教員になる前の企業勤務にも感じていたことを少しだけ。
「一人ひとりを生かす」のではなく、「昇進・昇給のための序列化」のための評価であることに、モヤモヤとしつつも学校の現場に来ました。
企業の人事でも
評価制度の設計は多くが人事部に任されています。
個人的な感想ですが、ビジネスで言えば、利益を直接生み出す部門ではないだけに、どの会社にもあるのに「花形」ではない人事。
人事の中でも、採用など直接「人」に関わる実感のある分野もあれば、評価のように裏方で骨組みを必死に組むのに「文句しか言われない」分野もありました。←教務っぽい。
人事・評価に特化したコンサル企業もあります。こんな事例紹介記事も。
要は、企業でも学校でも、自分たちの組織の人材評価なのに、評価制度そのものを考える、語る土壌がない、そんな印象をずっともっていました。
評価は汎用性があるのに、丁寧に語られない。
評価=「隣に座る」
本書では、指導を豊かにする評価を強調しています。「評価」という言葉はラテン語で「隣に座る」という意味のassidereに由来します。
本書の序盤で示されるこの評価観は、そんな日本の企業・学校で欠けている
「指導を豊かにする」ために「隣に座」って行う評価
のためのヒントが語られています。
私も隣に座れてないなあ。正確にいうと、隣に座れている生徒は一部で、多くの生徒は「上から降ってきた評価」だと思ってるんじゃないかな、と思わされます。
評価はあくまで一部分
「一人ひとりを生かす」ことに力点を置いた本書は、そのために
学習環境、カリキュラム、評価、指導(教え方)、学級経営がお互いに関連し合うことが必要とはじめに指摘しています。評価はあくまで一部。
この図だけでも自分の実践の改善点を示唆するんじゃないかな。
3場面に応じて使える
- 診断的評価
- 形成的評価
- 総括的評価
評価の主要3場面ごとに「一人ひとりを生かす」ためのヒントが章立てされているので、自分にひきつけて何が必要か、何から変えられそうか、を考えられます。
その例として次の一連のツイート。
診断・形成的評価に力点を置くアトウェルやはまてんさんと、総括的評価に普段の力点を置いている(置かざるを得ない)私の会話だと思って読んでください。
プレバト観てるんだけど、TV向けに点数・ランクによる序列化してるとはいえ、完全に『イン・ザ・ミドル』のアトウェルで言う「譲り渡し』ですよね。添削なんだけど、①こうしたら良くなる、を具体的に遠慮なくやって、②そのコツは抽象化もされる。
— T.Yacchae@高校 (@Yacchaee) 2019年1月3日
成長実感と納得をもたらす指導、教員もマネしたい。 pic.twitter.com/V2z2a54SOr
ご指摘ありがとうございます。おっしゃる通りですね!背景としてクラス単位の授業を週2で担当する中で対面カンファレンスの限界を感じ、どうしても成果物の総括的評価の質を上げることに注力していたことがあります。夏井先生の譲り渡しは「短期」の作成物に対するFBの仕方として参考になりました。
— T.Yacchae@高校 (@Yacchaee) 2019年1月3日
総括的評価の質を高めたい、という思いが強いので、その章が最もヒントが多かったように感じました。
「クラス単位の授業を週2で担当する中で対面カンファレンスの限界を感じ、どうしても成果物の総括的評価の質を上げることに注力していたことがあります」って、これ僕も同じ悩みだなあ…。週2回の授業で40人学級複数はきつい…。
— あすこま (@askoma) 2019年1月3日
週2回×40人学級を複数、となると、診断的・形成的評価はやるけれど生かしきれない。やってもその時間対効果が薄い+明確な成果物を求めて授業を構成しているので総括に力点を置いています。
3つのPで評価する
「といっても、結局評価が1〜5とか、A~Dの成績に「堕する」んでしょ?」
という問いに対して、ヒントになるのはこういう箇所。
個人的に印象に残りました。
総括的評価に力点を置きつつも、成績が単なる「記号」にならないようにするために「3つのP」は使えると思います。
努力とプロセスの区別
どちらが観察できるものでしょうか?
観察できないものを成績に含めることはできません(含めようとしてはいけません)
修正を進んでしたかどうかは観察できる、という考えのもと、努力をプロセス化する。というのはなるほど、と感じました。
が一方で、「結局40人単位の授業だとそれもきっついよなあ」と思ったのも事実。
いい思考の習慣や物事のやり方をもつ生徒の働き(いいプロセス)を他の生徒が見れるような授業を作る必要性があるということか。
(いやむしろ、「いい」の基準作りをクラスでできることの方が大事か?)
そうでもしないと、相互評価の質も高まらない。
『イン・ザ・ミドル』と
で語られていたことをもう少し抽象化したいときに本書が使えるなあ、という印象も持ちました。「あれ、同じ話?」と思うところ多数。
両方とも吉田新一郎先生が訳者だから似てくるのは必然か。
➡️自分でも読み直して思うけれど、アトウェルの教室では「一人ひとり」をいかした評価がなされています。
ただ、「生徒自身が(妥当な)目標を立てている」という前提があっての話。
その意味では、今回書評を書いている『一人ひとり〜』の方が、教員目線で評価が語られている印象。
全然“普通”の学校で、アトウェルのような教室にはなっていないんだけど…という状況でも本書は様々な引き出しが記されているので安心感があります。
先述した3つの評価の段階に応じて、自分が改善したい点、意識すべき点を見直せるガイドブックになる一冊。
おわりに
吉田新一郎先生も書かれている「PLC便り」のこちらの記事もあわせてご覧いただけると本書からの学びが深まります。
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ようこそ,一人ひとりをいかす教室へ: 「違い」を力に変える学び方・教え方
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