皆さんはこの本、読んだことありますか?
『学びの技』玉川学園さんの実践知!
出版されてからずっと愛用しているのですが、こんな素晴らしい実践本を世に出してくれて本当にありがたい!と思った回数は数知れず…
学びの技 (YOUNG ADULT ACADEMIC SERIES)
- 作者: 後藤芳文,伊藤史織,登本洋子
- 出版社/メーカー: 玉川大学出版部
- 発売日: 2014/11/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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研究テーマの決め方から情報収集の方法、マインドマップや探究マップなどのツールを活用した論文やプレゼンテーションの効果的な工夫まで。玉川学園中学部3年生の実践をもとに、ラーニング・スキルの「技」を見開き形式でわかりやすく紹介する。中高生のほか、あらゆる年齢の人に必要な力が身につく。探究型学習に必携。
最後の「探究型学習」に必携、とありますが、はい、本当に必携です(笑)
実際に玉川学園さんの中3が行っている探究学習の実践を積み重ねた知見から、現職の先生方がまとめている本なので、現場で使えます。
抽象的すぎて「で、結局どうすればいいの?」ということも、
具体的すぎて「いや、これうちでは無理だよ…」ということもありません。
誰でも探究学習のコーディネートを一通りできるようになるための方法・ヒントがちりばめられています。
探究とは?論題とは?
この本のいいところは、イラストが豊富で、読みやすくて、実際に現場で使えて、コンパクトでありながらも、定義を適当に済ませないことです。
例えば、探究学習と調べ学習の違い、あなたは説明できますか?
論題と問いの違いはどうでしょうか?
理論本ではないので、暑苦しくその定義についてページ数を割いたりはしませんが、副題が「14歳からの探究・論文・プレゼンテーション」とあるように、14歳がマニュアル本として使えるように、言葉を丁寧に定義して進めます。
本当に使い勝手がいい本です。
※ちなみに、最近読んだ理論本だとこちらがオススメ。
今私が担当している授業では、この『学びの技』で紹介される探究学習の方法に則りながらも、次の本の内容を組み合わせて展開しています。
やっぱり有用・『たったひとつを変えるだけ』
このブログでも何度も紹介してきましたが、やっぱり使えます。これも実践知を体系化したもので、20年以上かけて練られている方法です。
たった一つを変えるだけ: クラスも教師も自立する「質問づくり」
- 作者: ダンロスステイン,ルースサンタナ,Dan Rothstein,Luz Santana,吉田新一郎
- 出版社/メーカー: 新評論
- 発売日: 2015/09/04
- メディア: 単行本
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方法でありながら、理論もちりばめられている本です。
この本で紹介されているのが、「質問づくり」です。
※質問づくり関連の記事はこちらの連載①~⑤をご覧ください。本の内容+私の実践の報告になっています。③以下は以下記事から飛んでいただけると幸いです。
授業が劇的に変わる「質問づくり」実践まとめ①〜「質問の焦点」はこう設定する〜 - やっちゃえ先生ブログ
授業が劇的に変わる「質問づくり」実践まとめ②〜4つのルールでいざ質問づくり!〜 - やっちゃえ先生ブログ
今日はこの本の紹介は割愛し、2冊を組み合わせた授業を少し紹介します。
経済×質問づくり×探究学習!
今年度は政経も担当しているので、経済分野の学習に導入しています。通年で質問づくりは行っていますが、探究学習と組み合わせるのは初です。
探究学習と質問づくりの合性は抜群だろうなと思っていましたが、敢えて言いましょう、抜群です!
