年末年始に突入です。皆さん本当にお疲れ様でした。
今年も色々ありましたが、2021年に読んだオススメ本と、積読本も合わせて紹介します。社会科学編はいったん横において、ひとまず教育関係のものに特化します。
- ①『探究する学びをつくる』
- ②『人はなぜ集団になると怠けるのか』
- ③『独学大全』
- ④『ペーパーレス時代の紙の価値を知る ~読み書きメディアの認知科学』
- ⑤『知ってるつもり~「問題発見力」を高める「知識システム」の作り方』
- 紹介しそびれた6冊目
- 読みかけ・積読シリーズ
- 「新評論」シリーズ
- おわりに
①『探究する学びをつくる』
今年はこの本から幕が開けたのでした。
探究講座を担当している身として、この本で示されるHigh Tech Highの学びのあり方を参考に、勤務校でどのようなアプローチを取ればよいのか非常に考えさせられました。
何より、日本のカリキュラム史における「探究」という文脈から意図的に身をはがして読むためにおススメしたい1冊。
内容については、書評記事を2本書きましたので詳細はそちらに任せます。
あ、今年は藤原さとさんと直接お話する機会に複数回恵まれていたのでした。
そこで感じたことは「さとさんは教育という分野に身を置いてきたというよりも、母親として教育に向き合い、そこから抱いた教育に対する疑問や考えを形にし続けているんだな」ということ。
このヒストリーが実はカギで、変に「教育畑」のにおいがしないからこそ、本質的な学びにズバっと切り込んでいけるんだと感じています。
ブログ記事も1本1本自分の依拠したソースを明確にしつつ、分かりやすい言葉で知見を共有してくださる仕事のクオリティは見習わなければなりません。
藤原さとさん、これまた素晴らしい記事。
— やっちゃえ|Blended Learning (@Yacchaee) 2020年9月27日
GradingとAssessmentを区別するときに、Assessmentが元々ラテン語で「隣に座る」という意味のassidereに由来することを知ると、イメージができやすいかも。生徒の隣に座って「今週どうだった?」とお茶飲みながら話すような、そんな意識を個人的には持ってる。 https://t.co/8FkoKyeeVg
日本の教員養成は非常に丁寧な教職課程の割に、単位習得に躍起になって学問的視野は狭くなりがちな気がしてならないので、その点でもずっと教育畑の人にこそ、さとさんの発信は刺激的だと思います。仮に、居心地の悪さを覚えることがあってもね!
②『人はなぜ集団になると怠けるのか』
探究やPBLといった言葉に興味を持った学校教員は、学校の枠を使いながらそうした学習をデザインすると思うのだけど、そこで直面するのが集団になった際の力学の問題ですよね。必ず「手抜き」をする生徒(教員)も出てきます。
手抜きを、手抜きにさせないデザイン力こそ求められる職業ですが、それでもどうしても生じてしまう手抜きについて打開策を求めるあなたにぜひおすすめ。
少しだけ本の内容を共有すると、
- ①努力の必要性(自分の努力が集団全体に役に立つ)があり
- ②道具性(自分の努力が報酬や罰に直接結びついている)と
- ③評価可能性(自分の努力が公に認められる)を感じられて
- ④報酬価(仕事自体に報酬や価値がある)があると思えるかどうかに
その人のコミットメントは左右される、という知見が紹介されていました。
こうした研究をもとに、自分の授業をチューニングしつつ、教育的なかかわりを絶やさない、ということを繰り返す毎日です。
③『独学大全』
学びについて2冊紹介したので、この「知的鈍器」に触れないわけにはいきません。
あまりの厚さに驚き、どうしても「辞書」として使うのかな?と思いがちな1冊ですが、ちゃんとした読み物です。むしろ通読しやすい工夫が随所にありました。
独学大全、読了しました。「自分だけの知的財産」として、何度も立ち戻ることになりそう。ここにある55の学びの技法はすべて文脈依存的。技法を自己理解の上で文脈に落とし込んで結果に繋げる、という点では多くの人に伴走者が必要。そのための教師でいたい。担当してる探究講座でも必携本にしたい。 https://t.co/Aeet9QGfVJ
