やっちゃえ先生探究記

生徒の力が引き出される「学習者中心の学び」をデザインしたい教員です。地道な形成的評価を大切に。

【書評】なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか!?ー日野田直彦校長のサーバントリーダーシップに見る管理職像ー

日野田先生の箕面高校改革の物語。あれやこれや奔走する若き校長の話だと思っていました。

サーバント・リーダー

皆さんは校長先生というと、どのようなイメージを持っているでしょうか?

きっと私たちが出会ってきた「校長」とはきっと異なる印象を与えるのが日野田先生。39歳という若さで大阪府立箕面高校の民間人校長に着任した方です。

私が本書を読んだ感想はこんな感じでした。

向き合うべき人(生徒・保護者・同僚)を間違えず、柔らかく接し続ける。

特に、同僚の先生方に対して、「敵ではない」ということを強く意識しておられたことがよくわかります。

ぐいぐい引っ張るというより、困りごとを見つけて、どうしたらいいですかね?一緒にやりませんか?と声をかけられる校長、そんなイメージです。

president.jp

彼自身が語っているサーバント・リーダーシップを体現して、組織をマネジメントする。(サーバント型の校長は自分の勤務校でも喉から手が出るほど来て欲しい。もちろん、本では美化されていて実際は反発もあるんだろうけど、それでもいい。改革を迫られていた前任校のようなガツガツ感、惰性で生きていたら学校が潰れる危機感がたまに懐かしくなるのです…)

逆に、これができれば箕面高校のような成果を出すことは決して不思議でない(と思える)んだけど、それがなかなか難しい。

なぜか?

管理職になりたがらない教員

そもそも教員になりたいのであって、管理職になってしまえば、教員という仕事の最大の魅力かもしれない「生徒との関わり」「教室」という環境を手放すことになる。

それだけではない。

少しばかりの管理職手当と引き換えに長時間勤務というプレゼント。

この記事にある通りですね。

教員が管理職を目指さない理由として1番に挙げられるのが、「子どもと接する時間が少なくなる」ことだ。そのほかにも、「業務量や責任が重い」「学校管理には関心・興味がない」「自分は向いていない」と考え、副校長の職を回避する教員が多い。

toyokeizai.net

管理職になろう!と思ってくださる先生がいても、その先生は決してマネジメントのプロではないわけです。

教員という仕事の特性上、各教員のその場その場の裁量は大きいものになります。それが教員の仕事の魅力的な部分であると同時に、組織としての弱さにつながる場合があると思います。

管理職だからグイグイ改革をする必要はなくて、むしろマネジメント、組織の整備士的な役割を担って頂かないと、と日々思っていた矢先の1冊でした。

正直、自分の勤務校ではなかなか校長のリーダーシップが見える形では発揮されていない。むしろ、教員集団自身が「何もしない」校長を生み出しているような気がしている。校長はとても「いい人」です。でも、マネジメントのできる管理職ではない。副校長は大変だ…

管理職を叩くのは簡単

自分も少し勤務校の内情を書きましたが、管理職叩きよりも先にやるべきことがあるわけです。

愚痴る前に一緒にやろうよ!と腹を割って話し合える教員集団は強いよ、そりゃ。強いし、そういう人たちと学校を作るのは楽しい。

「業務の特殊性」をタテに様々な言説を許してきた学校が、その言説ゆえに給特法などを許しているという状況も皮肉です。

 

みらいの教育―学校現場をブラックからワクワクへ変える (ワクワク対話シリーズ)

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おわりに

民間人校長に反対する声もあるけど、それは民間人校長がダメなのではなくその人が、その環境でダメだっただけのこと。マネジメントのできる教員は本当に貴重。

名選手名監督にあらず。

ヒラの教員として自分が言えることは、「愚痴る前に一緒にやろう」と言い合える関係を同僚の先生方と作ること。そういう先生方がたくさんいる環境は恵まれている。

巻き込んで巻き込まれて、前を向いてやっていかないと楽しくない(笑)

本にはあまり写真がなかったのですが、このページは「誰がどこに座ってもいい」フリーアドレス型の職員室の写真も掲載されています。

edupedia.jp

なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか! ?

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月10冊はなかなか難しいけれど、読み続けて書き続ける(週1-2)ことから。

それにしても、自分の読んだ本はいい本だったと思いたいし、ましてや自分の考えを補強するような主張であればなおさら書評もバイアスがかかるなあ。