2019年、センター試験の倫理を好き勝手に解説します。
時代を映すリード文
受験生はすっ飛ばすリード文ですが、教育関係者は必見。
家族という概念の多様化に言及する対話です。
絵文字で「家族」を探すと、👪👨👩👧👩👩👦👩👩👧👨👨👧👨👨👦👨👩👧👦👨👩👦👦👩👩👧👦👨👨👦👦👨👨👧👧👨👨👧👦👨👨👧👦などなど。
この対話、哲学対話としてもすっごく良くて、苫野先生が提示している「本質観取」のモデル文にもなりそうだと思いました
倫理のリード文の「家族」に関する対話。完全にこのまま哲学でいう「家族」の本質観取が始められるくらいの対話文!高校生ABCそのまま話して!話題逸らさないで〜〜と読みながら思ってしまった👨👨👦笑
— やっちゃえ先生@論文の冬 (@Yacchaee) 2019年1月19日
「本質観取」については苫野一徳先生の著書をぜひご覧ください、哲学の意義、面白さが伝わります。
問題は簡単だけど
難易度としては易しい問題。
でも、遺伝子検査など容易になっている現代で、こうした問題を知らないでは困るよ、という「意味」を推察しやすい出題だと感じます。
単なる暗記ではなくて、「意味」を感じる問題は、受験のために過去問をあたるときなどに言及しやすい、という授業者ホイホイ。しかし、こういう問題はえてして簡単で差がつかない(笑)
ステレオタイプ、わかってますか
物の見方を鍛える倫理でこういう出題は好き。ただ、もうちょっと難易度あげてほしかたなあ。
4も文脈によってはアヤシイ選択肢の気がするけど、明らかなステレオタイプがあるから仕方ない。ただ、自分から自由になるための倫理にしたいという意味で好きな問題(+暗記一切いらないから点取れちゃう一石二鳥←)。
第4問でも偏見の問題
普通同じようなカテゴリーの問題かぶせないんですけど、かぶせてる意図を邪推してしまう。
「墜ちよ」
音だけ聞くと受験中には聞きたくないけど、東西の思想を混ぜて聞くのは好き。哲学が「哲学者個々のタコツボ研究」になってほしくないからね。
生きる中で「自己」「他者」「社会」「善」などの概念に出会う。そこに思想家の個別の思想を倫理がどうつなげるか、意識して授業を作りたい。
医学の祖!ヒポクラテスの誓い!
医学系進学者には必ず一度はググって見てほしい、と言わなくても生徒が知っている有名なことば。
頼まれても死に導くような薬を与えない。それを覚らせることもしない。同様に婦人を流産に導く道具を与えない。
いろいろな対話が授業で生まれるきっかけになる言葉たちです。
大好き、鎌倉仏教
個人的に好きなんですよ。法然、親鸞、栄西、道元、日蓮、一遍…全員トリプルスリーやりそう。
わかりやすいこういうシリーズも最近は増えてますね。
第3問の日本思想は近年「誰それ!?」が絶対いたので、生徒たちにも慌てずに1つ1つ消すよう伝えてきました。
今回は割とオーソドックスな名前が並んでいるけど、会沢正志斎は絶対受験生は知らない。笑 あと西田幾多郎の「絶対無」も厳しい。第3問は9割狙いでも2つ落としちゃう可能性あるな…
恋に落ちる
堕ちよと言われたり、恋に落ちたり、縁起が悪かろうて。好きだけど。
リード文の必要あるかわからない腐心が見える人間臭さが好き。笑
意志が引き返して意志する
ニーチェの運命愛を九鬼周造が語っている文章なのだけど、受験生には沁みるか…(読めてれば沁みるはずなんだ!)
偶然を愛し、意味を見出し、運命と捉える。
強者の思想かもしれないけれど、センター試験を受けて、社会構造を担う、想像力のある優しくて強い大人になる倫理受験者には大事かもしれない。(勝手な願い)
おわりに
倫理は2018の平均点が67.8点と高かったので、やや難化するだろうと思っていましたが、東進さん以外は「昨年並み」の判定。倫理は受験者の偏差値帯が高い傾向にあることも影響してますね(出典:リセマム)。
平均点は60点代前半に落ち着くかな…?指導要領改訂で倫理がさらに片隅に追いやられていく可能性が高いと思うと、切ないですね。
ただの暗記に堕する科目にしたくないものです。
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