたね。

しかし73点というのはかなり高い…基本的に60%前後の平均点を狙って作っていますから、誤差とはいえず、来年のセンター2019は難化するんじゃないでしょうか

また、倫理も平均点が68点弱とかなり易しめ。分析記事の通り、8択問題の減少・基礎的問題の出題が多く、まあそうなるよな…という感じです。

さて、この記事は政経の分析なので本題へ。

平均60点を切った政治経済…!

上に書いた倫政・倫理の平均点の高さとは逆に、政治経済(政経)は56点という平均点にとどまりました。

その原因は、第二問の難しさでしょう。これは断言していいと思います。

解いた直後の自分のツイートがその時の最もリアルな感覚を反映していると思うので、それを援用しながら分析してみます。 

以下問題の引用は東進さんから。センター試験2018 政治・経済問題|解答速報2018|予備校の東進

第一問のリード文が好き。

個人的には、第一問のリード文は、現代の政治の潮流を見定める上でも、とっても好きな出題です。政府を国民がいかにコントロールするのか、という民主主義の原点をきちっと示してくれています。

グローバル化の中で、「国家」の影響力がますます薄れていく中、同時に「国家」をなくすこともできない社会のジレンマ。両者のバランスを取ることが非常に難しいのは今も昔も変わらない、ということがよくわかります。その具体的な例が出題の対象になっていますよね。

こういうコメントをすると、これだから教員は…と思われるのかもしれないけれど、いいものはいいと言おう。興味がある方は読んでみてください。

f:id:Yacchae:20180208232715p:plain

第一問リード文

問題で特徴的だったのは、最初の問題でしょう。

要約すると、最初の問題はこういう問い。

「第三の道」という言葉が、ブレアとフルシチョフのどちらに関係が深いか?

という問題と、

「新自由主義(ネオリベラリズム)」という言葉が、サッチャーとF.ローズヴェルトのどちらに関係が深いか?

 という問題の答えの組み合わせを選ぶものでした。

ピンポイントで知らなくったって、フルシチョフって米ソの二項対立的な時代でしょ、ってことはゴリゴリ冷戦時代の人だから「第三」って来るんならよく知らないけどブレアかなあ、みたいな仮説を立ててほしいと願うのは言い過ぎだろうか。

同じく、F.ローズヴェルトって思いっきり世界恐慌だよね、そんな時に自由主義で市場信じていたら世界終わってるじゃん。と思ってくれないだろうか。

そういう「モノの見方」をどうすれば獲得できるか、もちろん知識に裏打ちされるんだけど、自分で考える時間、場数を踏めば類推する力だって鍛えられる。

センター対策の授業も担当しているので、ただ知識を網羅するだけの授業ではないモノの見方を養えて点も取れるといいよね(小声) 

第一問は全体的に時事性も高い出題でした。

政府委員制度廃止は、森友加計問題で色々な人が国会に呼ばれたから、その中に官僚もいたんじゃないか、と早合点した生徒もいたのかもしれない。

けれど、日本の政治が選挙で選ばれていない(「選んだ」という言葉は検討が必要なのだけれど)官僚主導の状態から、民意を受けた(と一応理解される)政治家主導の状態へ変化してきた、という大局を知っておきたいよなあ。

こういう作品に出会っていれば、教条的に学ばなくたってよ〜くわかる。

官僚たちの夏 (新潮文庫)

官僚たちの夏 (新潮文庫)

 
官僚たちの夏 [DVD]

官僚たちの夏 [DVD]

 

第二問でどこまで失点を防げたか…?

が得点のカギを握っていたでしょう。

でしかもこの第二問の厄介な問題たちが、倫理政経の方には全くと言っていいほど出題されていなかったのが奇跡。

ここで感じたことは、10年単位で現代史(戦後史)を見る視点の重要性だ。

かつて中学社会や世界史選択者向けに、ざっと日本の近現代史を10年単位で概観する講義を15分で行うことがあるけれど、あれを2000年くらいまで延ばさないとなあ。

19○○年代!と言われたら、

これ!という出来事を、①国内政治 ②国内経済 ③国際政治 ④国際経済 の4象限から1つずつピックアップできるような状態にはしておきたい。

なんだか授業構想メモのようになってきた…

第三問・第四問はオーソドックスな出題

なので割愛しますが、この2問は好き。明らかに何かを訴えかけているでしょう。

ここまで読んでくださったあなたも、センター出題者の直球を受け取ってください。

f:id:Yacchae:20180209000331p:plain

なんてこったい。パート1

f:id:Yacchae:20180209000522p:plain

なんてこったい。パート2

おわりに

「まず大学に受からなければ話にならない」という生徒に対して、そのニーズをかなえる手助けをするのは当然なのだけれど、偏差値教育の威力を思い知りますね…

前回記事で書いた、

社会科教員として私が大切にしていることを思い出させてくれた。つまり、平和の担い手を育てること、そしてそのために社会課題と出会わせること

そんな教育を志して今の場所にいるのだった。

【書評】『学習する学校』⑤社会課題と”出会う”ことはいかにして可能か?~第13-16章:地方の公教育が示唆する可能性~

この気持ちを、来年度のセンター対策の講座でも忘れないように。