コロナによる休校が決まってまもなく1ヶ月。生徒たちの様子も気になっているのと、Zoomによる学びを試してみたかったので、同僚とZoom授業(座談会)を2度実施しました。
同じく試行錯誤されている先生方のお力になれれば幸いです(3月末〜4月上旬にかけて断続的に追記中。記事末尾に追記していきます)
開催に至るまでの手順
これが今思えば大きかったのですが、
3月上旬の時点で、今後動き出しを早められるようにZoomに連絡を取っていました。
それが、Zoomの「マナトメプログラム」です。私は「申し込み方法A」で連絡をしました。今の記載だとこのプログラムは4/30まで続くので今からでもOK。
1日経たない内にZoom担当者から返信があり、アカウントの発行もスムーズに完了しました。また、活用法マニュアルも添えられていたため、手探りでもそちらを参照しながら試運転をし始めました。
助かったのは、必要なライセンス数は私の分の「1」だったのですが、それを申告する際に「同僚が主催する可能性もある場合どうしたらよいか?」と尋ねたところ、「10」ライセンスを私のアカウントに付与してくださったことです。
これによって、同僚がマナトメプログラムに申し込まなくても、私の方で(勝手に)権限を付与することができ、他の教員も自由に活用できるようになりました。感謝。
その後の概要
- 同僚と相談し、トライアルとしてZoomをやってみようと決定
- 生徒に案内する前に5-6名の教員で先行実施、機能確認
- 屋外にいる教員は雑音が多く終始ミュートでラジオ状態(それでも聞くことはできている)
- ハンドサインやあいづち、「手を挙げる」機能や「反応」機能で、発話しなくてもリアクションを見える化することが重要と確認
教員数人でトライアルをするのは必要かもしれません。「チャット」機能や「画面共有」機能など、使ってみてわかることがいくつもありました。画面共有して動画再生しても普通に視聴できることが驚きでしたね。
このトライアルをもとに、
- 授業担当学年の生徒にGoogle Classroom経由で告知
- 内容はかっちり決めず、3月の学校の状況、春休みの過ごし方、来年度の変化や進路の話、など適当にトピックを明示
- 開始時間と、Zoom会議に参加するためのURLを掲示
して開催時刻を待ちました。
驚いたのは、当日かつ数時間前の告知だったにも関わらず30人弱の生徒が集まってくれたことです。生徒同士がLINEで「なんかやるらしいよ」と広げてくれたことも功を奏しました。感謝。
初回はトピックを決めすぎず、まあ話したい人どうぞーというゆるい提示だったのが良かったかもしれません。
初日の感想・生徒の声
感想の対象が多岐にわたりますが、記録のツイートとともに、書き出してみます。
以下の3連続ぶら下がりツイートの補足ですが、生徒たちは、何気ない対話が本当に久しぶりで楽しそうだったことが印象的でした。教員も元気をもらえます。
Zoomで生徒たちと座談会。同僚と直前に決めて半ばゲリラ的に開催して行なったのに20人以上集まってくれていてこちらが元気をもらった笑 生徒も何気ない対話が楽しそうで本当にやってよかった。そしてzoomにおける身体性(ハンドサイン、ミュート、発話と傾聴の切り替え)は生徒の方が上手いですね。
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2020年3月23日
あとは「自己管理」して学びを続けられている生徒と、そうでない(であろう)生徒の差が4月以降に如実に出る気はする。塾、家庭、オンライン自習室など、使えるリソースも学びの内容も当然違うけれど使えてる生徒は使えてる。学習・精神面のケアが最も学校の力が問われそう。本当にコロナ対応は長期戦。
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2020年3月23日
また、「Zoomにおける身体性」と勝手に銘打ちましたが、学習活動に伴う身体性はさすがデジタルネイティブ世代の生徒という感じです。
ここが弱い生徒層や学齢がもう少し低い場合は、一度その操作や身体性についてのみを教員がレクチャーするZoomの時間があってもよいかもしれません。
※授業と身体性の関連についてはこちら↓の書籍を。
生徒の声・続編
さらに、生徒の話で印象的だったことも掲載しましたが、いずれも切実な問題です。
