やっちゃえ先生探究記

よりよい教育のために。民間企業→私立中高一貫校→私立高校。社会科・地歴公民科。

【資料あり】探究学習をデザインするために最も必要なことは?@成城大シンポジウム

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昨日、成城大学FD・SDシンポジウムに参加しました。

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発表者に中高の先生方が多かったので、参加者の6,7割が中等教育関係者でした。

学習指導要領でも明確に示された「探究」について、私自身も授業で伴走しながら、さらに効果的な学習にするための「デザイン」を模索していたので、いい機会でした。

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協働化・プロジェクト化された学びをどう評価する!?ートムリンソンの教えに従ってみたー

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最後は、評価が1〜5とか、A~Dの成績に「堕する」んでしょ?

今日の記事の問いを先に提示しておきます。

総括的評価を下す宿命

今年度の学びの協働化+プロジェクト化がついに終了。

最後の総括的評価を行う段階に来ています。

これまでも色々学びの協働化+プロジェクト化の試みについては発信してきて課題も浮かび上がっています。

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迷いと限界 ー1人で40人を支援することー

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 2019年に入り、高校3年生の授業がなくなり、部活もピークではなくなりました。

論文を書いたり、担任させてもらっているクラスのことをもっと丁寧に見たり、授業でも一人ひとりの大福帳をしっかり返信したりできると思っていたのです。

ところが、現実はそうはいかずあっという間に2ヶ月が過ぎ、3月。

精神的な負担

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5教科の教員が芸術科の授業を見学すべき理由

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先日担任しているクラスの芸術の授業を見学し「いやあ、学びが多い!」と実感しました!

限られた授業時間

前提として芸術科は授業時間が少ない。

高校の普通科における芸術科目は、週1~2回が普通でしょう。公民科と変わらない。

その中で、美術であれ音楽であれ書道であれ、作品や演奏などのアウトプットを行うことが前提になります。

定期試験という【成功】と【失敗】を序列化で意識づける方法で成果を測るのではなく、一人一人にどう成果を発揮させるか、が重要。

限られた時間で全員にアウトプットを求めるための指導・手順は練られています(それは同時に画一化、固定化になりうるし、生徒の時間外の持ち帰り作業が発生することもあるでしょうが)。

自由に・黙々と・自然に

美術の制作が一番イメージしやすいですが、生徒たちが自由な席・場所に陣取り、そこで黙々と制作に打ち込んでいるのです。

でも、必要なときには生徒同士で

「ねえ、この色だと暗すぎる?」 
  ー「いや、むしろもっと暗くても全体が締まる、(この作品の)何が出したいの?」  
「もう少し落ち着いたトーンを出したいんだよね」 
  ー「ならこの色じゃまだ弱いくらいかも、って私は思うかなあ〜どうだろう」

なんてやりとりが発生している。

もちろん、これは割とマジメなやりとりで、もっと砕けたじゃれ合いのようなやりとりもたくさん見られる。

別に教員から指示されたものではないけれど、生徒同士が同じ「作り手」としてコミュニケーションをとる姿はとても微笑ましく、その存在がもう互いにとって大事な学びになっていたと思えます。

勝手なやりとり

いい意味で、「勝手な」やりとりが続いていました。これは5教科などのアカデミック科目だとどこまで許容できるか?の線引きが難しい。

「必要な時に必要なことをやってほしい」

というこちらの枠に、生徒をはめたくないのにはめようとしてしまうのは全部自分いや時間割のせいなので反省。

明らかに上の空でどうでもいいことを話してしまう生徒に目くじらを立ててしまいグッと堪えることを経験した教員は数知れずだと思うのだけど、美術の授業見学で「堪える」という発想にすらならなかったのはなぜだろう。

自然発生カンファレンス

生徒同士の「勝手な」やりとりがある中で、先生も様子を見ながら生徒に働きかけます。

カンファレンスについては、『イン・ザ・ミドル』のこちらの記事にもまとめています。

ほとんどの場合、生徒は私の助言を受け入れます。通常、私の助言は信頼でき、そのおかげで作品がよくなるとわかっているからです。しかし、私はクラス全員に「もし、私が余計なことを言ったら、そうだと言ってね」と伝えています。書き手として自分で書く題材や目的を選んで創作する生徒たちには、自分が何を伝えようとしているのかを説明し、主張するだけの力もついているのですから。

www.yacchaesensei.com

カンファレンス、という位置付けすらしなくても自然にやりとりが生じている様子。

教員はそれを記録はしていないようでしたが、作品は乾かしたりするために美術室に置かれているので、それを見ながら次の声かけを考えたり、作業段階をみて進捗を把握しているそうです。

