センター2020倫理の問題を解説します。
問題公開が一番早かったのは東進さんですかね?各予備校も問題だけは先に公開してくれたらいいのにと思いつつ…解いていきます。
まず総論としてリード文がとっても良いのがセンター試験の特徴です。
センター2020倫理を解いてますが、今年のリード文は4つとも哲学対話のイントロで使えそう+ストーリーにもなる笑
— やっちゃえ@2つのPBL (@Yacchaee) 2020年1月18日
大問1で現代の課題を見つめつつ友の大切さを悟り、大問2で旅に出る。旅に出ると「伝統とは、国とは」という問いに大問3が応え、大問4で受験生を労ってる(なお受験生は読まない)。 pic.twitter.com/hsz4gFIcbc
さて第一問からいきましょう。
- いきなりクワイン
- 問題2はAIと労働
- 問題3は最近人気のノージック
- ケアの倫理、きた!
- 7問目は政経かと思った
- 問題8はマララさん!
- 大問2のリード文
- プラトン思想の良問
- 問題13〜16の誤選択肢をピックアップ!
- 問題17の設定は秀逸
- 大問3はサムライブルー!
- 問題21は正答率低そう
- 神道は宗教じゃない!
- 問題24は2択の難問!
- 中江兆民の業績
- なんと受験生目線のリード文よ
- 言葉の意味
- カントとヘーゲルの自由
- 最後に!
- おわりに
いきなりクワイン
センター1日目の1科目目の最初の問題がこれ、結構焦って時間かかりそう。
Bはホーリズムを知って選ぶというより、パラダイム(クーン)ではないだろう、という選び方になるでしょう。Aはセンターらしい読解問題。
普通にやれば解ける問題も、初日の一つ目の問題ってかなり時間かかるんですよね。「合ってるよね、合ってるよね」と自問自答しながら、次に進むのが遅くなるのです。
問題2はAIと労働
問題自体は、グラフを読み取れれば解ける問題ですが、扱う内容はやはり現代社会の課題を意識してきますね。
調査のさらなる詳細はこちら、これはこれでじっくり読める資料。
問題3は最近人気のノージック
今年もきましたね。リベラリズム、リバタリアニズム、コスモポリタニズムあたりの正義論の系譜は近年頻出です。
②か④は絶対選べなければいけないし、そこからは文章の内容でしょう。きちんとロールズからの系譜を押さえておけば問題なさそう。
ざっと比較して学べるこの本はオススメです。高校生にもぜひ。
でもこれで3問連続解答が「④」。いきなり疑心暗鬼にさせますね。
ケアの倫理、きた!
去年の授業で注目して解説していたケアの倫理が出されて「おお!」と声が出ました。
問題4でこれだけ読ませるわけだから受験生も大変です。来年からの新テストの傾向に近づいている、ともとれるか。
問題5,6は割と易しい読めば解ける問題(雑)でした。
7問目は政経かと思った
思ったけれど、聞いていることは各選択肢における法があるかどうか、その内容説明が正しいか、という2点で易しめ。
「倫理」の問題なので、知識でぶん殴って来ないですね。それは第二問以降からかな。
問題8はマララさん!
時事的な用語を絡めてきた問題8!緒方貞子さんの逝去もあってタイムリーです。
用語一発問題で、マララさんを知らなかったら解けないんじゃ?と思ったけど④のフェアトレードに代わる偽の言葉が誰もが知っている「リサイクル」という誤答。(ぺこぱ並みのやさしさ)
なお、問題9は超頻出「青年期」を現代の「モラトリアム」と絡めて選ぶ問題、10は本文趣旨一致でした。
大問1は最初の数問で読ませるけど難易度自体は易しめかと思います。
大問2のリード文
個人的には「旅」というテーマで思想をつなぎ合わせていくテーマ設定は好きです。
出される箇所はおなじみの源流思想なんだけど、リード文のクオリティがすごい。
プラトン思想の良問
問題12はいい問題ですね〜プラトンのイデア論という超頻出事項の丁寧な理解を問うている。さっと読んで①と迷った生徒も多いんじゃないかな。
①の例えを知っていると、損失回避欲求が働いて、自分が知っているちょっと珍しい例が出た、これが正解に違いない!と思いたい心を刺激します。笑
問題13〜16の誤選択肢をピックアップ!
