無限に仕事はありますが、強制終了し読み進めています。
積読が減るどころか増えているんだけどとにかく筋トレのように読み続けることしかないと思うので手を出す。
— T.Yacchae (@Yacchaee) 2018年10月17日
左はポップな装丁からの肉厚な内容。わかった気でいたけど不十分だったことが、言語化されてストンと落ちる。
右は溝上節全開。心地よいくらい。東信堂さん良心的な価格でありがとう! pic.twitter.com/sUl64ivG2N
梶田叡一先生のことば
溝上先生が「できるだけ率直に、自由に論じたい」本として出している東信堂さんの講話シリーズ第2弾を先にざーっと読んでいます。
学習とパーソナリティ 「あの子はおとなしいけど成績はいいんですよね! 」をどう見るか (学びと成長の講話シリーズ)
- 作者: 溝上慎一
- 出版社/メーカー: 東信堂
- 発売日: 2018/10/16
- メディア: 単行本
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序盤に兵庫教育大学名誉教授の梶田叡一先生の話が出てきています。「実感・納得・本音」と言うフレーズについては恥ずかしながら初めて聞きました。不勉強を恥じる。
もう少し調べてみようと思いググってみるとベネッセの講演会のバックナンバーが出てきました。当時はノートルダム女子大の学長だったんですね。
こういう過去の講演会のバックナンバーをウェブ上に残しておいてくれるのはありがたい限りです。
全文読めるのが本当にありがたいのですが、引用します。
評価と実態把握のちがい
評価は、必要不可欠なものをチェックします。なんでもかんでもチェックしてはいけない。「評価」と「子どもの実態把握」が混同されている部分があります。一人ひとりについての細かい資料を生真面目に集めて、単なる徒労に終わる実践があります。
→評価と子供の実態把握の混同…言われてみればそうだけれど、きちっと分けて考えていなかったかもしれない。なんとなくの怖さ。教育実習生とか後輩の指導をしなきゃいけないときに、こういう言葉がすっと出てくるかどうか。
ある学校では、「評価規準表をつくったら厚さが6センチくらいになりました」とか、ある校長先生は「いやうちはもっと厚いものをつくりました」と自慢しておられました。その話を聞いただけで、「わかっていない」ということがわかるわけです。
そんなにたくさん評価規準や目標を出してどうします? 使いようがないわけでしょう。日本には、プログラム学習のときの目標=評価の視点がまだはびこっています。いま言われているのは、プログラム学習を克服した後の、ベンジャミン・ブルームの理論なんです。これは、目標や評価規準は、「どうしてもこれだけは」という最小限・最低限まで絞り込むのが原理なんです。
→ブルームの形成的評価を知らしめた梶田先生なので、やっぱりここについてはこだわりがあるよう。ただ、診断的・形成的・総括的の3評価をそれぞれ最小限に絞り込んで毎授業を実践するかというと何だかイメージがわかない。評価項目を訳もわからず増やさないことの大切さはわかる。
わけもわからず見よう見まねで評価をしている人が9割以上もいるから、間違うんです。評価にあたっては、評価の目標とか規準はごく少数にしなきゃいけない。そこをどこまで絞り込めるかがその人の教材研究の成果、子ども研究の成果にかかっているんです。
→まあ確かに欲張って評価項目を増やしても評価のための評価になりがちだし、それを満たせればいいやという意識を生徒教員ともに生みかねない。その結果、「生徒が授業で見せている姿だけで生徒のことを知った気になる危うさ」を忘れそうになるからタチが悪い。
アトウェルのWW授業の評価基準はシンプルだったなあ。
生徒がライティング/リーディング・ワークショップで期待することに応え、各自で立てた目標を達成していれば、Aの成績。着実に学び、一定のレベルを超えていたらB。水準レベルで、可もなく不可もなければC。目標に遠く及ばず、取り組み不足の生徒はD
【書評】『イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室』⑦〜教員必見!あなた1人をどう評価する?〜 - やっちゃえ先生ブログ
さらにつづく