— やっちゃえ|Blended Learning (@Yacchaee) 2021年1月11日
今パラパラと読み返すと、この本の作りが、まさに「独学」者向けにモジュール化(細分化)された手本のように思えてきます。
もちろん、巻末の逆引きもあるので辞書的にも使わせてもらいました。探究講座で必携本とはしなかったけれど、してもよかったかな、と思っている1冊。生徒とこういう本を使い倒してみたい。
④『ペーパーレス時代の紙の価値を知る ~読み書きメディアの認知科学』
これは私なりに評させていただくと、
これからの時代は!デジタル!タッチペン!と意気込んで開発・研究を進めた結果、1000年以上不動の地位を保ってる紙スゴすぎという結論にたどり着くミステリー(?)研究本。地道な1冊だけど、素晴らしい研究成果のまとめです。
こちらも読了。デジタルメディアの専門家2人が「紙はオワコン!と思ってたけど紙の凄さに驚嘆する話」なのだけど、超読みやすいのに研究レビュー満載で、全ての学術書がこんな風に論文レビューしてくれたらいいのに、と思えました。笑 DX時代の学校教育考える上でも必読かと。https://t.co/OB3inV5C3Q
— やっちゃえ|Blended Learning (@Yacchaee) 2021年1月22日
⑤『知ってるつもり~「問題発見力」を高める「知識システム」の作り方』
5冊目は、Twitterで保護者層からも特に反応が多い西林先生の最新作をあげておきます。
私の一番のおすすめは、最も学習論に特化されていると感じる1994年のこちら(今読んでも新しい)ですが、上の「知ってるつもり~」が2021年発売の最新作です。
元々東工大の理工学部から教育畑に進まれた先生ですが、ずっと教員養成にも関わられていたことまおり、非常に教育的な筆致で、教育者のみならず保護者にも参考になる知見が多いからでしょう。
元々理系のご出身で学習心理学に進まれていて、そういう研究者の中には「教育」的視点が薄く事象の分析に終始するケースもあるけれど、西林先生は元々こういう語りがちらちら見られて、個人的にはとても好き。この著作が最も「何のために勉強するか」をちゃんと中高生に対して語ってる気がします。 pic.twitter.com/luszDy2iMW
— やっちゃえ|Blended Learning (@Yacchaee) 2021年12月27日
割り算は「1あたりの数」を求めるもの、という捉え方の変換など、知識の質を上げることでより汎用性の高い良質な知識になるという具体例とか、分かりやすくて腹落ちします。
紹介しそびれた6冊目
あ、これも良かったけれど書名だけ・・・
読みかけ・積読シリーズ
をここに列挙しておきます、自分がちゃんと読むために、自分に対する圧力です。笑
これは絶対にちゃんと読まなければならないやつです。何せこの公開編集会議が楽しかったのなんの。
読みますよ、ええ。これは評価も高いですよね。
堀尾先生の本もブックレットだけじゃなくてちゃんと読まなければ。
あ~これもありました・・・(本棚とにらめっこ)
本棚のこれと目が合ってしまった、第2巻まであんなにすぐ読んだのに!
読了・積読になっている中で、新評論シリーズだけは取り上げて最後に紹介しておきます。
「新評論」シリーズ
今回の5冊には入れませんでしたが、毎年紹介している新評論の訳本シリーズです。教職経験が短い時に新評論の訳本10冊くらいざっと読むだけでもお仕着せの新人・若手研修よりもよほど良いと思います。
新評論の本、ちょっとお高いんですよね…もう500円安かったら、と思う先生は多いかなと思います。2000円以内におさまったらいいよね・・・
おわりに
また尾ひれはひればかりの記事になってしまいました。
おすすめの教育本をまとめた記事を「まとめ」ておきます。
www.yacchaesensei.comwww.yacchaesensei.com
さまざまなものや立場を与えられた恵みに感謝して、色々チャレンジを続けたいです。