オンラインでの学校再開から約2週間。
遡って、突然の休校要請があった2月下旬からここまで2ヶ月。
色々ありましたが、Zoom・Google Classroom等を使い、なんとか教育活動を継続できるように組織として、個人として動いてきました。
この記事は、授業にとどまらず、学校の教員として何ができるか?を考えるための備忘録です。
デザインは、できる
オンライン化すればするほど、デザインは容易になるように思えます。
・Classroomの課題機能でレポート提出&ルーブリック評価を
・Zoomのブレイクアウト機能でジグソー法を
というように、ツールと活動が一対一対応することが多いのです。
遠隔でやりとりをせねばならない以上、ツールのもつ守備範囲や特徴にその活動は依存します。
となれば、ツールの良さを生かすような学習デザインを考えるのは自然の流れです。
意図的に作り込んでいくことへのインセンティブは非常に大きいと感じます。
余白は、なくなる
このようにデザインは容易になる一方で、余白はなくなっています。
4月頭の準備に追われるタイミングで書いたこの記事の感覚は今も強く残っています。
要するに、目的的でない営みがなかなか起きない。
日々の活動には余白が必要ですよね。人間はそんなに機械的に、目的的に動き続けられない。大人も子供も同じはずです。
偶発的な営みの減少
オンライン化によって、余白がなくなった生活を具体的に振り返ってみると、生徒を偶発的に観察する機会が減っていることを痛切に感じます。
例えば、廊下で「おっす」と言い合うようなシーン、図書館での授業で生徒が気になった本を手に取り、ふと立ち止まるようなシーン、そんな「観る」瞬間に出くわしていないのです。
オンラインでは、「担任」「授業担当」でないと、教員から生徒へはたらきかけることのハードルが非常に高くなっている気がします。
生徒と気軽に話せるハードルの低さが勤務校の特色の1つでもあるので、私自身の余白の喪失感が大きいだけかもしれませんが、向学校的、とは言い切れない生徒のために何ができているか、と問わずにいられないわけです。去年の担当者、昔の担任、なんかよく会う先生、そういう存在って意外と大事じゃないですかね…
オンライン授業も大切だけど…
だから、偶然性に支えられた場、響き合う空間、そういうものをどうやってオンラインで作れるか? という問いに今向き合っています。
オンライン授業も大切だけど、個別相談ができる機会、偶発的に集まった生徒で盛り上がれる場、学年をまたいだ小さなイベント、同じ部屋で別々の作業をしている空間、そういう偶然性に支えられた場こそ必要なのかな、というのが2週間の振り返りです。週2の「オンライン職員室」企画で色々見えてきた。
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2020年4月26日
学校というのは、(意図した)デザインと、(意図せざる)余白によって生徒一人ひとりの「居る」を支えるためにあるんじゃないか、と思うわけです。
そしてそういう営みによって、教員もまた支えられているのではないかと。
オンライン職員室について
すべてが手探りですが、こちらが扉を閉めないことだけは示そう、と同僚数人と週2のオンライン職員室を継続しています。
- 週2回、任意参加
- 放課後に約1.5時間
- Zoomでの実施をClassroomで当日に告知
- 準備不要、入退場自由
- カメラ、マイクのON・OFF自由
- 個別相談等はブレイクアウト機能で
- お題は自然発生
かれこれ3月下旬からテスト的に続けてきました。
参加してくれる生徒は10人〜30人程度で、なんとなく3層いるような感じ。
オンライン職員室の試みで分かった生徒の3層
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2020年4月17日
①積極的に対話したい
②作業しつつ聴きたい+たまに話したい
③ラジオのように聴いてたい
3つを自分の都合で即座に変えられる空間。ちょっと真面目な深い話もできる空間。「場」では実現しにくかった空間。個別相談会ではない座談会。少し見えてきたかな?
オンライン職員室の改善すべき点
- 生徒たちの関係性がある学年だから成り立つ?
→関係性のない新入生でも成り立つか検証の余地あり
- 生徒自身で自由に動けない
→Zoomの中央集権的な仕組みではカバーできない
ということを感じています。
特に後者の生徒の「自律性」を尊重する仕掛けはZoomだとどうも難しい。それは授業でも気にしていることです。
Zoomブレークアウト機能で哲学対話すると生徒の何気ない会話やふとした言葉を拾えず悲しい…場なら観ることができる言葉・表情・身体性、色々なものが見えない。そこには目的的に行うことを宿命づけられた部屋しかない。メインルームのホストには各部屋の雑多な音が聞こえる・画面見える機能つけて…
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2020年4月16日
新しいツールを試そうか
ということで、この企画においてはもう少し余白を増やしたいわけです。
今目をつけているのが、教えてもらったこの「スペチャ」ことSpatial chat。
試しに大人だけで使ってみた感じ、今一番求めている要素が強く反映されていました。
- 自由に動ける+心理的にも動きやすい
- 実際の空間なら誰しも感じる「距離感」などが反映される
→色々な状況の人が混在する空間が実現できる
というところが大きなメリットです。
もちろん懸念はあるので、完全導入とは言い切れないのですが、とにかくちょっと試して、小さく始めて、試行錯誤です。
ちなみに、Remoは生徒とも何度か使ってみて非常によかったのですが、
なぜか入れない、音が聞こえないなどのテクニカルトラブルが起きてしまったこと、一度テーブルで落ち着くとなかなか他のテーブルに移動しにくいこと、月額がかなり高いことを考慮して、今は保留中です。
おわりに
私学だからフットワーク軽く動けていることは事実ですが、私学ゆえにアンテナを張っていないとあっという間に乗り遅れます。
公立は良くも悪くも「護送船団方式」的なところがあると推測しますが、決まった時は一気に山が動く。自治体内では、取り残される学校はほぼないはずです。
が、一方で私立はどんどんチャレンジすることもできれば、逆に乗り遅れ完全に取り残されることもある。ゆえに、いる人間がやるしかないのです。
迅速な対応と権限移譲してくれる管理職や、乗ってくれる同僚に感謝して、5月の構想を練り続けます。
【追記】スペチャを使った実践記事を書きました!続編です!
おまけ
関連記事3つですが、最後を実は一番読んでもらいたかったりするのです…