オンライン職員室の必要性を感じて試行錯誤を続けています。
なぜオンライン職員室をひらくのか?
経緯についてはこちらの記事をぜひご覧ください。本記事はその続編でもあります。
授業以外での生徒とのコミュニケーションをどのように実現するか、生徒同士の横のつながりをどのように誘発するか、その問いへの答えを求めて週2で実施しています。
生徒たちの現状
⑴当然生徒たちは仲の良い友達とLINE等でグループ通話をしているわけです。仲の良いメンバーは勝手につながっています。
⑵また、オンライン授業で「授業」のメンバー、HRで「クラス」のメンバーとはなんとなく顔を合わしています。つまり「公式な枠組み」のメンバーとは形の上でつながっています。
⑵のような枠組みでつながっていれば、普段の学校なら生徒同士の交流が生まれていたはずです。
しかし今は、そうした生徒同士が“偶然わちゃわちゃ話す場“がないのが現状でしょう。
こうした時間・場が足りていないことが、学校としては惜しいのです。
学校のゆるやかな関係性
オンライン授業も大切だけど、個別相談ができる機会、偶発的に集まった生徒で盛り上がれる場、学年をまたいだ小さなイベント、同じ部屋で別々の作業をしている空間、そういう偶然性に支えられた場こそ必要なのかな、というのが2週間の振り返りです。週2の「オンライン職員室」企画で色々見えてきた。
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2020年4月26日
この、「たまたま」育まれる関係性、ゆるやかな関係を紡ぐ場がない、というのが今の(本校の)現状ではないかと考えています。
その現状に対して、教員として何ができるのか?
1つの答えが、先の記事で紹介したようにZoomを利用したオンライン職員室でした。
・オンライン職員室のススメ〜授業以外での生徒とのコミュニケーションの場に困っていませんか?〜
ところが、Zoomの仕様では、どうしても生徒の自律的な動き、それに支えられたゆるやかな関係を企図するのが難しいと感じます。
救世主になるか?Spatial Chat
そこで今使っているのがこちらのツール。
これはZoomのようにパスワードをかけたり、ホストが全体を管理する、という発想がほぼないツールなので、運用には少し注意が必要でした。
- 通常通りGoogle ClassroomでZoomオンライン職員室告知+URL掲載
- Zoomで集まった生徒たちにSpatial Chatを紹介
- Zoomチャット欄で作っておいたSpatial ChatのURL共有
- Spatial Chatへ移動できたらZoomは各自退室
というのが実施までの流れです。
ただ、いつものように途中から入ってくる生徒や、接続がうまくいかない生徒の連絡手段を考えて、同僚含む教員(共同ホスト)はZoomを繋ぎっぱなしでした。
※ただしPC1台でZoomとSpatial Chatにつなぐとマイクとカメラがおかしなことになるので、Zoomはチャットのみで対応しました。
これによって、時間差で来た生徒がいても、随時対応ができました。
細かいけれど大切?
