センター試験に代わる入試、プレテストの現代社会を解いた雑感です。
今回のプレテスト(2回目)から政経・倫理・現代社会と3科目そろいました。現代社会は2回目のプレテスト。
昨年の調査では、同センターは各問題の配点を示さなかったが、今回は明示し、全体の正答率は5割を目標に作問したという。
正答率が5割ベースの試験ということを頭に入れて、先に1回目のプレテスト「現代社会」の振り返りと、個人的に感じていたことを確認します。
今回のプレテストの工夫・改善点
これは個人的な感想ではなく、大学入試センターが提示した「昨年度のプレテストから工夫した点、改善した点」です。
一つ目の問題数の増加は昨年度の23問は驚きでした。今回の31問は妥当かと思います。最も設問の少ない政治経済でも30問ありました。
二つ目の出題内容・形式に関する工夫はこれだけ読むと、「ふーん」という感じですが、実際に解いてみると少し印象が変わります。この点に関しては後述します。
最も正答率が低い問題は?
ちなみに、昨年度の調査で、最も正答率が低かった問題がこれ。
「すべて選べ」は確かに難しいのですが、問われていることは単純。
そう、最も正答率が低かったのは、暗記問題。
前回の試行調査では設問別の正答率がすでに公開されています。この問題の正答率は驚愕の4.8%。*1
「主に問いたい資質・能力」をみると、「知識・技能」のみを尋ねる問題なのです。また、3番目に正答率が低かったのも、知識問題でした。
よしあしはさておき、このような状況から前回の試行調査では「結局暗記問題で差がつくよね!」ということになり、結果的に「じゃあ今のセンター試験とあまり変わらないね」という言説を生んでしまったと思っています。
以上、前回から今回のプレテストに至る上での工夫・改善点に加え、私個人が気になっている点を整理しました。ここから今回の分析。
出題の工夫が随所に
最初に紹介した「出題内容・形式に関する工夫」については、例えばこんな問題たちを見るとよくわかるでしょう。
まずは学校新聞。「社会に開かれた教育課程」を意識して作られているのはよくわかります(あくまでこれはまだ手法的な変化にとどまる)
この第1問は、かなり読み取りに重きをおいた出題でした。問題も知識一発!というよりは、原理と具体の対応関係を理解しているかどうかを問う問題が中心です。
新テストの試行調査の現代社会で、ロールズの「公正としての正義」(X)とセンの「ケイパビリティ(潜在能力)」(Y)を具体的事例に即して考えさせるこの問題(第1問問6)、上手いわあ。このように、知識のミニマムを落としたうえで、基本事項の確かな理解を問うのが、地歴・公民に共通する特徴です。 pic.twitter.com/j5H9w2TSf3
— 相澤理 (@o_aizawa) 2018年11月11日
第3問のこれはなかなか時間のかかる問題でした。おっ!と思った理由を一言でいうと、実際の最高裁判決文が使われているところ。
webで出典も確認できます→ 裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面
ここまではよくあるテストの「読まれないリード文」ですが、今回のプレテストはここからが違う。
これはなかなかタフな問題ですよね。
【2018.12.28追記】正答率は21.6%。低いです。
かなり読解力に依存した問題ではあっても、語彙力と学術的な用語への慣れは必要だし、判決文という文書は日常読むものではないと考えると、公民科の教科特性の強い文書だと思います。
アトウェルが「各教科の特性に応じた読み」を強調していたのはこういうところに現れているのかな、とふと感じました。
さらにさらに…スーパー高校生Aさん。
現実や日常を意識した設定が随所に見られるプレテストで、こんな意欲的なスーパー高校生がいることだけは現実離れ(笑)
アダム・スミスからの、E.H.カーのはしご!院生も真っ青です。
Aさん恐ろしや。
【2018.12.28追記】正答率は51.6%。この読み取りなら妥当でしょうか。もう少し高くてもいい気はする…
閑話休題。
ともかく、判決文・原書など「ホンモノ」を読むことは授業でもちゃんとやらないといけないなあ、とは思う。判決文って実は面白いんですよ。
そしてまたまた探究学習。
探究学習をやらない学校はない、くらいの設定ですよねこれ。
【2018.12.28追記】正答率は47.6%
日々の授業と関連させると
探究学習の発表を聞いた生徒のコメントを抽象化して分類するという問題。
【2018.12.28追記】正答率は69.9%。こういう類の問題は、問題文の長さが露骨に正答率に直結している感覚です。
これなんかは、今授業でやっていることとも関連します。
今私の授業では探究の発表に対して生徒がコメントをし、そのコメントをもとに新たな学びが行われる、という状況です。それをGoogle Classroom等のツールが後押ししてくれています。
クラスメイトから得られたコメント(フィードバックや意見)を分類して、抽象化する作業を学びのプロセスに入れることはできそう。
日々の授業と関連させると②
今回の公民科目のプレテストにおいても、会話文がベースになり、流れに沿うような文章を選ぶ問題は飽きてしまうくらいよく出ました。
これをヒントに授業化すると、例えば、
「Aという立場の人と、Bという立場の人が○○について対話している会話文を書きなさい」という対話文作成の課題を出し、生徒同士でピアレビュー、対話編としての課題を評価し合う、みたいな学びが成立しそう。
「この対話じゃ視野狭すぎじゃね?」「例えば〇〇みたいな観点入れたほうがいいって」みたいな会話が生徒同士の間で生まれるイメージはおぼろげながら湧いてくる。
いずれにせよ、倫理の記事の終わりでも書いた、
「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」が往復運動を続ける授業。
そういう授業を作りたい。
おわりに
読めないと厳しい。それはよく分かった。では読めるようにするにはどうすればよいか?高校だから部活もあって読書の習慣はどうにもならない、とか親の影響が、とかいう前に、できることがないかあがき続けよう。
※倫理編・政経編をそれぞれこちら。本記事でも前半は重複する部分があります。
【2018.12.28追記】
正答率・出題の意図等が大学入試センターから発表されました!
正答率が低い問題はここでは紹介していない前半に集中していますね。でも前回の長さよりレベル感はちょうどよくなったか、やや難しい。もう少し基本的な知識問題を増やすとは思いますが、目指している方向性は実感できたと思います。
*1:ちなみにこの問題の答えは、②③⑤⑥⑦。