簡単に流れを紹介すると、
①「経済」という単語から質問をひねりだす
経済未習ですが、質問づくりでそういう体力をつけてきているので、知識がないからできない、という不安はあるものの、やり始めたら生徒たちはできちゃいます。びっくりするけど、この過程はあんまり学年差を感じません。
②その質問を探究可能な「論題」に変える
ここで『学びの技』の出番です。問いと論題の違いは何か、探究学習と調べ学習の違いは何か、という定義づけをしたうえで、
なぜ探究学習を行うのか、私の会社員時代の話も踏まえて内発的動機づけをします。
具体的な「論題」の作り方は、『学びの技』に掲載されている方法・ワークシートを使います。(私はそのまま印刷して使わせています)
ここで本校が恵まれているのは、図書館の超強力的な授業支援体制があることです。グループワークに最適な机・いす・ホワイトボードなどの教具が充実していて、「協働」にもってこいの環境です。ハード面ってとっても大事。
この論題作成が最も重要なので、丁寧に個人・グループを見回りながら、論題設定のヒントを出して進めます。
私の授業では、個人・グループどちらで取り組んでもよいとしています。
当然、関心領域や学びの速度は異なるので、一斉授業ではできない学びの個別化・プロジェクト化を行います。
③論題に対する意見(仮説)をつくる
自分の出した論題に、自分はどう思うのか?を問いかけ、答えを出させます。
これが「仮説」となります。
④仮説をサポートする根拠をリサーチで探す
自分たちの仮説をサポートする根拠を図書館で探します。データベース・論文・雑誌…いつも支えてくださる司書さんには頭が上がりません。
仮説については、私の過去記事の引用になりますが、特に享受できるメリットは「1」でしょうか。
1.最初に仮説を立てて、答えを見つけ絵から検証するから闇雲に調べるよりもスピードに格段の差がつく。
2.予め仮説を立ててそれを検証すると言うプロセスを繰り返す事で仮説の精度が上がる。即ち意志決定の質が上がる。
3.常に限られた時間の中で答えを出す事で情報不足の段階でも問題の真因を探り、解決策を模索していく力がつく。
リサーチの過程で論題を修正するので、それが「2」にあたり、私がアウトプットをどのようなものにするか、の指示次第で「3」のメリットも享受できるでしょう。
⑤最終アウトプットの前に、ポスターセッションを行う
これは学びの技の知見です。そこでは論文を最終アウトプットとしていますが、いきなりそこに取り組ませるのではなく、先にポスターセッションを行わせます。
そうすることで、たくさんの「ピア・コメント」(生徒同士のつっこみ)が得られ、論文の精度や取りかかりのスピード感をあげるそうです。
そのつづきは?
探究学習を①~⑤の流れで行い、あとは設定した最終アウトプットに向けて学習を支援する、というのが教員の役割になります。
評価についても、『学びの技』に実際に使われている評価表が掲載されており、私はそれをもとにしつつ、少し変えながら使っています。
長文になってしまいました。
とにかく言いたいことは、『学びの技』と『質問づくり』は本当に使えます。いわゆる”中途半端なアクティブラーニング”ではありません。
生徒の目の色が違います。大福帳に書いてくるコメントが違います。
ある生徒たちは、「うまい棒」×経済 というテーマで、楽しそうに取り組んでいます。「恋愛×経済」もとっても面白いです。笑
最後に
苫野先生の言葉を引用しよう。
「目指す生徒像」という言葉は正直あまり好きではないけど、もし言葉にするとするなら、ただただ、「自由の相互承認」を土台に、それぞれの仕方で「自由」に、つまり生きたいように生きられる力を持った子どもたち。
— 苫野一徳 (@ittokutomano) 2017年10月23日
毎週、みんなが同じ場所に集まって、一斉に、きっかり15回かけて、レディメイドの内容を「学ばされる」授業とか、もうやめにしよう。「やらされる」学びは、「いかに楽をするか」に直結する。カリキュラムをほぼ全てを「プロジェクト型」にして、大学教員は「共同探究者」「探究支援者」に徹する。
— 苫野一徳 (@ittokutomano) 2017年10月24日
勉強する・探究するって、本当はとんでもなく楽しいことなんだということを、とにかく学生たちには味わってもらいたいなぁと思う。年に数人、哲学や教育学の深奥に触れて、文字通り人生が変わる学生たちに出会う。彼らは何より「言葉」が変わる。世界の見え方が変わる。
— 苫野一徳 (@ittokutomano) 2017年10月24日
「みんなで同じことを、同じペースで、同じようなやり方で学んでいく」近代公教育のモデルが、今日十分機能しなくなっていることに、すでに多くの人が気がついている。
— 苫野一徳 (@ittokutomano) 2017年11月2日
こんな学びを実現するために、ロカルノ先生の言葉も!
教員よ、ブログを書こう。まとめて当ブログで紹介しますから、どうぞ、情報発信してください。
本当、心が折れそうなことばかりなんです。一緒に勉強しましょう?
書くことで色々なことが見えてきますよ!