また、Spatial Chatで事前に作っておいたスペース(部屋のこと)に、この部屋でのルールとしていくつか注意点(画像・動画・画面共有の注意点、本名での利用など)を示した画像を共有していました。
なので、生徒が入ってくるとまずその画像が「でーん」と表示されてます。
生徒のリテラシー+このルール画像によってある程度秩序のある使い方ができた気がします。
で、実際に使ってどうだったかというと…
よかった点
◎ 場の距離感が忠実に再現される
◎ 生徒が自由気ままに動けて話せる
最大のメリットですね。1部屋に多人数がいて、動けない、話したい人と話せないZoomの弱さ、一度落ち着くと別テーブルに移動しにくいRemoの弱さをカバーしていました。「あ〜〇〇ちゃん久しぶり!」というような、学校の場で起こるリアルで自然なコミュニケーションに近いやりとりが生まれていた。Zoomだとそれすら言えず、「あ、〇〇ちゃんいるわ!」と心の中でいうだけだったもの。
◎ 一人ひとりの発話量が増える
自由に動けて自由に話せるので、先に記したような「個人的にLINE通話するほどではないけれど、学校にいたらたぶん話してたかもしれない友人」との会話が生まれやすいですね。この機会の確保が目的だったので、収穫は大きかった。
◎ 途中参加の生徒が入りやすい
生徒たちが言っていたこと。Zoomはやっぱり途中から入りにくいけど、これは圧倒的に入りやすいから途中からでも来ようと思えるとのこと。
◎ 途中退室もしやすい
抜ける時も、直前まで話をしていた数人に「じゃあねー」と言って抜けるだけ。全体の流れに全く影響を与えないのはハードルが下がりますね。Zoomだと、状況によって全体の流れを止める感じがイヤだけど、これはとっても抜けやすい。
◎ YouTubeのお笑い動画やダンス動画を共有視聴して楽しそう
休み時間とか、昼とか、放課後のこういう時間が大切だったはずなんですよ。 YouTubeを共有するコマンドがワンタッチなのも、楽ですね。
◎ 自然なカットイン
生徒数人と雑談をしていた教員の近くに来て、「先生ちょっといいですかー?」といって呼び、自然な流れで教員が抜け、別スペースで個人的な会話を始める。これはリアルな場よりも「カットインした/された」感覚が薄くなる。話しかけやすい、話しかけられやすい、と言ったらよいか。
◎ 無料!シンプルで直感的な操作
Zoomの代替案の一番手だったRemoはとにかく高いのがネックでした。これは無料で生徒もすぐ使い方を理解する直感性の高いツールでした。カメラに映る自分の顔も範囲が小さいのも参加しやすそう。
きになる点
△ ホストの概念がない
スペース自体を閉じることができない(各自退室するしかない)し、全体把握もできません。
△ URLが流出するとZoom Bombing以上に危険
強制ミュートや強制退室もできない上に、参加者が共有した画像や動画も消せないので、混乱必至…
△ チャットがないので音声以外の連絡のチャネルがない
全体にアナウンスしたい時は、散らばっている生徒のところをまわるか、パワポに文字を書いて、画像として保存し、その画像をスペース全体に共有する、ような形になってしまう
△ 動作がかなり重くなる?
10人以上が集まって円になって話をしてみたのですが、ブチブチ音が切れたり音質が低下していたようです。クラス単位でやるとどうなるのか…
△ メンバーによっては疎外感を助長する
生徒の動きを見ている感じ、動画を共有視聴しているときを除き、基本的に片手で数えられる人数のかたまりがいくつかできるような感じになりそう。ゆえに、そこから弾かれたとき、どこに行ったらいいかわからない、という状況も生まれる。心理的安全性の高い集団でないと少し怖いか。
△ 腰を据えて話をするには不向き?
自由に動けて自由に話せるので、話が停滞したら「あっち何話してんだろ」など話題がそれやすい。じっくり考えつつ話をしたいときはZoom等の方が良さそう
教員目線で感じたこと
リアルな場で起こる営み、自然発生的な会話、生徒同士のやりとりに巻き込まれるんでもらえる、あの感じ。
ZoomやRemoでもなく、生徒の自律性の高い場をオンライン職員室で実現しようと試行錯誤。普段classroomもZoomも自分の管理下にあることを痛切に感じた。今日は本当に自由に話せて動けるツールで疲れました笑 予測不可能なことに対応する、場で勤務した日の疲れ。疲れ方が違う…笑 また記事にします。
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2020年4月28日
今まで使ったオンラインのツールの中で最も教員の権力性を手放すことができるツールでしたね。
教師が構造的に持っている権力性を、教師が自ら解体しようとすることが必要とされる。
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2020年4月24日
これを見失うと、モニター1台1台並べて生徒の顔表示した「オンライン授業」が爆誕するわけか。生徒が使うためのツールを教員が管理するためだけの機器にしちゃもったいない。
ただそれゆえに、Zoomよりも断然、疲れました(笑)
生徒と同僚と話をしながらですが、今後はZoomとSpatial Chatの併用で運用したいと思います。
おまけ
手始めにこちらの記事を拝見して使いました。感謝。
関連記事も載せます。このオンライン化の中で、最後の記事を実は一番読んでもらいたかったりするのです…