W杯グループリーグ最終戦、結果は0-1で日本が敗れましたが、セネガルvsコロンビアが0-1で終わったことで、日本はグループ2位決勝トーナメント進出を決めました。
試合終了後、twitterにゲーム理論じゃね?というコメントがあったのを見て、確かにそうかもしれない、と気になってしまったので、考えたことをメモとして残しておきます。
※経済の専門家ではないので、誤りがあったらご指摘ください!!
- ゲーム理論とは?
- これを日本vsポーランドに当てはめてみると…
- 表のポイント数が違うのでは?
- 日本が長谷部投入!ボール回し始める!
- 実際のゲーム理論と異なるところ
- 日本が先にしかけ、協調を貫く意思を示した
- 西野監督の賭け
- 終わりに〜名将の教え?〜
ゲーム理論とは?
実際に高校の政経の授業で使用している浜島書店さんの資料集にはこう掲載されています。センター試験に出題された時の例です。
要は、相手がどちらの選択肢を取ってくるかわからない状況で、自分の利益を最大化しようとすると、両方とも「非協調的」を選ぶことになり、利益の最大化を目指したのに、利益を失ってしまう、というわけです。
これを日本vsポーランドに当てはめてみると…
手書きの汚い図ですみません。先の表をそのまま使って見ました。
※非協調という単語がわかりにくいので、「ウラギリ」と書いています。
この図で行くと、自国の利益を最大化しようとすれば、あの場面、日本は1点を取りに行く、ポーランドも2点目を取りに行く、となるので、結果は④になります。
日本は自力でグループ突破したい、ポーランドはFIFAランク8位ですから、格下の日本を圧倒して勝利して国に帰りたい、そういう思惑です。
しかし、これは先の表と同じように、自国の利益を最大化しようとしたのに、互いにそうならない、という結果を招いてしまいます。
でも、実際はこうはならず、結果的には日本もポーランドも互いが協調する①を選んだわけです。
なぜそうなったのか?
表のポイント数が違うのでは?
先の手書きの表、実はこうだったのではないでしょうか…
ポーランドにとっては、1-0で勝とうが、2-0で勝とうがあまり違いはない。むしろ、勝つということが大事。
だから、先のポーランドにとってはどちらの選択肢をとっても「4」。
さらに言えば、裏切って2点目を取りに行くという選択肢の「4」はリスクが高い。なぜならその隙に日本がカウンターを狙って失点する可能性が高まるからです。
「うーん、協調かウラギリどちらでも「4」か、どうしようかな…」とポーランドが思っていたところ…
日本が長谷部投入!ボール回し始める!
日本は、3人目の交代のカードを切ります。
そこで攻撃的な本田や香川などではなく、ボランチでボールコントロールのできる長谷部を入れてきたのです。劣勢でこの選択肢を取るということは、
日本は「協調」を選んできた!ということ。長谷部投入でその日本の意思がポーランドに伝わるわけです。
決定的だったのは、長谷部投入後、露骨に日本は守備陣を中心にボール回しをし始めます。(場内はブーイングに近いざわめきと歓声)
これによって、ポーランドにとって「日本が「協調」を選んできた!」ということが確信に変わったわけです。
表で言うとこうなったということ。
となれば、ポーランドはリスクを冒して2点目を取りに行く「ウラギリ」をする必要は余計になくなり、リスクを避けて日本のボール回し等にほどほどに付き合う、プレッシャーをかけないと言う「協調」を選ぶことになったのだと思います。
その結果、ラストのあの「異様な」試合展開が生まれ、そのまま0-1で試合終了、となりました。
実際のゲーム理論と異なるところ
こうやって解釈してみましたが、最初に載せた資料集の写真にも書いてあるように、本来は、「両国が協調かウラギリかを、1回のみ、同時に選択する」ものです。
しかし、サッカーというゲームの特性上、
- 1回のみ→何度でも
- 同時に→どちらかが先に選択をする
というように変わる可能性がある、というポイントを忘れてはいけません。
具体的に言えば、何度でも日本とポーランドは協調かウラギリを選べ直せたし、それは同時に起こるというよりは、どちらが先に仕掛けることになります。
【追記】
コロンビアvsセネガルで考えると、ポーランド先制の報を受けて、両国が0-0でお互いに「協調」を選ぶことが可能でした(このままいけば両国とも決勝Tに行ける)。
しかし、「協調」ムードだったのもつかの間、コロンビアが1点を取りに行った(=ウラギリ)わけです。これで均衡が崩れ、セネガルも自国の利益を最大化すべく1点を取りにいかねばならなくなった(=ウラギリ)。
「コロンビア先制、セネガル必死の猛攻」の報を受けて、日本側が腹をくくったわけですね。腹をくくって、「協調」を選び続けた。
そう考えると・・
日本が先にしかけ、協調を貫く意思を示した
ことが何よりも今回重要だったと感じます。
0-1というスコア上ポーランドが有利な状況だからこそ、日本が先に長谷部投入と露骨なボール回しで自分たちの戦略を開示した。
要は、ポーランドを安心させたわけです。裏切らないよ!と。
これがあったから、ポーランドも攻めかかることなく、0-1という結果を招いたのだと思います。
お互いが相手の取る選択肢を読み切れず、自己の利益を最大化しようとして失敗するジレンマには陥らず、「うまく」互いの利益を最大化できた、という例になりました。
西野監督の賭け
いずれにせよ、西野監督が賭けに勝ったわけです。
この通りになっても、セネガルがコロンビアに追いつけば、このプランは丸つぶれ、非難囂々だったことは間違い無いでしょう。
その意味で、決勝T進出という一番優先すべきことのために、目先の利益ではなく、確率勝負をした、そのために、曖昧なことをせず、ポーランド側にも伝わるようなサッカーを展開した。
それが現場の選手にまで伝わってゲームを最後まで運んだことがすごいですね。
終わりに〜名将の教え?〜
真田丸のこのセリフを思い出さずにはいられませんでした。
あとこのセリフもですね。
朝令暮改で何が悪い?より良い案が浮かんだのに己の体面のために前の案に固執するとは、愚か者のすることじゃ!
いずれにせよ決勝T進出、もう一試合みられることを喜びたいと思います。
ゲーム理論風、と逃げましたが、間違いがあったら申し訳ありません。
追記:そうか、ここから考えるのが正確か…
ゲーム理論の非協力ゲームで、日本が失点し、点が取れなさそうなことから、コロンビアとセネガルはパレート最適から引き分け狙いでよかった。
でもコロンビアが点取りに行った(囚人のジレンマ)ことで二国間の均衡状態は崩れ、今度は日本とポーランドで利害関係が一致し均衡状態が成立したってことかな