やっちゃえ先生探究記

生徒の力が引き出される「学習者中心の学び」をデザインしたい教員です。地道な形成的評価を大切に。

高校生にオススメしたい新書トップ5!ー学問の面白さ・意義を直球で伝えようー

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通常営業が始まろうとしている中で、この年末年始で生徒は受験に向けて方向性を固める時期(と担任以上に生徒は意識しているようです)

多くの生徒から

  • 「読解力をつけたい」

  • 「小説は読むんだけど小説以外を読んだ方がいいですよね」

  • 「現代文ってどうしたら伸びるの?」

のような質問を受けて、その生徒にオススメするなら…と一人一人考えつつ(大事)、自分が勧めたい新書も明確にあるのでまとめてみます。

①湯浅誠『反貧困』

教育社会学という分野に軸足を置き、教育をマスで捉えて「すべての子どもの人生の自己決定権を教育分野から支えたい」と思ったあの頃。

でも、どうしても自己責任論に絡め取られそうになる自分がいました。

「自分でなんとかした」という実感が強ければ強いほど、同じような境遇にいる人の力になりたいと思う。でも、その糸口が見つからない。

そんな思いの中で、この本に書かれている「すべり台社会」の構造、「溜め」の概念、自己責任論の否定、いずれも鮮烈でした。

理論と実践のどちらかではなく、どちらにも心を砕いて動き続ける著者の姿はぐっとくるものがありました。

今も書店で平積みにされていたりフェア本として目にします。ぜひ。

・第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞・大賞(2008年)
・第8回大佛次郎論壇賞(2008年)

反貧困 - 岩波書店y

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

 

②前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』

新書大賞2018に輝いたこちらの本。「ミーハーかよ」と思われたあなたにこそ読んでほしい!

ユーモアと真摯さと必死さと、自分の探究したい分野で生きることの幸せを感じます。

「その場を面白がってやろう」という筆者の心意気が読む手を止まらなくさせましたね。

一方で、著者は向こう見ずな書き方をしているけど、「やることはやっている」とも思わされる一冊でした。

自分で手繰り寄せて打席に立つチャンスをつかんでいる、その姿も高校生には見せたいなと思える一冊です。クラスの生徒にオススメしたら好評でした!

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

 

③坂井豊貴『多数決を疑う』

決めたと思っても、決めさせられていることがある。

制度の上で踊る人間ではなく、制度をつくる人間になってほしい。

そんな願いを勝手に込められる一冊です。

学問が現実の社会に対してどうアプローチするか。経済学のクールさを際立たせている本だと思います。

💡過去記事でも関連本を勧めています💡

www.yacchaesensei.com

2017年のオススメ本でも取り上げていました(笑)

いつも心掛けているのは、分野の壁をぶっ壊すということ

分野の違いは、山の登り方の違いでしかない。その道の考え方、足の進め方を知ることは大事だが、そこにこもってしまっては何のための学問だろうか!と思っているので、社会科の中で専門は何かと言われても、「社会科」としか言えない私。

この本は、政治と経済のはざまで、誰も根本から問い直すことを忘れてしまったようなことを問い直す真摯さがある。

立場の違いの議論に終始せず、自分たちの足元をみつめる。そんな頭の使い方を生徒にもぜひ体感してほしい。

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

 

④宇野重規『保守主義とは何か』

日本では「保守」という言葉が完全に世界とは違う内実を伴っている複雑さがある。 そんなときに、保守とは何か、を根底から見つめさせてくれる。

人間の理性は無謬(むびゅう)ではない。人間は過ちを犯しやすく不完全な存在だ。そんな人間に完成した社会を作り上げることはできない。能力の限界に向き合う謙虚な姿勢を持たねばならない。それが保守の懐疑主義的な人間観だった。

【書評】東工大教授・中島岳志が読む『保守主義とは何か』宇野重規著 ライバル弱体化で劣えていく「大人の思想」はどう再生すべきなのか(1/2ページ) - 産経ニュース

上の中島先生のレビューにあるように、「人間」と「人間が作り出した社会」を主な研究材料とする社会科にとって、「○○主義」の理解は必須です。

自分のモノの見方を自覚させてくれる貴重な一冊。

保守主義とは何か - 反フランス革命から現代日本まで (中公新書)

保守主義とは何か - 反フランス革命から現代日本まで (中公新書)

 

⑤ 伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

見たことのない世界を知る、というのなら、旅に出なくてもできることがある。

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

 

①〜⑤の中では②のバッタとこれが読みやすいです。

Twitterでも募集中

引用RTでもリプライでもあなたのオススメ教えてください!としてるのだけど、明日から年始業務再開、なかなか反応がないのは致し方ないですかね…

ぜひあなたのオススメを教えて下さい!

【2019.7.25追記】
「教育格差」を語るならこれを読まないで語れなくなった、くらいのインパクトのある1冊。これ、新書で読めるのが信じられないくらいの労作、良本です。

教育格差 (ちくま新書)

教育格差 (ちくま新書)

 

おわりに

オススメ本etcは今までテーマ別にいろいろ書いてました。

www.yacchaesensei.com

➡️この記事は最近もアクセスが多いです。(西洋)哲学書は哲学の思想のバトンパスがわかる本がやっぱりいい。思想家のタコツボはもったいない。

www.yacchaesensei.com

➡️経済は移り変わりがある分野だけれど、オススメはあまり変わらない。というより自分の勉強が追いつけていない。

www.yacchaesensei.com

➡️こちらは2017年読んだ72冊からのオススメ本でした。2018年は90冊。今年は…もうちょい論文を読みたい、読まなきゃならないと思っています。