やっちゃえ先生探究記

生徒の力が引き出される「学習者中心の学び」をデザインしたい教員です。地道な形成的評価を大切に。

授業が劇的に変わる「質問づくり(QFT)」実践まとめ⑤〜質問の生かし方と効果的な振り返り〜

「質問づくり(QFT)」の連載 第5回

おそらく、最終回です!

もうくどいような気がしますが、「質問づくり」授業の「全体の流れ」を整理しておきます。今日はこの流れの青字の部分の実践報告とプチ解説です!

 

①教員から「質問の焦点」が提示され、生徒たちがつくり出す質問の出発点となる。

②単純な四つのルールが紹介される。

③生徒たちが質問をつくり出す。

④生徒たちが「閉じた質問」と「開いた質問」を書き換える。

⑤生徒たちが優先順位の高い質問を選択する。

⑥優先順位の高い質問を使って、教師と生徒が次にすることを計画する。

⑦ここまでしたことを生徒たちが振り返る(学んだことは何か? どのようにして学んだか? 学んだことをどのように応用できそうか? など)

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

※第1回〜第4回記事は↓こちら↓ 

第1回 授業が劇的に変わる「質問づくり(QFT)」実践まとめ①〜「質問の焦点」はこう設定する〜

第2回 授業が劇的に変わる「質問づくり(QFT)」実践まとめ②〜4つのルールでいざ質問づくり!〜

第3回 授業が劇的に変わる「質問づくり(QFT)」実践まとめ③〜2つの質問を操る!〜 

第4回 授業が劇的に変わる「質問づくり(QFT)」実践まとめ④〜優先順位をつける+その後は?〜 

◯質問を使って何をするか?

自分たちで、質問を調べてまとめ、発表する、という学習形態も行いましたが、そういった探求型学習のプロセスはぜひこちらの書籍をご覧ください。「質問づくり」との相性が抜群です。私はこれに本当にお世話になっています!!

学びの技 (YOUNG ADULT ACADEMIC SERIES)

学びの技 (YOUNG ADULT ACADEMIC SERIES)

  • 作者: 後藤芳文,伊藤史織,登本洋子
  • 出版社/メーカー: 玉川大学出版部
  • 発売日: 2014/11/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 ここではむしろ、いわゆる「普通」の授業にどう組み入れるか、に絞ります。

私が行なっている授業では、

質問リストなるものを生徒に配布します。

グループごとに精選した「重要だと思う3つの質問」を、グループ名・通し番号をつけて列挙したものです。その数は合計で約30です。

グループ数によりますが、40人クラスであれば私は4人×10グループにしますので、10グループ×3質問=合計30の質問が出ます。

 

この質問リストに対して、

・質問を参照しながら、単元の授業開始時に教員が解説を加える(答えるに近い)

 予備知識の補足や、この単元で伝えたいメッセージに言及できます。当たり前のようですが、「教員が自分たちの質問に、(わからないも含め)真摯に答える」という体験は意外と嬉しいようです。

 

・ペアワークなどで質問に対してディスカッションさせる

 これは特に「開いた質問」や「倫理的問い」に対して有効です。

 

・質問に対して仮説を立てさせ、仮説が授業の中でどう変化(しないも含め)していくかを考えさせる

 現時点での正誤ではなく、そのときの生徒個人の考えのアウトプットに焦点が置かれています。書かせられるなら、ノートや大福帳に書かせます。

つまり、「仮説」なので、違っても何も問題ないのです。そうやって生徒に「正誤よりも重要なことがある」という隠れたメッセージを発します。

 

◯学んだことをどう振り返るか?

単元の最後に振り返ります。私の授業では、「振り返りシート」なるものを、授業内で書かせます。といっても、A4用紙1枚程度の単なる白紙です。

ここに、

①「自分が設定する質問(テーマとなる問い)」【序論】

 ※「質問リスト」から選ぶ場合がほとんどですが、新しい問いを自ら設定してもOKとしています。

②「①で設定した質問に対する論証(事実・因果・例など)」【本論】

③「①に対する(暫定的な)答え」【結論】

の3つを書かせています。

さらに、別枠で④意見・感想 を書かせています。

もちろん、書き方の指導も小論文の指導を兼ねて行なっています。

「質問づくり」同様、回数を重ねることで上達していきます。

昨年度は「はじめは何でやらなきゃいけないのかと思ってたけど、これで鍛えられてSFCの小論も書けるようになった!」と喜ぶ生徒もいました。嬉しい。

 

ここでもう一つ重要なことは、

よく書けているものは、許可をとって全クラスに配布するなどフィードバック

することです。これにより、猛烈に刺激されます。

というか、こういうことをしないと、

学校・教室という「場」の意義がなくなります。

 

◯振り返りシートをどう評価するか?

これは現時点ではルーブリック を用いています。

 グローバル教育 気になるキーワード VOL.5 ルーブリック | G-Edu

生徒には「振り返りシート」を書く時点でルーブリック評価基準を示しています。

つまり、「この要素を満たせば、高評価」という情報を伝えてから書かせています。

ただこれも結局「画一的な学び・評価基準に生徒を押し込める」ことになっていないか、という問題意識はあるのですが…。

 

評価観点の設定については、内容によって異なりますが、

概ね書いている「論証の内容」「意見・感想の内容」「文章表現」の3観点を、

A~Cの3段階で設定し、点数化しています。

この振り返りシートは定期試験同様に評価対象とすることで緊張感も持って行えていますし、やはり書くことで学ぶ生徒は多いです。評価で「釣る」のは好ましくないのだけれど。

これになれると、もう講義だけの授業はなかなかできません。

場での学びとして、学習効果が薄いと実感してしまうからです。

 

◯おわりに

長くなってしまいましたが、「質問づくり」の全体像が見えてきたでしょうか?

詳細はぜひこちらの書籍をご覧ください。

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

 

 ちなみに、この本の訳者である吉田先生にも授業実践の最中、メールでアドバイスをたくさん頂戴しました。改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

今年度も実践を続けていますので、その報告もまた記事にしたいと思います!