続く問題群にあった、誤りの選択肢の文章がなかなか面白いので紹介。
大乗仏教から軽蔑された言葉を自ら使っていくスタイルです。
続いて、生徒が選びそうな選択肢…この前仏教のイメージ聞いたら「滝行」とか言ってたからな…
そして最後はイエスが鬼になっている。こんなイエスは嫌だ。
問題17の設定は秀逸
リード文のテーマである「旅」とこうやって絡めるわけです。うまいなあ。
「ジハード」もイスラム国の台頭があり、知識として習わなくても聴き慣れた単語になってきた印象です。
次の問題18もトマス・アクィナスの文章から「旅」に関連する文章を引用して、内容一致させる問題でした。よく見つけるなあ。問題19は本文趣旨一致。
大問3はサムライブルー!
オリンピックを感じさせますね(受験生は読んでいない)、
そもそも伝統とは何か、という問い。
授業で真正面から扱いたいけれど、ちょっとストレートすぎるので、もう少し知的挑戦を促す、好奇心を持つ問いに変える必要があるなあとか思ってしまいます。
問題21は正答率低そう
これは結構難しかったんじゃないかなと思います。
九鬼周造は最近よく見るイメージだけど、「いき」の内容までバッチリ覚えている受験生は多くないでしょう。これはもう「『風姿花伝』ー世阿弥」のセットを覚えているかどうか勝負になっちゃうかな…
神道は宗教じゃない!
問題22は古代日本思想のおはなし。これも迷わせますね。
①をみて思い出したのはこちらの瑞穂の國記念小學院のお話。神道は宗教なのか?気になる方はご覧ください。
問題24は2択の難問!
これは受験生泣かせの問題ですね…
イの尊徳は間違えないので、アの2択勝負なんだけど、これ名前のイメージで西川如見にいってしまうでしょうね…今の所これが一番選べなさそうな問題。
中江兆民の業績
中江を選び、共和主義を選び、Bは「東洋のルソー」を思い出せれば社会契約説が出るので④と決まるのだけれど、共和主義という「主義」を問うてきたのは珍しいですね。
にしても誤答が「共産主義」はセンター出題者の優しさ。
問題27は読み取り、28は内容趣旨一致問題でした(雑)。疲れてきたけど最後の第4問!
なんと受験生目線のリード文よ
3行目への落差、からの4行目への共感。
言葉の意味
暗記一発、オラオラ!と力技でもいけるんだけど、言葉の意味をきちんと考えさせる問いって大事だと思うのです。
哲学に関連することばの語源といえば、昨年夏に出たこちらは面白かったですね。
カントとヘーゲルの自由
西洋哲学の系譜を感じるいい問題だと思うのだけど、誤答の選択肢がイマイチ…
現代的にはあまり人気のないヘーゲルのすごさはぜひこちらの一冊で。
最後に!
西洋思想の第4問は割と平易な問題が続きましたが、最後に一山。
先のヘーゲルを受け継ぎつつ、近年注目されているホネットが出題されました。
問題自体は読み取りなのだけど、これを機に読まないとと思わされます。
「承認」は生徒が授業でピックアップするお題としても関心の高いテーマです。
おわりに
解きながらスクショして解説するのは結構疲れました…
共通テストの公民科目の方向性はそんなに悪くないと個人的には思うけれど、練られた知識理解をとう問題、リード文が残っていきますように。
ブログなのでやっぱり去年のように好き勝手解説の方が楽しいかな笑