センター2020公民科目のゆる解説第2弾*1です。第1弾は倫理でした。
さて早速大問1から解きながら解説していきます。
- 大問1「平等」リード文が良い!
- テストの誤答の作り方
- 消費者問題・労働問題
- 問題8は基礎的な良問
- 日本の難民受け入れを問う
- 2020年!憲法改正要件!
- 外国人の人権
- 沖縄・辺野古住民投票
- SDGsはここにも
- 難問登場!
- 増加?「3つ」の正誤問題
- 自国第一主義のなかで
- 公共はこういう出題が増えそう
- 大衆民主主義を問うてきた!
- ナチスの正確な理解も
- 最後は憲法ドボン問題!
- おわりに
大問1「平等」リード文が良い!
小論の演習に使えそうなリード文だと思います。テーマは平等。
具体例を絡めて書かせたいですね。生徒にこの文章渡して、どういう小論の課題作るか問題を作らせても面白そう。質問づくりにも使えそうだし、教員の力量が問われます。
テストの誤答の作り方
問題1は、答えよりも試験の作り方に思いをはせてしまう出題でした。
というのも、選択肢の答えがカタカナ2、漢字2。
3つを覚えていれば当然該当しない「正解」は②なのだけど、こういう3つの類型を4択で出題するときによくやるパターンとして、カタカナが1つなので、ひっかけの選択肢をカタカナで作ったりします(笑)
しかも内容からいってポリス的支配とはまたうまく作るなあと思いますね…。
消費者問題・労働問題
経済の理論の出題の前に、生活者目線の問題が続きましたね。
上は消去法で、下は④が明らかに異なるのでそこまで難しくはないと思いますが、「公共」を見据えるとこういう出題は継続されるだろうし、もっと文章を読ませるのだろうと予測しています。
問題8は基礎的な良問
需要供給曲線の問題は本当にいいですよね。原理をわかっているかどうかがすぐわかる。
私のセンター公民対策では需要供給曲線は過去問や模試のあらゆる問題から引っ張って来てそれだけで演習を30問近く課しています。原理と慣れに尽きます。
今回は輸入が増加するわけだから、供給側で価格が下がるか、需要側で国内の物不足が進むか、のどちらかです。
となると、前者から①④は外せて、②の「生産性向上」が意味するところを「国内で効率よく財が供給される=物不足は起きにくくなる」と読めれば、③で確信できるはずです。
日本の難民受け入れを問う
入管施設での非人道的扱いがニュースにもなりましたが、授業で難民問題は欠かさず扱っています。これは受験生の「問題意識」を問うているように読める問題。
①を読んだ瞬間に、これを選んでほしいと思ってしまう。難民条約が「国籍条項」という日本の国内法改正に与えた影響を教えずにはいられないですよ。
つづいて大問2へ。幅広い現代の人権をめぐる諸課題でした。
2020年!憲法改正要件!
これは多くの先生方も予想していた出題でしょう。
②③で迷って丁寧に読めば「あっ国会法じゃなくて国民投票法じゃん」と思えるはずですが、センターは本当に注意して読まないとさらさらっと正しいことが書いてあるのでつられて間違えちゃうんですよね…
外国人の人権
問題14も個人的には良問だと思うのです。昨今のニュースからしてもね。
Bはカバーしている受験生が多いと思うのですが、A・Cを選べるかというと迷ったんじゃないかな…。日本における外国人をめぐる問題についてはこちらの本を是非。
沖縄・辺野古住民投票
2019年2月の沖縄県民投票があったからか?と思ってしまうこちらの問題。
知らなくても文脈で解ける気もするけれど、沖縄の投票がなかったら「イ」の出題はあったかどうか。
大問3は環境問題をとっかかりにした国際経済分野から。
SDGsはここにも
今や知らない人の方が少ないと言っても過言ではない(過言)SDGsです。
LDC、SDGs、マイクロファイナンスの3つはかなり有名になって来ました。マイクロファイナンスはグラミン銀行のおかげですね。
グラミン銀行についてはこちらの解説が面白いです。パイオニアこそ進化している。
グラミン銀行~進化する貧困層を対象に金融サービスを提供するビジネスモデル~ - 事例紹介 | Bangland
問題自体は①が答えですが「特恵関税」と出なくても消去法で迫れると失点せずに済む問題。
難問登場!
