師走のはじめに、出ましたね。
教育政策に絶大なインパクトを与えると言っても過言ではないPISA。
結果概要がこちら。とりあえず要点はここかと。
ソースまとめてくださっています。感謝。
PISA2018速報まとめ
— 寺西隆行 (@teranishi) 2019年12月3日
▼国立教育政策研究所https://t.co/OIVL7KJbHB
▼日経
日本の15歳「読解力」15位に後退 デジタル活用で遅れhttps://t.co/AU7M0N4hMk
▼朝日
日本の15歳、自由記述苦手? 国際調査で読解力低下https://t.co/LQ58DyjpDG
(続)
個人的になったところをざっとまとめておきます。
読解力の低下の原因は?
- スマホでのやり取りが中心となっている生徒たちの言語環境の変化
- 読書などで長文に触れる機会の減少
- コンピュータ画面上で長文読解する形式への不慣れ
などが指摘されていますが、ちょっと不正確な気がしています。
確かに習熟度が最低レベルの低得点層は増加しています(PISA平均も増)ね。
そういった言語環境の変化と長文慣れしていない生徒が世界的に増えていることが示唆されます。
2012PISAが一番レベル1以下の生徒が「少ない」というのも面白いですね。2012PISAの調査対象世代はいわゆる「ゆとり世代」のはずです。
でも長期トレンドは「平坦」!
読解力は全体として平坦タイプです。だから「生徒の読解力が低下している!長文離れ!読書離れ!」という言説を鵜呑みにしないように注意。
読書活動と読解力の関係
よく報告書をみてみると、読書活動の詳細が面白い!
- 読書を「大好きな趣味の一つ」とする層は微増
- 本の内容について人と話すのもPISA平均より上
- 読書の時間をムダと考える割合が低い!
- 目的的な読書という傾向が強いわけではない
など、左下のチャートだけでも個人的に面白さ満点でした。
右下のチャートを見れば、
- コミック(マンガ)、フィクション(小説・物語)
がPISA平均を大きく上回っています。コミック(マンガ)すごい。
雑誌も上回っています。新聞は日本だけが低いわけではないですね(だからいいという問題ではないけれど)。
家では読んでいるのだから
こうやってみると、家での読書体験が乏しい、ということが一概に言えないことがわかります。
しかし一方で、家での読書体験が乏しい子供の家庭では、きっとその子供の保護者に関しても読書体験が乏しいのでしょう。結果として、こういう表が出てくる。
学校教育で、この格差を目の前にして、どう読書体験の少ない生徒に関わっていくか、を考えて何年も一人に寄り添った読書教育なんかしている先生がいたら話してみたい。
そうでなくとも、学校で豊かな読書体験を積むことを目指したいよね。
ノンフィクションをどう扱うか
もう一つ思うのは、ノンフィクションについてPISA平均より低い割合になっていること。
ということは、
雑誌、マンガ、小説、物語は黙っていても自分たちで読むのだとすれば、学校現場でノンフィクションをうまく使う余地が大いにある、ということではないでしょうか。
ある意味、歴史や公民で人物伝を「ノンフィクションを読んでいる」と思わせずに学びのデザインに組み込めれば、そこからノンフィクションに誘われるケースもありそう。
どうしても社会科は「ひと」に注目しても、社会レベルの大きい話に持っていきがちだけど、「ひと」にどっぷり浸かる授業構成もやってみたい。
ICTが使えていない?
そして、今回のPISA2018の個人的注目点がもう一つ。ICT利活用。
当然と言えば当然ですが、日本の子供たちがデジタル機器に不得手というわけではありません。これも読書と同じで、家でも「使っている」のです。
決して「家でも学校でも読んでない、デジタル機器を使ってない」という話ではありません。
ネットでニュースは読んでいるし、チャットはガンガンするし、1人用ゲームでかなり遊ぶし、友達とオンラインゲームもするのです。
でも学校で使えているかというと使えていない。
そういう状況で教員が「生徒のICT活用」をイメージするとどうなるか?
授業内でのICT活用がいかに進んでいないか。でも生徒たちは実際に学校外でかなり使っている。ということは何を意味するかというと、学校で「ICTを使っていない」教員が「学校のICT活用」をイメージしようとすると生徒の家庭でのそれ、すなわち一人用ゲームやチャットになる。さらに尻込み、の構図か。 pic.twitter.com/PcCSXfSrRd
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2019年12月3日
↑こうなりますよね…。
小・中で授業内のスマホ活用が難しい状況は想像できるからこそ、高校ではどんどん使っていって実践の知見を広めていかないといけないのかもしれない。そしてそれができるのが私立であるならなおさらね。
ICTはアウトプットで使わせたい
ICTに関する調査結果について、興味深い文章が。
自由記述について論理的に自説を展開することに課題があるとのこと。
普段の授業でアウトプットをさせていなければ当然その力はつかないし、その指導は学校でこそ行われるべきです。
その意味で、かねてから「BYOD」って最強だと思うのです。
生徒たちのフリック入力速度は相当早いです。ノートPCでタイピングに移行していく年代とは思うのですが、自分の端末となると少しハードルが高い。
となれば、生徒のスマホを使ってもらうのが一番早いはずです。
今回の「デジタルPISAショック」をどう捉えるかだけど、授業内のICT活用ってインプットよりアウトプットの方がハードル低く使えたりするんだよね。BYODが生きるのはそういうところです。学校端末を入れたって、自分のアカウントもなく共同編集等もできないブラウジング専用機ならそりゃ使わない。
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2019年12月3日
紙でないと考えを論理的に展開できないわけではありません。スマホでも論理的に文章を展開することは可能です。
結局生徒の書いたものに対して教員がフィードバックをできれば、紙であろうとスマホであろうと問題はないはずです。
となれば、オンラインでの文章提出の方が教員のフィードバックも手早く、返却も1クリックで楽。
ことになると思うのです。
実際、生徒が書いた文章にハッとさせられることもたくさんあります。
教育という場の権力構造を少しでも解除するツールにもなりうる。
おわりに
関連記事をまとめておきます。当然学校でのBYODで課題はあります。
でも、本当に学力の3要素を伸ばし、生徒の力を育てようとするなら、やれることは全部やってみたい。
年末にもう一度丁寧にPISA2018は読み込んでおきたい(溜まる積読)