授業をどうデザインするか?という問い。
単元や状況によって異なる部分は当然あるものの、最近の授業でますます思っていること、迷っていることがあるので、共有させてください。
大福帳の理想と現実
現在は希望する一部の生徒を除いて、紙ではなくGoogle Classroomで大福帳を運用しています。
要は、生徒がGoogle Classroom上に毎回感想を書き溜めていきます。
具体的な理想を言えば、集約されている大福帳コメントを生徒が各自のスマホで閲覧し、クラスメイトのコメントに返答して、Online Discussionを行うような形で学びの場が広がっていけば嬉しいです。
通学途中や夕飯後に「前回の授業みんな何書いてるんだろ〜」という“軽いノリ”でClassroomを自分のスマホで開いてコメントしてもらえたら、と思うのです。
ただ、生徒はとにかく忙しい。
部活動に塾に課題に、すでに飽和状態。
受験の面で言っても、2次試験で使用しない生徒の多い公民科目の任意課題を、自主的に取り組む生徒は多くありません。
友人の大福帳に対するコメントを書く生徒が2,3人いるだけでありがたいのです。
最後の10分で大福帳コメントを書く
そんな状況なので、1番大切なことは、授業内で大福帳を書く時間を5分以上取ること。書き終わった生徒から授業終了です。
なるべく「授業後に自分で書いておいてね」という状況を避けます。
経験則ですが、自分で書いておいてね、だと書かない生徒が圧倒的に増えます。
というか、生徒目線で言えば、忙しいし面倒で書くのを忘れてしまうのです。
生徒各自のスマホからログインして書くことも考えると最低でも5分は取ってあげたい。(Google Classroomにオートログインせず、毎回パスワード等を入力する生徒もいるので)
大福帳は「音声入力を使ってもいいよ」とは言っています。
が、静かな教室で自分だけ音声入力で、という状況が気後れさせるからか、教室で音声入力を使いこなす生徒はいません。
あと、生徒のフリック入力のスピードは速い!これも音声入力のメリットを減らしています。
ちなみに、あすこまさんは生徒の大福帳をご自身で音声入力してExcelに転記されているとのこと。
大福帳の内容をスプレッドシートに音声入力で転記している。macの音声入力の精度がイマイチでgoogleに乗り換えたいんだけど、スプレッドシートだと音声入力できないんですよね...?
— あすこま (@askoma) 2018年10月13日
これを個人ごとに蓄積していけば、立派なポートフォリオができる。紙の大福帳のいいところをオンライン上に集約した形になる。素晴らしいですよね。
ただ、40人×6クラスの生徒を相手にこれを自分がやるとなると、完全に量に圧死してしまうので考えものだ…
次の授業の最初の10分で
生徒のコメントからいくつか抜粋し、クラス全体に共有します。
具体的にいうと
①「前回の大福帳スレッドを見る」よう指示する
慣れればしなくても生徒はスマホを開いて見ています。ゲームをしたりLINEしているのかもしれないけど、BYODでこれを疑い始めたらキリがない。今のところは運用できています。
②「〇〇さんのコメント」と注目するコメントを選ぶ
非公開の欄に書いている生徒のコメントの場合は、匿名で紹介します。公開欄に書いていれば、〇〇さん、と生徒の名前を必ず言います。理由は、他の生徒がA-Z順に並んだ生徒のリストから当該生徒を探して、手元でその生徒のコメントを見ることができるからです。生徒の長いコメントを教員が読み上げるだけでは頭に残らないし、黒板に投影するのは機材の手間がかかる+文字の視認性が低いので、手元で見させています。
③私がそのコメントに注目した理由を発言する
紹介したいコメントは多数あります。敢えて取り上げることが多いコメントの性質をいうと、生徒の視野を広げるもの、個人的・具体的な経験や、他の何かと比較しているもの、新たな問いを投げかけているもの、に注目することが多いです。理論的にはICEモデルに則っています。
「主体的学び」につなげる評価と学習方法―カナダで実践されるICEモデル (主体的学びシリーズ―主体的学び研究所)
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ここでもうひとつ、注目して取り上げた生徒には手元で記録をつけておきます。どんな生徒も「自分も取り上げられないかな」と思う心はあるもの。なるべく全ての生徒を年間で取り上げられるように意識しています。自分の指名の偏りも自覚できます。
④そのコメントを書いた生徒+他の生徒の発言を促す
どういうことを思って書いたのか、今読み返してどう思うか、などを敢えてそのコメントを書いた生徒に聞きます。特に、皆に参考にしてほしい、と思うコメントのときにそうします。理由は、このツイートの通りです。
大福帳の「良い」コメントを授業内で紹介し、言葉のやりとりをするんだけど、ある生徒が言っていた
— T.Yacchae (@Yacchaee) 2018年10月11日
「良いコメントなのはわかるんだけど、良いコメントを書くために、どうすればよいかがわからなかった」
という言葉を思い出す。
学びたい、成長したい、を支援しきれていない自分の力不足よ。
よく書ける生徒の思考のメタ的な部分を、敢えて言語化してもらい、その言葉を教員が拾って「〇〇さんはこういうことを意識してコメント書くんだね」などと付言する。それを繰り返し実践することで生徒が具体的なコツを理解し、「次は自分もそうしてみよう」という意欲が生まれることを期待しての働きかけです。まだ、そのことに効果があるかは実証できていませんが…
慣れてきたら、この10分を生徒に担当してもらいたい、というのが密かな野望。
授業「本体」は30分で
50分みっちりレクチャーを行うことはいつだってできるし、実際にはしたい。
でも基本は30分。長くても40分で、残り10分はここまで述べてきた活動のために取っておきます。
経験を積んでいくからこそ、知識と経験が増える。レクチャーは短くできる。
この記事では10-10-30の順番で紹介しましたが、1回の授業単位で見ると、時間の使い方はこうなっています。
10(前時の大福帳共有) ー 30(授業本体) ー10(本時の大福帳記入)
おわりに
あくまで今日の記事はレクチャーをベースにした時の時間配分で、ディスカッション等はまた別の時間配分です。
また、完全にこの10-30-10のモデルを毎回実践できているわけではありません。これがいいかなあ、という迷いながらのモデルです。
ずれた時も5-40-5くらいには収めているし、例えば最後の10のところにオンラインクイズを入れることもできます。
あと、生徒が良いコメントを書けるようになるための指導、という意味でもやっぱり『イン・ザ・ミドル』は勉強になりますよ。
その点で、『イン・ザ・ミドル』のアトウェルがWSで生徒に自ら示す「譲り渡し」や「自分ならこうする」は参考になる。
— T.Yacchae (@Yacchaee) 2018年10月11日
そしてどの教科でも彼女の姿勢は見習えると同時に、教科の文脈でのフィードバックが必要であることもアトウェルは強調していた。教科の専門家としての教員の力量形成が不可欠。
一連の書評記事もよかったらどうぞ。
10月ってこんなに忙しかったっけ…と思いつつ、読書のペースも保てているのであとはブログのペースだけ…(汗)