5教科の教員としては、生徒の「したこと」が目に見える形でそこにあるのがうらやましい!と思うのだけど、そういう授業を作ればいいんです、はい。

〈驚き〉と〈導き〉

しかも、生徒は制作のプロセスを楽しんで、熱中してやっているのですから、当然のびのびとしています。あっという間の1時間。

教員目線でも、

  • 生徒の発想や工夫に対する〈驚き〉を感じつつ
  • さらに引き出すためにどうしたらよいか、という〈導き〉のために自分が必要とされる感覚をもてる

そんな思いを持ちながら授業が進む環境。とても素敵でした。

つくることで学ぶ

少し話をカリキュラム視点に変えてみると、

本来つくることと学ぶことは切り離されるどころか一体であったはずなのに、いつからそれが離れて行ってしまったのだろう。

美大や芸大など、作ることで学ぶ人があたかも別次元にいるかのような気がするけれど、誰だって幼少期に何かを自分の手で作ろうとしたことはあるはず。

そのときの没入感、自分だけの作品、そういったこだわりや情熱があったはず。

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⬆️こちらは書評記事も書きました。

www.yacchaesensei.com

表現そのものを、したい

しかも今はSNSなど自分を表現できるツールが山ほどある。

でも、学校現場で表現を求めていない、というのはなぜなのだろう。

正確にいうと「正しい」表現ばかり求めてきてしまっているのではないだろうか。

没入を生み出せる学びをどれだけ実現できているのだろうか。

High-Tech-High

そしてHigh-Tech-Highも思い出さずにはいられません。

www.futureedu.tokyo

先日この学校の話を生徒としていたら、こんな反応が。

高校は美術は全員必修ではなくて芸術科目の選択です。

図工のある小学校や、美術・音楽・技術家庭・書道などがある中学校がうらやましく感じます。 

おわりに

普段の生徒たちの様子とは違う姿を、芸術の授業で見てまた新たな気持ちにさせられました。ということでなんとなくまとめ。

  1. 生徒は限られた時間でアウトプットする
  2. 生徒は自由に・黙々と表現する
  3. 生徒は自然に学びあう
  4. 教員は自然に一人ひとりとやりとりする
  5. 生徒に驚く楽しさを味わえる
  6. 生徒を導くやりがいを感じる
  7. 「作ることで学ぶ」を取り戻す

そして、あすこまさんのこちらの記事は本当に面白いです。引き出す力もすごい…

askoma.info

【書評】『世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ』を読もう!ー教育界への示唆に読む挑戦の書!ー

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高等教育の再創造」を本気で志す壮大な試みです。ビジネス書としてもオススメ。

宣伝色の強い装丁にやられて積読本の中から読むのを敬遠していた1冊、早く読まなかったことを後悔しました。

世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ

取っ散らかると思いますが書きたいことを書いてみます。

学生の学び を軸に

ミネルバ大学の革新性は上の装丁にあるような内容(校舎なし、講義なし、テストなし、全寮制、授業はオンライン)で、キャッチーで目を引く。

が、やっていることは全て「学生の学びを軸とした教育に立ち返るための手段

課題と打ち手がバッチリ噛み合い、一貫している印象です。

本書でも何度も示されるミネルバのミッション

世界のすべての才能ある学生に、これからの変化の激しい世界や未知の分野で活躍できる実践的な知恵を、適切な学費で提供すること

の実現に向けて、できる打ち手を尽くしているから、読んでいて「あ〜自校でもこんな改革したい〜〜〜」という意欲を刺激される。

このミッションが口だけじゃない、金儲けじゃない!という本気度がスゴイんですよ。こちらもムズムズしてきます。

でもそのムズムズを改革に移していくときには問題に直面します。

改革のインセンティブ

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大学でなくても中等教育でも全く同じことが言える。

そして、学校は改革のインセンティブが見出しにくい組織です。

教育が重要だ!と言いながら、心の底では「自分の子だけが良ければいい」と思っている親は多いでしょう。

そして、子供が「いい」人生をあゆみ始めれば、別にそれでいい。教育界全体は遅れているけれど、自分の子は「一抜け」したから、と。

あるいは、現状維持ですら大変なのだから新たなことはしなくていい、という教員もいる。

そういう教員は「自分の勤務校は黙っていても生徒が入ってくるから」という状況に甘んじて、「本当に良いことができる」のに面倒なことはしない。

つまり、社会としても、学校組織としても教育は改革のメカニズムがない

学校は年度を止めることができないので、とにかく現状維持の方向にいきがちなのです。

その現状維持を打ち破るために、ミネルバの実践は示唆に溢れます。

究極のアクティブラーニング?