これは正答率がガクッと下がるような問題。
でも、外国製品が日常に溢れ、米中貿易摩擦が日々新聞一面を飾っているような昨今では目の前にある外国製品の来し方を想像するいい問題かもしれない(大げさ)。
皆さんも考えてみてください。
とっかかりとしては「A」は輸入業者が出して、輸出業者が受け取っているので「ウ:自国通貨」というところはたどり着きたいです。
次は
- 乙銀行から輸出業者に出ている「C」
- 甲銀行から乙銀行に出ている「B」
に目をつけると、代金の決済に対する「為替手形」であり、支払い信用状は顧客である輸出業者が一度チェックしないと「信用」にならないことを考えるとBがイ、Cがア、というように判断するかな…
これは5分くらい考えてしまいましたが、実態の見えない経済活動に思いを馳せるいい問題に思えて来ました(笑)
増加?「3つ」の正誤問題
2文の正誤を完答するのではなく、3文が増えて来ていますよね。この形式もあって、倫理に比べて平均点が下がると思います。
Aを外してCを選べても、Bを選べるかどうかは結構分かれ道な気がしますね。原発問題は扱うとしても、ここまで網羅して教えてないことを反省…
こういう人間の無意識がフクシマ、オキナワになっていく。
自国第一主義のなかで
こういう問題を出していることに意図を感じるし、理論先行のイメージのある政経が現社っぽくなっている感覚を覚えます。
援助条件の緩やかさを示す指標。借款の利率、返済期間、返済据置期間を反映しパーセントで表示される。DAC統計では、商業条件(金利10%と仮定した場合)の借款を参照条件としており、利率10%の借款はグラント・エレメント=0%、贈与はグラント・エレメント=100%となる。数字が高いほど緩和された条件が高いとされる
③か⑥までは行けても、Aの言葉は贈与比率とグラントエレメントの違いが難しい。
グラントエレメントは借款で使われる指標なので、贈与か借款か、の問題なのだけど、日本のODAの「円借款」の割合が高い、ということを考えればAは贈与ではない、と考えられればいいけれど、私は間違えました。勉強不足!
だからというわけではないけれど、これは選べない受験生の方が多数だと思うな…
最後の大問4へ。テーマは民主主義でした。
公共はこういう出題が増えそう
原理にもとづく具体的な考え方の例を選ばせる問題。
もはや知らなくても解けると言えばそうなのだけど、こういう問題を交えていく傾向は公共でも続くでしょうね。
逆にいえば、こういう問題は高得点層では差がつきにくいので、確かな暗記が大事になるわけです。差がつくのは知識問題。これは否定しようがない。
大衆民主主義を問うてきた!
意外だったのはこの問題。やっぱり現社傾向がある今年のセンター政経。
これも差はつかないのだけど、「いま」をつかむ政治経済であってほしいという願いを勝手に感じ取っています。
ナチスの正確な理解も
世相を反映している気がしてしまいますね・・・
ワイマール憲法という当時世界でも最も民主的だったといっていい憲法を持つドイツでナチスが台頭したことを何度でも思い出さないと、間接民主主義は健全に機能しなくなる。そんな出題者の願いを勝手に想像してしまいます(妄想です)。
最後は憲法ドボン問題!
最後の問題はドボン問題。まちがえたら基本的人権の理解が浅いよ!と言われてしまいそうな問題。
④を選んだ人は0点ではなく-3点にしたっていいよね(過激)。
おわりに
昨年よりは経済単元が若干難しく、今年の倫理よりは平均は低いかなと予想します。
倫理政経は倫理・政経それぞれから問題をピックアップして出題されますが、選ぶ問題によっては政経の方で足を引っ張った受験生もいそう。
現社の記事もまたUPします!