図書館で本が借りられない生徒の問題は、オンラインの無料公開のコンテンツだけでは解消しきれない部分がありますよね。BOOKOFFに行け、というのもなんだか違う気もします。有効な打ち手がなかなかない。
オンライン自習室を活用している生徒は、そこではかどってはいるものの、全然知らない人たちと集うよりは、同じ学校の仲間と集いたいということでした。
※オンライン自習室は無料でいろいろな運営母体がありますが、カタリバさんの運営記録が裏側を覗いているようで参考になります。
本校の生徒は、同僚と私が開いたZoom座談会で仲間を募集し、今はそこで集まった数人の生徒たちでオンラインZoom自習を展開しているとのこと。すごい。笑
最後に印象的だったのは、部活の引退がどうなるか心配している生徒でした。これは本当に悩ましい。オリンピックは何とか延期できても、この高校生活の1年は延期できない。
どうしようもないことではありますが、こうした生徒のモヤモヤに目を向けていくという点、「コロナのせいで高校生活は最悪になった」と思わせないようにサポートするという点では、本当にこのコロナによる対応は長期戦です。
特に、このZoomの機会以外でも様々な無料公開コンテンツなどを有効利用できている生徒とそうでない生徒の差は広がっていると思います。
感染拡大が終息しても、休校から続く対応の影響はずっと付きまとうということを肝に銘じておく必要がありますね。
2日目、いろいろ気づく
特に連日で行う意図はなかったのですが、初日トライアル開催後、生徒たちから反響のメールを複数もらったため、同僚ともう1日やってみようと決めました。
お題をくれた生徒もいたので、そのお題に触れつつ、2日目はチャット欄や画面共有をより積極的に使って運営をスムーズに改善できたかと思います。
重要だと感じたのは、本記事の副題でもある「教員:生徒」の割合です。
今回の私たちの取り組みのように比率が「2:30~40」となると、参加者の様々な動きに目を配りつつ、場を展開させなければなりません。
そうなると、1人の教員だけでチャット欄を見ながら生徒の反応を観つつ、途中から参加してくる生徒をボタンを押して入室させ、画面共有なども行ってて場を展開するなど技術的な操作も行うのは難しいと感じました。
例えば、Zoomのチャット欄の仕様はよくできていて、だれでも全員に向けて発信できますが、「プライベート」という機能を選べば、チャットを送る人を選べます。
実際に起きたのは、全員の前で質問をチャットに投げにくいので、ホストである教員(私)宛にプライベートメッセージで質問を投げ、それを私が匿名の形で読み上げる、という展開でした。
これがもし、私1人だけだったら対応が難しかったと思います。できても、生徒だけで会話が進む展開にならなければ、話がいったん止まったりして手持無沙汰になるでしょう。
よって、生徒が20人以上いて、教員が複数いる座談会のような形式の場合、話のファシリテーター(司会者)、運営のマネジメント担当をゆるくわけておくとよい気がしました。一方的に教員が話し続ける展開であれば別かもしれませんが・・・
そのほかの感想
長い記事になってしまいましたが、2日目の感想として聴くことの大切さを実感できたことは特筆しておきます。
哲学対話等のディスカッションもZoomでグラウンドルール定めればいけるかな。教員目線での1番の収穫は、話してる生徒の言葉を受け止め「傾聴」できること。教室だと色々あって聴ききれてない時があるので、聴くを鍛え、大切にできる。あと生徒のカメラは数人ONであれば多数がOFFでも安心してできる笑
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2020年3月24日
普段の授業はなんやかんやで聴き切れていないことが多いと痛感するなあ・・・
あとは細かい点にもなりますが、箇条書きにしておきます。
- スマホ端末から参加する生徒が約7割
- スマホはアプリを入れていないと動作が安定しない(本校は G suiteを導入しているので、その意味ではGoogle Meetの方が何かをインストールする必要なく利用はできる、が会話環境はZoomが◎)
- wifi使用とアプリのインストールは事前に推奨すべき
- 屋外や近くで人が会話している環境だと音声を拾ってしまうため入室時はミュート推奨(教員の画面で対象生徒を指定してミュートにすることも可能)
- 時間より早く準備している生徒もいるので待合室機能はONにすべき
- いちいち途中入室の生徒に入室許可を出すのはなんとかならない?
