先週、学習指導要領の改訂案が示されましたね。
4年後の新カリキュラム策定に向けて、校内でも動き始めています。
ざっと読んだ時にメモしていたことを、3点まとめ直したいと思います。
その上で、ちょっと面白そうな企画が始まっているのでその話も。
公民科を今メインで担当している身として、公民科の改訂案に目を通し、かつ情報筋から話を聞いて信ぴょう性の高いことを最初に提示します。
①高校で道徳を教える…?
という意識が明確に打ち出されましたね。
その実践の中心は、どうやら公民科となっていきそうです。
小中学校で「道徳」が教科となることを受けて、高校でも道徳担当の教員を配置し、新たに始まる「公共」の授業などで道徳教育が進められることになります。(中略)具体的には、高校ごとに道徳教育を推進するための教師を配置して、新設される公民の「公共」や「倫理」の授業で、人間としての生き方や国と郷土を愛することなどを指導するよう求めています。(太字下線は引用者)
このことについては、小中学校における道徳の教科化が示された際、東京弁護士会などが声明を出し、反対を表明しています。
東京弁護士会の意見書を読んでみると、その主張と理由が概観できます。
子どもに対し、国家が公定する特定の価値の受け入れを強制することとなる点で、憲法及び子どもの権利条約が保障する個人の尊厳、幸福追求権、思想良心の自由、信教の自由、学習権、成長発達権及び意見表明権を侵害するおそれがあり、見直されるべきである。
ちなみに、これに対しては文科省も反論しています。
Q 道徳が「特別の教科」になり,入試で「愛国心」が評価されるというのは本当ですか?道徳が評価されると,本音が言えなくなり,息苦しい世の中にならないか心配です。
A 道徳科の評価で,特定の考え方を押しつけたり,入試で使用したりはしません。
兎にも角にも、そういう方向性で高校にも「道徳」の流れが押し寄せていることは事実です。どうなんでしょう。一概に教室での学びが規定されるか、といえばされないと思うのだけれど、教科書の内容は変わるんだろうなあ。
思考を求めるのが道徳や宗教の役目だと思うのだけれど、思考を停止させる道徳にならないか、だけが心配です。
とはいえ、生徒たちは頼もしいので、そんな心配は杞憂に終わらせてくれそうですが。
文科省の会議に出席しているとある大学の学長から直接伺った話だが、公民の新設科目「公共」で意識しているのは間違いなく「道徳の教科化」だと言っていた。それが裏付けられた記述。https://t.co/4rkGkAVxNZ
— やっちゃえ先生@論文執筆中 (@Yacchaee) 2018年2月14日
②個人的に、「いいね」と思う記述もあります。
教員のブログで指導要領についてコメントするとなると、噛みつき吠えまくっている、というイメージがある方もいるかと思うので(?)、「この方向性は賛成!」と思うものも提示しておきます。
【学習指導要領改訂案より】新設科目「公共」の目標(2)のここ、「事実を基に多面的・多角的に考察し公正に判断する力や,合意形成や社会参画を視野に入れながら構想したことを議論する力を養う。」は好きかも。今やっている”社会課題リサーチとディベート”はこれに通ずる(という自己暗示解釈)
— やっちゃえ先生@論文執筆中 (@Yacchaee) 2018年2月14日
ただし、教員が何をすべきか、という実践レベルの知を共有する、そんな仕組みづくりとセットじゃないと、と思ってしまう。
その点でいうと、ユネスコスクールのコミュニティは実際に見たことがあるけれど、一つの成功事例ではないでしょうか。言語が英語メインなのがしんどいこともあるでしょうけれど…
ユネスコスクールは、そのグローバルなネットワークを活用し、世界中の学校と交流し、生徒間・教師間で情報や体験を分かち合い 、地球規模の諸問題に若者が対処できるような新しい教育内容や手法の開発、発展を目指しています。
他にもこんな記述があります。探究学習が推進されていくのはもう必至なんだけれど、これも教員養成も変わらずにはいられないでしょう。となると、大学でこういったことを指導できる大学教員がいるはずなんだけれど、果たして…。
【学習指導要領改訂案より⑧】新設科目「公共」の最後にしれっと、
— やっちゃえ先生@論文執筆中 (@Yacchaee) 2018年2月14日
「(イ) 課題の探究に当たっては,法,政治及び経済などの個々の制度にとどまらず,各領域を横断して総合的に探究できるよう指導すること」
とあるけど、こういう指導ができる教員養成を大学でしてくれているんですよね?(白目)
大学で教職課程を履修する方には、ぜひ行事の引率の仕方とかツマラナイことを学ぶのではなく、大学のうちに「探究」のプロセスを自ら実践してほしいと願ってやまない。
③質問づくり(QFT)の理論と実践はまだ先の話か…
これは期待しすぎていたかもしれませんが、質問づくり(QFT)を授業で実践しているだけに、質問をする主体が「生徒」であることを明記した指導要領になって欲しい。
【学習指導要領改訂案より⑥】
— やっちゃえ先生@論文執筆中 (@Yacchaee) 2018年2月14日
「(教員は)生徒の学習意欲を高める具体的な問いを立て」となっているけど、やっぱり問いを立てるのは教員の役割になっている…
質問づくり(QFT)https://t.co/QeQzBMrIOY
やりましょう。
質問づくりについては、当ブログでも実践記事を書いていますが、まずは何よりこの名著を読んでいただきたいです!
たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」
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おわりに〜面白そうな企画が始まりました!〜
②の教員の実践知の共有に関連して、こんなツイートをしたところ、
で、そういう探究学習を実践してきた先生が色々なところから集まって、慶応の井庭先生が監修したパターンランゲージのカードとか使ってパネルディスカッションみたいなことしてる研修があったら最高。
— やっちゃえ先生@論文執筆中 (@Yacchaee) 2018年2月14日
ちなこれ、教員なら無料でベネッセからもらえます。https://t.co/m5W3N73yZo pic.twitter.com/C2H8SwhPP4
ロカルノさんが乗ってくださり、さらにこんな素晴らしいアイディアを出していただきました!!!
ALPのA1~A15の内容について(以下の画像参照……一応、これはネットに出回っているので転載しても大丈夫…か?)、このブログを読んで気になった方に「経験したパターン」と「これから取り入れたいパターン」を選んでもらい、それぞれについて思うことを書いてもらう……ということでどうでしょう?もしくは、「これから取り入れたいパターン」については、誰か書いてほしい人を指名してレスが来るのを待つ…とかどうでしょう?(笑)。
言い出しっぺなので、idコールかTwitterで報告してくれれば、当ブログでリンク集などを作って整理はします。
とりあえず、自分もいくつか書いてみようと思いますが、もし、上のテーマの中で自分へのリクエストがあれば承ります。
この企画に一緒に取り組んでくださる教員ブロガーや教育関係者の皆さん、ぜひお声がけください!