やっちゃえ先生探究記

生徒の力が引き出される「学習者中心の学び」をデザインしたい教員です。地道な形成的評価を大切に。

この夏に読みたい「教育」を考えるオススメ本10選!〜保存版〜

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ようやく、どの学校にも夏休みが訪れたと思います。教員にとっては一年で最も鋭気を養い、中長期的なことを考えられる期間。読書をしない手はありません。

学習指導要領改訂のタイミングも重なり、学校にいる人間としては教育界が少しずつ動いていこうとする蠢きを感じています。

まとまった時間が取りやすい夏だからこそ読みたい、なるべく最近出た本を中心に読むべき教育関連本を勝手にまとめてみました!!

※教員が選んでいるのでどうしても学校現場中心の選定になっていますがご容赦ください。

イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室

待望の邦訳です。予約していたのでそろそろ届くはず…この夏の一大楽しみ本!

これはまとめというよりただ自分が楽しみにしているだけです、はい。笑

イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室

イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室

  • 作者: ナンシー・アトウェル,小坂敦子,澤田英輔,吉田新一郎
  • 出版社/メーカー: 三省堂
  • 発売日: 2018/07/21
  • メディア: 単行本
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*【書評】『イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室』①〜「譲り渡す」教育と社会科の悩ましさ?〜

最高の授業: スパイダー討論が教室を変える

この春に出た本ですが、早速授業に取り入れて継続して実践しています。「生徒のディスカッションはどうすれば効果的になるのか?」に応える確立された方法論です。アクティブラーニングが叫ばれてやってはいるけれど…という日本の教育界のニーズにドンピシャだと思っています。

最高の授業: スパイダー討論が教室を変える

最高の授業: スパイダー討論が教室を変える

 

*【書評】『最高の授業 スパイダー討論が教室を変える』がスゴイ。安定の吉田新一郎訳本!

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

私が個人的に大きく学びのあり方を変えたのはこの本に出会ってからでした。

ここで紹介されている手法「質問づくり(QFT)」を授業に導入して3年目に突入しました。教育とは何か、という教育哲学を土台に、どのような学びが効果的か、という実践知が混ざり合った内容です。民主主義の土台を形成する教育が紹介されているといっても過言ではない。

個人的な実践を振り返ると、時間的な制約がある中で、ちょっとアレンジを加えすぎた感があるので、もう一度原点に戻ろうと思っている今日この頃。

実践まとめ記事の連載を書いていた導入初年度が一番忠実だったかな…

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」

 

*授業が劇的に変わる「質問づくり(QFT)」実践まとめ①〜「質問の焦点」はこう設定する〜

「学びの責任」は誰にあるのか: 「責任の移行モデル」で授業が変わる

これは②・③に比べると、もう少し理論より。といっても堅苦しい話はなくて、「教師主導の学びから生徒主導の学びに移行するために必要なこと」を丁寧に順を追ってまとめている。

だからこそいろいろな学びに応用できる汎用性があります。②・③も素晴らしい本だけど、この本から入るのが実は一番いいんじゃないかと思っていたり。

「学びの責任」は誰にあるのか: 「責任の移行モデル」で授業が変わる

「学びの責任」は誰にあるのか: 「責任の移行モデル」で授業が変わる

  • 作者: ダグラスフィッシャー,ナンシーフレイ,Douglas B. Fisher,Nancy E. Frey,吉田新一郎
  • 出版社/メーカー: 新評論
  • 発売日: 2017/11/17
  • メディア: 単行本
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*2017年に読んだタイトルが刺激的だけど中身の濃いオススメ本4選!~政治・経済・教育~ 

PBL 学びの可能性をひらく授業づくり: 日常生活の問題から確かな学力を育成する

ずっと積ん読本になっていたこちらの本も今読み進めています。教科としての社会科の根本的な教育目標のひとつに「問題と出会う」ということを意識しているので、Problem-based Learning の思想はスッと入ってきます。

高校の地歴公民科教員としては扱うべきコンテンツがどうしても生徒から遠いところにありがちなので、それをいかに“問題”として教材化できるかが腕の見せ所。PBLと言わなくても、各教科の優れた先生は教科書のコンテンツをそういった形で生徒の前に提示してきていらっしゃると思います。

PBL 学びの可能性をひらく授業づくり: 日常生活の問題から確かな学力を育成する

PBL 学びの可能性をひらく授業づくり: 日常生活の問題から確かな学力を育成する

  • 作者: リンダ・トープ,サラ・セージ,Linda Torp,Sara Sage,伊藤通子,定村誠,吉田新一郎
  • 出版社/メーカー: 北大路書房
  • 発売日: 2017/09/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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成績をハックする: 評価を学びにいかす10の方法