当ブログでも書評を書く本はだいたい学習科学に基づいた良書を選んでいるつもりです。ミネルバ大学も学習科学の知見に裏付けられた教育を行っています。 

www.yacchaesensei.com

www.yacchaesensei.com

www.yacchaesensei.com

ミネルバの特徴は、「概念を使いこなす」ことを目指す点。

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http://un-control.com/2018/12/17/minerva-schools/より

1年次に115項目からなる思考習慣や基礎コンセプトを使い、高度な汎用スキルを身につけようとするあり方は、「生きる力」の再定義にもがく日本の教育界が参考にできる点です。

この発想を聞くと、概念学習に力点を置く国際バカロレア(IB)と親和性が高いのも頷ける。

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https://www.ibo.org/globalassets/digital-tookit/brochures/what-is-an-ib-education-jp.pdfより

IBの授業を何度かみたことがあるが、例えば、フランス革命という事象から、「暴力」とは、「権力」とは、「権利」とは、そういう概念を主体的・対話的に掴んでいく授業は印象的だった。

ミネルバのオンライン授業で実現しようとしているのも、それに近いのではないだろうか、と邪推してしまう。

ただ、読むとわかるけれど、ミネルバはインターンなども積極的に行っているので(学業に支障が出るという言説を一刀両断しているのは面白かった)、

勝手なイメージだと、

  • IBの概念学習
  • 慶應SFCの社会との協同学習
  • 講義なし・試験なし=序列化された学びからの脱却
  • 全寮制でオフラインの学び
  • Allオンライン授業で形成的な学び

そんな要素をうまくブレンドしている。

革新的なのは、そのブレンディッド具合がミッション以外のものに左右されず、ミッションに直線的に結びつくからだ。

教員が話せるのは10分

90分授業で教員が話せるのは「10分」。

これにより、教員は生徒ひとりひとりのコンセプト熟達度の把握と、即時フィードバックに集中できる。これは学びの個別化の発想とも繋がる。

ミネルバの手法を真似しようと思ったら、当然反転授業の発想が欠かせない。

過去にこんな記事を書いているけれど、

www.yacchaesensei.com

今はもう少し反転授業「導入」したい!と考え方が変わってきました。

年度末なので生徒と色々1年の学びを振り返っていて、そう思わされるのです。

全寮制→オフラインの学び

実は私はここが重要だと思っているのだけれど、全寮制であるが故に、オフラインでの学びが可能になる

例えるなら、オンラインでの学びが場内戦、オフライン(寮)での学びが場外戦でしょうか。

課題に取り組みながら、寮での対話的な学びが自然発生する、そういう学びが発生するしかけがある。で、その時間はとても楽しいのです。

私も大学時代は寮生活をしていて、本当に楽しかった。

学びに貪欲になれたのは寮生活だったからだし、そこでの多様な価値観との出会いは今やり直せと言われてももう戻れない煌めきの時でした。 

組織の意思決定は?

いいものはやろう!」というタイプの人間なので、こういう改革の書を読むとワクワクするのだけれど、一方で、組織としての意思決定はどう行っているのか気になった。

大学って多くは教授会のような組織で意思決定をしていくのだけれど、組織の意思決定はどうなっているのだろう。ミネルバも、あのHigh Tech Highも、教員は1年契約だった。

でもまあそんなの関係ないのか。

組織のミッションがきちんと血肉化された教育者であれば、何年契約だろうと必要な人材であることに変わりはない。

おわりに

この記事自体もかなりミネルバの方向性に賛同しているけれど、それは「教育にとって本当に大切なことは何か?」という問いからミネルバが逃げていない、と思えるから。

本当に大切なことにリソースを割くこと。

色々なしがらみでそれが難しい複雑な社会に、テクノロジーを駆使して、シンプルに打ち手を用意し、実行する。その姿勢に刺激を受けました。

世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ

世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ

 

最後に著者がこう述べています。

ミネルバ大学で用いている思考・コミュニケーションのコンセプトを中等教育時代から意識して個人プロジェクトや学習への取り組みに反映できる人材を育成すること

これ、中等教育の教員研修とかないのかな…学びたいです。

【追記】著者の山本先生のツイートです。

【書評】オープニングマインド 子どもの心を開く授業ー単なる言葉選びではない教員必読の書!ー

教員必読、ってあまり使いたくないのだけど、使ってしまうくらいには読んでほしい本。おなじみの吉田新一郎先生訳本です。

他の訳本同様、一見「ハウツー本」に見えたのだけど、読了後は背景にある「骨太な信念・モデル」を実感できます。

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