やっちゃえ先生探究記

生徒の力が引き出される「学習者中心の学び」をデザインしたい教員です。地道な形成的評価を大切に。

【書評】『未来のイノベーターはどう育つのか』~創造性を育てるためには?オススメしたいもう1冊も合わせて~

大雪で業務も強制終了のため、記事を書く時間ができました。

未来のイノベーターはどう育つのか――子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの

あの大著学習する学校――子ども・教員・親・地域で未来の学びを創造する

www.yacchaesensei.com

を読んでいる途中に、寄り道をしてしまった本。

寄り道してしまった理由は、

出版社で選ぶのも、悪くない。

同じ出版社が出している本なんですね。英治出版という会社。

なかなかこの会社が独特で、会社のウェブサイトを見てみると、代表挨拶が意気込んでいるわけですよ(嫌いじゃない)。

英治出版は、想像力を刺激しあう仲間の集まりです。英治出版に関わるすべてのひとの想像力を刺激したいと思っています。そして、そのひとの夢が成長していくことを望んでいます。夢や目標を達成させるために、英治出版は想像力を使うことを惜しみません。想像力の限界まで、あなたの夢を応援したいと願っています。代表挨拶|英治出版について|英治出版

こういう理念に基づいて、読みたいと思うような海外の書籍を訳して出版してくれるから、ありがたい存在なのです。マネジメントやクリエイティビティに関するかなりの本を出しているんじゃないだろうか。

他にも、個人的には出版社にはいくつかアンテナを張っている。

例えば、幼児や子ども向け絵本なら福音館書店、ビジネスならダイヤモンド社(定番)、学術研究と実践の橋渡しなら  ひつじ書房。そして、吉田新一郎先生の素晴らしい訳本が出される人文・社会科学の新評論とか。

皆さんの「私の推し出版社」あったら教えてください。

さて、本題へ。

創造性を育てるために必要なこととは?

本書では、いわゆる”創造的”な人物、またその親や周囲の人物にインタビューを行い、経験的かつ質的に「創造性をはぐくむ条件」に迫っていく

なので、ともするとインタビュー録を読むのがちょっと面倒な方もいるかもしれないが、論旨は明快、読みやすい構成になっているのでそこは心配ないだろう。

で、その調査からまとめ上げてきた「創造性を育てる条件」として挙げられていた主な要素は、次の3つだ。

  • 遊び
  • 情熱
  • 目的意識

これらがそれぞれどの時期にどう絡み合い、どう創造性につながったのか、の個人差もまた興味深かった。

そして、これらの3要素は、「内的モチベーション」というくくりでまとめられる。成績や賞罰などの外的条件ではなく、湧き上がる内的モチベーションを高めるために、我々がどのような環境・心構えでいればよいのか?を説いた書だった。

その「環境」を整備した大学として、こんな大学が取り上げられていた。

オーリン工科大って知ってますか?

この本の装丁を見ても、なんだか幼児教育に特化したような本に見えるが、決してそんなことはない。大学における創造性についても語られている。

そこで筆者がMITなどと合わせて

「あらゆる若者がイノベーターになるためのカリキュラムを備えた大学」 

とイチオシするアメリカの大学が、オーリン工科大学だ。

検索してみると、すでに文科省はこの大学に注目していた。

しかも、報告書のタイトルからわかるように、「イノベーション」の観点でだ。

※「米国の大学におけるイノベーション促進等のための施設整備に関する実態調査 報告」http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/031/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/03/09/1355657_07.pdf

この報告書なかなか興味深いのでご覧いただきたいのだが、一部だけ抜粋すると、

オーリン工科大学では、学部を分けておらず、全学生に学際的なカリキュラムを提供している。学生は実習ベースの授業のなかで、専攻や学年も異なる人とチームになって課題に取り組んでおり、教室は通常の講義室形式のものではなく、家具を動かしてフレキシブルに使えるものとなっており、その他、廊下などにも、人が集えるスペースを設けて、チームでの活動に対応できるようなスペースとしている。

今回の訪問校の中では、特に、MITやオーリン工科大学において、困難な課題に挑戦する人材の育成を目指した課題解決型の学習が特徴的に実践されており、そのためのフレキシブルでオープンな学習空間が整備されていた。

以前、ハーバード、MIT から授業をしてほしいと依頼されたことがあったが、与えられたスペースが従来型の講義室であったため、授業にふさわしいフレキシブルなスペースを見つけてもらって、授業を行ったことがあった。授業の形式とそれにふさわしいスペースがないと良い教育はできない。

未来のイノベーターはどう育つのか――子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの

未来のイノベーターはどう育つのか――子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの

 

このようなオーリン工科大学の環境や、授業の在り方、教員の姿勢などは、中等教育にかかわる人間にとっても、十分示唆的だった。

経験則的に自分もわかっていることは、創造性にハード面の影響は非常に大きいということだ。

図書館のワーキングスペースで協働型の授業を行うのと、40人のぎゅうぎゅうの教室でそれを行うのとでは、当然プロセスも最終アウトプットも異なることは、痛いほど感じる。

ただ、同時に、こうした意識を「1人の教員が、自分の授業だけ」で持っていても、分かる人は分かってくれるけれど、そうでない場合は、「なんだか変わったことするセンセイ」くらいにとどまってしまう。

それじゃダメなんだよなあ…と思うんだけど、それはまた別の記事で。

最後に、ここまで読んでくださったあなたに、もうひとつ。

この本を勧めたくなった。猛烈に。

科学が教える、子育て成功への道

科学が教える、子育て成功への道

  • 作者: キャシー・ハーシュ=パセック,ロバータ・ミシュニック・ゴリンコフ,今井むつみ,市川力
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2017/08/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本は創造性を6Csの理論に位置づけて語っている点で、再現性が高いというか、汎用性が高くってやっぱりオススメ。

創造性を伸ばすために必要なことを経験則から帰納的に導いてきた『未来のイノベーターはどう育つのか』に比べて、この本では創造性を学習理論の1つとして位置づけ、学習プロセスの一環として人間の知的成長を語っている。

タイトルで損している気がしてならないけど、やっぱりいい本です。

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