PBLという言葉が浸透している教育界ですが、この2つの使い分けは意外となされないまま「PBL」と言われている気がします。
- Problem-Based-Learning
- Project-Based-Learning
その違いについて整理してみます。
Problem-Based-Learningとは
日本語に訳せば「問題解決型学習」といわれるこの学びは
複雑な現実の問題に対する探究とその解決を中心に据えて集中して取り組む、体験的な(身も心も使った)学び
と定義されています。

PBL 学びの可能性をひらく授業づくり: 日常生活の問題から確かな学力を育成する
- 作者: リンダ・トープ,サラ・セージ,Linda Torp,Sara Sage,伊藤通子,定村誠,吉田新一郎
- 出版社/メーカー: 北大路書房
- 発売日: 2017/09/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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当たり前のように「探究」という言葉が入っています。
元々は医学の領域において、理論と実践の結びつきをより強め、学習者の主体性を促し、持続的な学びを実現するために考えられたもので、「学習者が自分自身の意図を明確にしながら積極的に問題解決に携わる」ことが核です。
紹介した『PBL 学びの可能性をひらく授業づくり』は網羅的で時系列にPBLを解説している素晴らしい本なので、手元に置いておきたい1冊!
Project-Based-Learningとは
2つ目のPBLは、日本語に訳せば「プロジェクト型学習」といわれる学び。
こちらの本から、その核となる考え方を列挙してみます。
- 通常の授業とは異なる方法で行う
- 中心となる考え方やテーマを核に据える
- 実社会に根ざした問題群を解決するために行われる
- 学生が複数人でチームを構成する
- 共同で探求する取り組み
- 課題が具体的に与えられるというよりは、実社会の中で自ら問題を見出し
- モノづくりやシステムづくりを通して解決する
語るに尽くせないPBLですが、これがプロジェクト型学習の要素です。
先に紹介した「問題解決型学習」とは必ずしも一致しません。
「必ずしも一致しない」という言い方をするのは、理由があります。それを説明してみましょう。
3つのプロジェクト型学習
21世紀の教育を理論から語ってくれる哲学者の苫野一徳先生によれば、「プロジェクト」は次の3つの型に大きく分けられます。
- 課題解決型プロジェクト
→課題・問題の解決で学ぶ - 知的発見型プロジェクト
→知的な発見を目指して学ぶ - 創造型プロジェクト
→何かをつくることで学ぶ
3つのプロジェクトは、「探究の過程で自然に融合するもの」です。
教員は目的に応じてイメージをしつつも、「子どもたちがシナリオ通りに動くのではなく、その創造性を縦横無尽に働かせて学び始める」のを支援する役割になるでしょう。
もうお気付きの方もいるかもしれませんが、
3つのプロジェクトのうち、1つ目が問題解決型
といえるのではないでしょうか。つまり、苫野先生の紹介した3つの類型における1つ目が、はじめに紹介したPBLであるということです。
- 課題解決型プロジェクト →課題・問題の解決で学ぶ
⇨これが最初に紹介した問題解決型学習 - 知的発見型プロジェクト →知的な発見を目指して学ぶ
- 創造型プロジェクト →何かをつくることで学ぶ
私たちが普段「PBL」というときに、頭の中で整理できるようになっていることは伴走者かつ共同探究者としての教員を支える知識になると思います。
おわりに:探究のサイクルを!
苫野先生は「プロジェクト=探究」と言っても差し支えないと仰っています。
つまり、プロジェクト学習はいずれも「探究学習」と言えるわけです(今さら感)。
ここまでの話を図にしてみると、こういう感じになるでしょうか。
そして、探究学習がスタートすれば、教員・生徒が一緒にそのサイクルを回していくことになります。
その意味で、「探究の基本形」を示した、こたえのない学校さんのこの記事は問題解決型もプロジェクト型も網羅して探究の本質を整理している超良記事です。
探究学習を教員がデザインするにあたって、目の前の生徒に合わせて使い分けるために、依って立つ理論を手中に収められれば、と思いまとめてみました。
皆で生徒の力を引き出すいい授業をつくりましょう!
生徒自身から発せられる問い・テーマに基づいた探究を進めたい!と鼻息荒くなり、「教員から問題を提示すること」にためらう事もある。
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2019年4月1日
が、いざ自分が探究したい!あるいは問題解決しなきゃ!という時にその力がなければ前に進めない。
その力を養うために問題に出会「ってもらう」必要性を感じた。