構想→実装→運用まできたブレンディッド・ラーニング(BL)に基づく授業。実際に運用して気づいたこと、作る側のコツをまとめておきます。
BLづくりのコツとは?
こんなことを考えながら授業を作っています。
- どんな課題をクリアして(力をつけて)欲しいか?
- そのためにどんな学習活動があればよいか?
- 2で考えた学習活動を生徒が選べるようにするためにはどうすればよいか?
1,2あたりは、ぜひこちらの素晴らしい訳本をご覧ください。エッセンスは実例豊富な本を読んで掴むのがおそらく一番早く確実だと思います。
ブレンディッド・ラーニングの衝撃 「個別カリキュラム×生徒主導×達成度基準」を実現したアメリカの教育革命
- 作者:マイケル・B・ホーン,ヘザー・ステイカー
- 発売日: 2020/05/22
- メディア: Kindle版
教育は「この場合にはこれが正しいやり方だ」という法則性が成立しない分野である以上、勤務校の実情に合わせて私は3の問いを加えています。
ここでは、2と3について自分の思考を補足しておきます。
2.「複数」の学習活動を考える
ある意味、1,2は今更言わずとも、教員がずっとしてきたことでもあります。
とはいえ、実際は受験のために教科書網羅的な授業になったり、毎年やっているからやっている、みたいな実情もあるでしょう。
全ての授業を資質・能力ベースで構想・運用できていたら新学習指導要領はいらないですよね(笑)
そんな状況でも、BL的な発想をすることで、恒例の単元の学習が、少し様変わりします。
それが2の「どんな学習活動があればよいか?」を考えることです。
今までは2で色々な学習活動を考えることはできても、実際に教室で展開する学習活動は1つであることが多かったですよね。
BLは複数の学習活動をブレンドして行うため、考えうる学習活動を1つに絞る必要がないわけです。むしろ、複数の学び方・学ぶ対象があることを奨励します。
これは教員側の授業デザイン力を鍛える問いにもなっていると思います。さらに具体的な問いとしては、
- 単元で身につけて欲しい力を実現するためにどんな学びのバリエーションがあるだろう?
- 基礎的な事柄を必要とする生徒には何が必要?
- 発展的な学習に挑戦したい生徒には何が必要?
などの問いで私は自問自答しています。
3.「選べる」ようにするなら、どうする?
2で学習活動を考えたら、3の「それらの学習活動を生徒が選べるようにするためにはどうすればよいか?」という問いで自問自答します。
ここで、各学校の条件、つまり教科、時間、生徒人数、場所、使える設備、などを頭に入れながら、具体的な展開を考えています。
更に言えば、既存の学校内でやるならまずローテーションラボか反転授業かを選ぶことになると思います(詳しくは前回記事で)。
2で考えた活動を並立させるためには、どこでどういう運用をするか、実際にこんな感じで書いて考えます。
※ちなみに「選択する学び」の意義についてはぜひこちらを。いい本です。
どうして3の問いが浮かんだか?
一斉授業は、生徒の意欲や習熟度に合わせた柔軟な学習をデザインするのが難しいのが悩みでした。正確に言えば、デザインできたんだけど、必要性に迫られていなかったですね。
でも、オンライン授業を続けてきて場に戻ってきた私の場合は
→コロナによって大人数で既存教室で授業をすることが難しくなり、広いスペースで、授業運営をしなければならない
→広いスペースでこれまで通りの授業スタイルは非効率(板書見えない、声が枯れる、対話的活動にも限界)ということが露呈
→これではオンライン期間の方が効果的な学習ができていたんじゃないか?と焦り、場の授業の必要性、必然性を考える
→全員が同じスペースで同じ時間を過ごし、生徒たちの関係性を活かしつつ、それぞれが自分の学習状況に合わせた学びを展開するなら、今がチャンスなのでは?
という思考の流れで、3の問いが出てきて、その問いに対する暫定解として、BLに行き着いたわけです。
やることは増えますが
ただでさえ短い授業時間を分単位でモジュール化したり、複数の学習活動の準備をしたり、とやることは必然的に増えています。
具体的には、
- 授業場所や機材の予約
- 当日の可能な限りの授業前準備(立て看のような掲示も)
- Classroom等での生徒への周知
- 動画教材・小テスト・プリント・発展学習のための資料用意
- 詳細指示や意図を載せた「学習の手引き」
- 事後の消毒
など。一人で回すのは大変ですが、BLをやっていると、今まで忙しい時に発生していた「教室行けばなんとか授業になる」という思考がいかに「学習者一人一人のにとっての場の価値の最大化」にとって悪影響か、思い知らされます。
必修授業という状況だと、やる気のない学習者がいて当然です。
それでもなお、生徒が学ぶ意義を感じたり、資質・能力の育成につなげたりするには、BLはこの上ない選択肢だと思います。
おわりに
次のプランは、反転授業を一部導入してスパイダー討論を実践しようと構想中です。とは言え、近距離の発話を伴う授業は少しためらわれるので、対策をしながら。
授業の「方法」論って嫌われがちだけれど、BLをデザインする上で授業法の手札を増やしておくことは現場の可能性を広げるなと実感します。
ブレンディッド・ラーニングは大掛かりな変更をせずとも、小さなところから始められるのもいいところです。また報告します!