
フルタイム勤務の社会人が司法試験に合格した、となると、「どうやって勉強したのか」を聞かれることが多いので、振り返りも兼ねてまとめてみます。
※勉強開始までの経緯はこちらの記事へ
というか、自分も勉強を始めてから、たくさんの社会人受験生のご発信を見て参考にしていたので、この記事もどなたかの一助になれば幸いです。
本格的に勉強する前に!
今は比較的安価な司法試験対策の予備校も増えてきていますが、かと言ってサクッと終わる範囲・難易度ではありません。
学習経験のある人や、一部の天才を除いて、
時間でいえば数千時間(私は時間カウントはしませんでしたがざっくり4年半かかりました)、
お金で言えば数百万(後述する予備校+ロースクール既修2年間の学費で合計200万程度かかりました。給付奨学金がなければさらにかかっていたはずです)
は必要になると思います。
貴重な時間を割いて本当に勉強を始めるのか、のチェックはとても重要。
その点で、
このファーストトラックシリーズ7冊(司法試験科目の憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法で7冊)を自分で読んでみて、「面白い」と思えるかは1つのリトマス試験紙だと思います。
初学者向け(ファーストトラック=1周目)のこのシリーズは、イラストと○×クイズに加え、短い章立てで本当に読み進めやすいシリーズです。
私は法学部卒ではないので、この7科目について勉強したことがほとんどないに等しかったです。とはいえ、いきなりそれなりの金額を払って予備校の講座を買う勇気もなかったので、まずここから入りました。
終業後カフェに行って読み進めた結果、「面白い」と率直に思えたことで、「これなら本格的に勉強してもよさそう(司法試験とかに繋がらなくても教員として自己研鑽になるからいいや)」と判断し、本格的に勉強するぞ!と踏み出せたわけです。
予備校なしでは社会人は厳しい
司法試験(あるいは予備試験:ロースクールに行かずとも司法試験受験資格を得られる試験、この試験が司法試験よりも圧倒的狭き門。詳細は割愛)にフルタイム社会人が挑むにあたって、予備校は必要不可欠だと思います。
なお、司法試験界隈では、「基本書派」vs「予備校派」という「持ち家派」vs「賃貸派」のような不毛な二項対立もありますが、この議論をしていていいのは時間と体力がある専業受験生の学生の皆様のみです。笑
とにかく、司法試験においては、
- ①超膨大な範囲を早く1周すること
- ②合格するためにメリハリをつけて学ぶこと
- ③論文試験で点の取れる答案を書くこと
が求められます。独学や法学基本書のみでは、これらを実践するのは至難の業。
ということで、一部の例外を除き、社会人には予備校が不可欠だと考えます。
では、どこにするか?
上記①~➂のためには、司法試験のためにパッケージ型の講座を展開している予備校に頼るのが最重要です。
伊藤塾、アガルート、辰已法律研究所、LEC、加藤ゼミ、BEXA、資格スクエアなど、ググれば予備校がたくさん出てきます。その比較もググれば山ほど出てきます。
結論から言うと、私は伊藤塾とアガルートの無料体験講座を受講→両予備校の担当者の受講相談→伊藤塾の講座に決めました。
私が重視したのは、
- 数百時間の講義をストレスなく聞けそうか
- フルオンラインで問題なく学習できるか
- 学習相談などのフォロー体制があるか
の3点でした。どの予備校もそれなりに金額がかかるので、数十万の違いは見て見ぬふりをしました。(車1台我慢するのと一緒、自分への投資と言い聞かせてました。大学以降の学費生活費も全部自分で出してきた経験が「使うべきときは使う」能力を高めた気がする)
なぜかこの時に頭にあった言葉
進路の仕事をしていた際、駿台の担当者との打ち合わせで、「最近だと駿台さんと河合塾さんの1番の違いはどの辺ですか?」と聞いたときの返答
「正直、大手ならどこも変わりません」
という言葉です。
確かに、合格実績のある大手予備校なら、どの予備校もクオリティに大きな差はない。それは司法試験・予備試験の予備校も同じだと。
むしろ、なるべく1人の講師が全科目担当し、その講師の活舌や声のトーン等の相性、オンラインの学習システムの利便性、困った時に相談できる体制を重視して決めました。
アガルートがダメなわけではなく、自分には伊藤塾の呉先生という先生の講座がきわめて良さそうに見えたので、呉先生のパッケージ講座を受講することに決めたのでした(結果的にも大正解でした、でも今見たら値上がりしてる!自分は社会人割と他の割引併用で80万くらいだったような…)。
※ちなみに、呉先生の最新の体験講義はyoutubeでも見られるので興味ある方はぜひ。私も教員として聞き取りやすい声で、よどみなく、メリハリをつけて話すことはある程度訓練していますが、呉先生はこの点も素晴らしく、落ち着いた声色、知性と静かな情熱があふれる素晴らしい先生でした。多かれ少なかれレクチャーをする身として学ぶところも多かった。
与えられた教材だけを、やりきる
始めてしまえば、あとはやるだけ。ということで、毎日1コマでもいいから講義を受け続ける日々が始まりました。
平日終業後、土日も含め、とにかくできるだけ早くすべての講義を聞くことに全精力を注ぎました。
呉先生は2倍速でも聞き取りやすく、呉先生自身が書いたテキストを用いながら進む科目がほとんどなのでページが飛び飛びになるなどのストレスが少なかったように思います。
