高校3年生のAO入試など各種推薦入試が続々と始まっています。
今年も自己推薦書や課題レポートの添削、面接の練習など頼りにしてくれる生徒が多いのは教員冥利に尽きます。
その中でも、私が勉強不足を痛感したのが、「難民」というテーマ。時事的な要素が多く含まれるテーマなので、どんどん学びをアップデートしなければなりませんが、日本に住んでいると、どうしても「難民」の存在を意識する機会は多くありません。
しかし、世界では「難民」をめぐって、今大きく揺れています。
◯ハンガリー、EUの難民受け入れ割当制を拒絶
高邁な理想を掲げた欧州連合(EU)は、まさに今この「難民」をめぐって、大きく揺れている一つでしょう。イギリスの国民投票で「EU離脱」が勝利したのは記憶に新しいはずです。
統合が進んだEUの「分断」を象徴するニュースがこちら。
このニュースも末尾にあるように、
今回の国民投票は、政府主導で実施。政府側は紛争から逃れた難民を含めて「不法移民」と断じ、「移民が増えれば増えるほど、テロの危険が高まる」など国民の反難民・移民感情をあおってきた。だが多額の税金を投入した選挙キャンペーンには反発も広がり、野党が投票ボイコットを呼びかけたため、投票率が伸び悩んだとみられる。(太字は筆者)
完全に排外的な思想が席巻しているとまでは言えないものの、間違いなく「難民」の受け入れはEUを揺るがしている、と言える一つの例でしょう。
◯日本はどうなの?
まず、記事タイトルの問いの答えから。
日本が去年受け入れた難民は何人か、というと・・・27人です。
これは、「法務省が条約難民として認定した数」で、2015年の難民申請7,586件から割合を出しても、0.35%にとどまっています。
出典:墓田桂『難民問題』(2016)、中公新書、p165。
もちろん、これは統計上低い認定率と語られて、国際的にも批判の的になることもあります。が、
「難民認定の申請さえすれば、「特別活動」の在留資格が得られ、働くことも許される」上に、「不認定でも異議申し立てを何度でもおこなえる」。
ということを考えると、「難民性が高い」とは言えない外国人が就労目的で「難民申請」を行っている可能性も捨てきれません。捨てきれないと言うか、そういう人もいるよ!と言っているのが、先から引用しているこちらの本。
難民問題 - イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題 (中公新書)
- 作者: 墓田桂
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/09/16
- メディア: 新書
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難民問題について、最新の動向・歴史だけでなく、その議論の仕方まで詳細かつ丁寧に書かれていて、とっても勉強になりました。
著者の墓田さんは、外務省出身で今は大学の先生をされている方。政府の参与員を務めたご経験もあり、難民受け入れに直面する現場の声もふんだんに書かれています。おすすめ。(官僚ご出身ということでちょっと右寄り?と思っていましたが、議論の仕方は本当に丁寧で全く立場の左右を感じさせません。)
理想主義が崩壊しかけている?EUをみても、日本に住んでいる私たちも、「私たちはどこまで受け止められるのか」という問いを社会でもっと共有しなければならないと感じます。
こちらのブログでも丁寧に書評がまとめられていてとっても参考になりました。
hirokimochizuki.hatenablog.com
◯生徒にどう伝えるか?
実はすでに今年度、難民について特化した授業をWS形式で実施しました。
そこでは、どうしても「難民=かわいそう」が先行してしまう。「もっと受け入れるべき」という思考に画一化しやすい。中で、教員がどう反対の立場の情報を提供するかは超重要です。(模擬選挙など主権者教育に関しても同じことが言える。)実際、今年はそこに重きを置いて、生徒の思考を揺さぶることができました。(まだまだだけど)
究極的には「生徒の心に火をつける」ことが目的です。こちらから与える情報を受け止めさせるだけでは、一過性の授業になってしまう。教員の腕の見せ所ですね。明日からまた1週間、がんばろう、と思える日曜でした。