成績なんて百害あって一利なし !?」と挑発的な見出しが踊りますが、内容は過激に走ることなく、現場の苦しみ、もどかしさを十分に吸収しながら、その中でできることをひとつずつやっていこう、というスタンスの本。

どのような評価がよい評価といえるか?」という問いに向きあうなら必読です。

成績をハックする: 評価を学びにいかす10の方法

成績をハックする: 評価を学びにいかす10の方法

  • 作者: スターサックシュタイン,Starr Sackstein,高瀬裕人,吉田新一郎
  • 出版社/メーカー: 新評論
  • 発売日: 2018/06/28
  • メディア: 単行本
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科学が教える、子育て成功への道

このタイトルが胡散臭いのは百も承知なのです。でも、内容はめちゃくちゃいい!本当にいいのに、どうしても類似の子育て本に紛れてしまって書店でも多く扱っていないところが多い。のだけど類似本よりよっぽど内容がしっかりしています。

今も授業をデザインするときにここで紹介されている6Csの理論は常に頭にあります。これ、学びの導入の工夫を常日頃されている小学校の先生とか読むとかなり経験が確信に変わると勝手に思ったりしています。

  • コラボレーション(Collaboration)
  • コミュニケーション(Communication)
  • コンテンツ(Contents)
  • クリティカルシンキング(Critical Thinking)
  • クリエイティブイノベーション(Creative innovation)
  • コンフィデンス(Confidence)
科学が教える、子育て成功への道

科学が教える、子育て成功への道

  • 作者: キャシー・ハーシュ=パセック,ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ,今井むつみ,市川力
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2017/08/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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*【書評】科学が教える子育て成功への道~単なるhow to本ではない学習科学の知見!~

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

教員を主たる読者層の対象にしていない⑦が出てきたので、こちらの本も。少し前にほとんどの書店で平積みにされていたのを覚えている方も多いのではないでしょうか。

なかなか衝撃的な内容です。もちろん、これを鵜呑みにするわけではないのだけれど、いかに子どもたちが「読めていないか」という現実を直視させられます。

1学期の期末試験でまさに「資料を読めていれば解ける」問題をあえて入れてみたのだけれど、高3でも正答率が低かったのはさすがに笑えなかったです…

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

 

 *【書評】必読の書!新井紀子『AI VS. 教科書が読めない子どもたち』~どんな力を育てるか?の指針~ 

教育の効果: メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化

アクティブラーニングという言葉は耳にタコができるほど聞いたし、でも一方で「私はアクティブラーニングという言葉は嫌いでね」論も聞き飽きたそこのあなた!

教育の効果をエビデンスで語れるようになりましょう。著者と訳者に本当に頭が下がるのだけれど、世界で出された教育論文を分析し、「どのような教育が効果的と言えるか?」を一目でわかるイラストに落とし込んだ白眉の書です。

ただ、この本を読む際はまえがきの訳者の言葉を本当によく読んでください。「ああ、だから少人数教育はいいんだ!」というような安易な読み方をしないように、丁寧な言葉で読み方をガイドしてくれています。

私はこの本で自分の実践を位置付けたり生徒・保護者への説明に役立てています。「なぜこの教育手法をとるのか?」の説明って、意外とできないので…。

教育の効果: メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化

教育の効果: メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化

 

*【書評】『教育の効果‐メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化』ジョン・ハッティ~「教育=場の価値の最大化」?~ 

学習する学校――子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する

夏だからこそ、約900ページの「教育改革のバイブル」を紹介しないわけにはいきません。 

この本の特徴は、タイトル通り、学校を「学習する生きた社会システム」ととらえ、さまざまな関係性の中で動く共同体〈コミュニティ〉ととらえていることだ。

だから、学校が変わっていくときには様々な「関わり」が必要であり、「いかに学校で有機的な関わりを作り出すか?」という学校づくりの視点が述べられている。

学校が「ある」ものとして捉えられがちだけど、もう一度21世紀の学校を「つくる」ためには、欠かせない本だと思います。

学習する学校――子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する

学習する学校――子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する

  • 作者: ピーター M センゲ,ネルダキャンブロン=マッケイブ,ティモシールカス,ブライアンスミス,ジャニスダットン,アートクライナー,リヒテルズ直子
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2014/01/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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【書評】『学習する学校』①全おとな必読の第1章~産業化時代の教育システムとは?~ 

おわりに

どれをとっても、徹底した「教育観の見直し」を実感できます。学校の理不尽さを嘆く声も多いですが、変わっていくところはどんどん先をいっています。

夏の読書にぜひどうぞ。その際は書評記事を書いていただけると大変喜びます、読みたいです。知見を交換することは本当に貴重な学びになります。

※①〜⑥は吉田新先生の訳本。ステマじゃないけど、「学びの主導権」はだれのものか?に徹底してこだわった訳本だから、やっぱりハズレがない。限られた時間、いい本を読もう。