- 2時間くらいやっていると意外と疲れるので休憩も必要?
- 投票や反応機能は双方向性をもたらすために有用な機能!(3/30追記)
- チャットの保存、録画→YoutubeにUPした上で、その動画の概要欄に保存したチャットの内容を貼付等でログ化(3/30追記)
- 大人数参加でも「ブレイクアウトルーム」機能でグループワーク可能!(3/31追記 この際役立ったマニュアルはこちらです。本記事末尾にも掲載。)
おわりに
Zoomでレクチャーをしてもよいかもしれませんが、youtubeで観てもらってからZoomでディスカッション、という形の方がいいかもしれません。課題の提出はclassroomがあり、youtubeと連携もスムーズなので、Zoomとどう使い分けていくかは今後の課題です。
内容や人数によって変化する部分があると思いますが、少なくとも、チャットで質問を募集しながら進めていくスタイルは次回も継続してみようと思います。
生徒がこの1か月何を感じてきて、どう過ごしているのか、共有しあって分かりあう時間をつくることの意味を感じられました。
形成的評価はこういう活動を地道にやることしかないし、教育の本分はそこにあると感じています。参加したのは生徒の一部だとしても、やってよかったですし、任意でハードルを下げておけば、何より教員も楽しめます。
教員が楽しんでやれること。1番重要なことかもしれません(笑)
【3/26追記】生徒・教職員にコロナ感染者が出た場合は14日間の休校方針が出たのでなおさらカリキュラム策定と授業計画が重要になると感じます。
在宅勤務による遠隔授業の個人的tipsをまとめてみて思ったのは、週1,2の比較的単発で行うオンライン座談会ならカリキュラム設計も比較的ゆるく、相対的評価をじっくり行えるけど、週3〜の授業だとカリキュラム設計や技術的な負担感は増すchallengingでタフな状況。教員にとってチャンスでもあるけど。
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2020年3月26日
4月以降のコロナ対応の方針が出ましたね。どの学校も感染者が出たら14日休校となると、本当に常にそうなってもおかしくないように授業計画立てとかないと、また評価材料がないとか言い出す羽目になる。
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2020年3月26日
都立高校など 時差通学・分散登校 実施へ 東京都教委 | NHKニュース https://t.co/V10dHf3YHx
【3/27追記】立教大学・中原ゼミのZoom知見が見やすく参考になります!概ね同意!
【3/28追記】①学会向けですがマニュアルが公開されています!ポイント掴むのにもってこい!
②松浦先生のまとめ。ツールありきではなく、学習目標、目標達成のための課題準備、デザインありきと思わせてくれる。無理しすぎは禁物ですね。生徒も疲弊してしまう。
【3/30追記】大福帳の向後先生のnoteが無料公開されています、ありがたい。WIREDの記事もわかりやすくまとめられているのでtipsとして有用。
【3/31追記】参加者をいくつかの部屋に分割してグループワークを進める「ブレイクアウトルーム」機能を試して見ました。その準備のためにこちらのサイト「Zoom+a」を発見、超役立ちます!
【4/3追記】「ブレイクアウトルーム」機能を複数回活用してみました。カギになるのはグループに分かれる前の「明確な指示」と「早く終わったらおしゃべりしてていいよ、話すことなくなったらメインルームに戻ってきてね」というゆるい指示の組み合わせだと感じます。決めて、委ねる、という感じ。
【4/9追記】①Zoomのセキュリティに関して様々な懸念が示されていますが、東大の資料がそれらの報道を検証してまとめています。かなり解消されています。②アップデートで下のような「セキュリティ」タブが目につく所に配置されました。
【4/26追記】Zoomを使ったオンライン職員室の試みについてまとめています。授業以外で、生徒とコミュニケーションをどう取っていくか、どう偶発性に支えられた空間をつくるか?の実践です。
【4/30追記】Spatial Chat スペチャを使ってみました!ZoomやRemoを補うツールになりそう。