ここで大事だったのが、寄り道をしないこと。
あれもこれもとやりたくなったり、1つ1つをしっかり理解&復習してからじゃないと次に進まない、みたいなやり方をしていると、永遠に講義を消化できません。笑
自分も最初は、「今日受けたところの短答式問題を解いてから次に進もう」と思ったりしていたのですが、スイスイできるわけがなく、膨大な範囲を消化しきれない!と感じました。
また、合格者が一様に「とにかく1周早く終えろ、後から繋がるし、後から何度も修正する」という助言をしてくれていたことや、自分の性格上とにかくまずはこなしてみる、というのが性に合っていたので、なるべく2倍速で(分からないところは当然ゆっくり聞き直す)聞き、まずは1回聞いてふーんと思える状態を目指しました。
Excelまとめ+Anki周回
そうやって講義をとにかく聞きまくっていたわけですが、聞き終えるだけで1年近くかかったので(もう記録も記憶もあやふや)最初に学んだことはほとんど忘れているわけです。
自分で復習するにしても、一元化しないことには教材、講義、配布レジュメなどバラバラに書き込んでは非効率。
ということで色々試行錯誤して最後はExcelを各科目のまとめノートのようなものを作り一元化しました。「学習したことはExcelを見ればすべて書いてある」といえるような母艦としてExcelを用いたわけです。
このとき、ただ学んだことを羅列にするのではなく、
- 科目ごとにページを設ける
- 章立て、項目も明記する(面倒でもこれが後で効く)
- テキストのページ、重要度ランクも明記する
- 太字、色は自分なりのルールで統一する
- 1行目は問い、2行目以降に答えや説明などクイズ形式で書く
- 流れを覚えるべき論証は「論証」と明記する
このような工夫をしたことで、
そしてその内容をAnkiという最強アプリに流し込み、スマホ・タブレット・PCでいつでもどこでも復習できるように環境を整えました。
なお、Anki自体は司法試験に限った話ではなく、あらゆる勉強に使用可能な汎用的ツールです。その素晴らしさを語る記事もググれば山ほど出てきます。
note.com
このように、
- とにかく1回講義を聞ききる
- Excel(母艦)にまとめながら復習する
- Ankiにぶちこむ
- Ankiを繰り返す
- 復習しつつ、Excelを追記修正する+Ankiも修正する
という学習スタイルを確立させ、短答・論文試験対策はそれぞれ過去問をベースに進めていくことになりました。
法的三段論法は授業にも生かせる
司法試験、というか法学の世界では「三段論法」が重視されます。
これは、論理学の三段論法とはちょっと違うもので、法的三段論法と言われます。
- 問題提起(その事案で条文だけでは解決できず問題となる点の明示)
- 規範(その問題を解くために頼る判断基準の導出)
- あてはめ(↑の規範に基づいて、その事案・問題を具体的に検討)
によって、結論を出すのが法的三段論法です。
これは授業づくりで言うと「法的な見方・考え方」を特徴づけるもので、法教育の文脈ではこの法的三段論法に慣れ親しむことを目標の1つとすることができると思います。
上手くいかなかった勉強法
法的三段論法に基づいて当該事案を解決する手法を習得することが必要不可欠なのですが、なかなか最初はその問題をどう解決するか、道筋すらわかりません。
そこで、最初の方は「写経」することで、この法的三段論法を意識しながら、その設例が「何の問題なのか(どの条文と紐づけて解釈すべきなのか)」を意識することができる、というアドバイスがありました。
たとえるなら、英語等の勉強で音読すれば話せるようになっていく、ディクテーションのイメージで、法律問題も写経すれば書けるようになっていく、というイメージでしょうか。
で、当初はこれをやっていたのですが、あんまり効果を感じられませんでした。
- 法的三段論法の型は、問題演習をこなしていけば自然と親しむことができる
- 写経は、単純に時間がかかる
- 意味を考えながら写経しても、写経しているような「美しい答案」には疑問が生じないので、すらすら脳内を通過してしまい、自分の頭を使っていない結果、何も残らない
という感じでしょうか。
学習科学の知見が役立っていた
「記憶は、思考の残渣」という名言を残したこちらの名著を思い出しながら、やっぱり自分の頭で考えて何度も取り組まないとダメなんだな、と感じるに至りました。
この本に限らず、今まで読んできた学習科学の知見は結果的に自分の勉強を支えた気がします。
などなど、これもいい本でしたね。
おわりに
とまあ終わってみれば色々言えるのですが、
とにかく範囲が広すぎること、盤石な基礎ができないまま傾向と対策に頼っていては論文試験に太刀打ちできないことが分かってきたので、くじけず淡々と進めていきました。
実際は平日終業後の数時間、土日等の空いた時間でやるしかないので時間はかかりましたが、ファーストトラックシリーズで自分はこの勉強をやってみたいと思えていることが確認できていたので、そこまで苦にはなりませんでした。たぶん。
あとはこういう素敵な動画に恵まれて勉強の方向性を修正しながら勉強していました。美しく言えば、メタ認知を意識して学習を進めていたのかもしれません。
むしろ、本当の苦労は、講義を一通り聞き終えてから・・・だったのですが、その話や社会人のロースクール進学、予備試験と司法試験の比較、参考にした情報源、授業づくりの解像度の話あたりは次回以降、ということで!!