「うちは、全員の子どものポートフォリオをつくっている。たくさんの評価資料がありますよ」と豪語している先生がおられました。そんなに集めて、いつだれが目を通すんですか? ましてや、それを子どもの次の学びのために使うことはできっこない。そんなものは、集めただけで終わりです。これは見解の相違ではない。間違いなんですよ。
→厳しいですが、本当にそうですね…一歩間違うとポートフォリオのためのポートフォリオになってしまう。
子どもの学びや成長に生きないような評価活動をやっても意味がない。じゃあどうしたらいいのか? 放っておいてもBになる生徒、つまりある最低線をクリアしそうな子どもは、評価資料を集めなくてもいい。このままだったらCになる、学習指導要領の最低基準まで届かないという恐れのある子について、資料を集めればいいのです。
→まだこのあたりは序列化のための「評価」のパラダイムで評価を話されている気がしてしまうけれど、当時の教員の問題意識に応える内容だと思う。というか、今でも受験生の受験に使うためのクラスをもっているとこういう視点は必須だと思えます。
例えばクラスに30人の生徒がいれば、それに該当する子は7、8人はいる。そういう子についての評価資料を集めなければいけない。そして、ただ集めるだけではなく、どう指導に活かすかを考えなくてはいけない。 あとは、クラスに1人か2人、ほかの子どもよりずば抜けて優れている子どもがいるはずなので、その子の活動、成長の姿についての資料も集めておけばいい。ほかの子にもいい刺激になる。 つまり30人のうち、7、8人のこのままならCになりそうな子について資料を集め、どう転んでもAになりそうな子について1人、2人集めておく。あとの20人ほどは「おおむね良し」でにこにこしておけばいい。
→2018年現在の私は「おおむね良しでにこにこ」しておくわけにはいかない、と思わされています。その根拠の1つが溝上先生の今回の講話シリーズの副題にも現れている。
「あの子はおとなしいんですけど成績はいいんですよね!」をどう見るか
「にこにこ」黙ってはいないだろう。
評価に関連したオススメ本
ちょっと今日は思考が散逸なので、今まで読んできた評価関連本を何冊か紹介します。今でも読み返すことがあるものたちです。
- 作者: ダネルスティーブンス,アントニアレビ,Dannelle D. Stevens,Antonia J. Levi,佐藤浩章,井上敏憲,俣野秀典
- 出版社/メーカー: 玉川大学出版部
- 発売日: 2014/03/24
- メディア: 単行本
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「主体的学び」につなげる評価と学習方法―カナダで実践されるICEモデル (主体的学びシリーズ―主体的学び研究所)
- 作者: スー・F.ヤング,ロバート・J.ウィルソン,Sue Fostaty Young,Robert J. Wilson,土持ゲーリー法一,小野恵子
- 出版社/メーカー: 東信堂
- 発売日: 2013/05
- メディア: 単行本
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大学教員でなくてもめちゃめちゃ参考になります。あとは、最近出たこれ。
- 作者: C.A.トムリンソン,T.R.ムーン,山元隆春,山崎敬人,吉田新一郎
- 出版社/メーカー: 北大路書房
- 発売日: 2018/09/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Q&Aでよくわかる! 「見方・考え方」を育てるパフォーマンス評価
- 作者: 西岡加名恵,石井英真
- 出版社/メーカー: 明治図書出版
- 発売日: 2018/10/12
- メディア: 単行本
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おわりに
それにしても梶田先生の言葉は2003年とは思えない部分がたくさんあってドキッとしますね。でも一方で、確実に15年前とは違う評価観が流布していっている感覚もある。
アトウェルのように、学習のための評価を徹底して、生徒が評価の主体となる、自分で自分を評価する、という点ではスパイダー討論も同じだと思っています。
愚直に勉強して、実践します。付け焼き刃ではなく確信を持って、シンプルに。